関節リウマチ(RA:Rheumatoid Arthritis)は、 関節の炎症と痛みが次第に全身に全身に広がる一方、進行すると関節や骨が破壊され、関節の変形が起こり、身体障害が生じる炎症性自己免疫疾患です。
日本では、関節リウマチの患者さんは60万人以上といわれています。30~50歳代に発症する場合が多く、約8割が女性です。
現在、原因はまだ完全に解明されていませんが、何らかの原因で免疫異常が生じ、慢性多関節炎を起こします。 リウマチになりやすい遺伝的な素因があり、それにウイルスなどの感染が引き金になっている可能性も考えられています。
ギリシャ語の『rheuma』に由来しています。この言葉は『流れ』という意味です。 ヒポクラテスの考えによると、脳からフレグマ(Phlegma)と呼ばれる粘液が身体の各部に流れてさまざまな病気が起こるとされていました。
(1)~(4)までの症状は6週間以上続くこと 上記の7項目のうち、4項目以上にあてはまる場合を関節リウマチとする、とされています。
早期関節リウマチの診断基準 初期の段階の関節リウマチでは、米国リウマチ学会の診断基準で定めた症状が出そろわず、いち早く治療を開始するという方針にそわない場合も多くあるため、日本リウマチ学会では、1994年に早期関節リウマチの診断基準を提唱しています。
上記の6項目のうち、3項目以上にあてはまる場合を早期関節リウマチとし、該当する患者さんは詳細に経過を観察して、病態に応じて適切な治療を開始する必要がある、とされています。
一つ以上の関節のはれがみられる(診察、超音波、MRI検査のいずれかでみられる)
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1、はれ、または圧痛のある関節の数 小関節: 手の親指の第1・第2関節、人指し指~小指の第2・第3関節、手首の骨びらん 中、大関節: 肩、ひじ、ひざ、股、足首の骨びらん。変形性関節炎との鑑別のため、手指の第1関節、足指の第1関節は除外する | |
中、大関節の1カ所 | 0点 |
中、大関節の2~10カ所 | 1点 |
小関節の1~3カ所 | 2点 |
小関節の4~10カ所 | 3点 |
最低1つの小関節を含む11カ所以上 | 5点 |
2、血清反応 陽性基準は、施設ごとの正常値を超える場合 低値陽性は、正常上限~その3倍まで 高値陽性は、正常上限の3倍を超える場合 | |
リウマトイド因子、抗CCP抗体の両方が陰性 | 0点 |
リウマトイド因子、抗CCP抗体のいずれかが低値陽性 | 2点 |
リウマトイド因子、抗CCP抗体のいずれかが高値陽性 | 3点 |
3、罹患期間 評価時に、腫れ、または圧痛関節のうちで、患者が申告する期間罹患期間 | |
6週未満 | 0点 |
6週以上 | 1点 |
4、炎症反応 陽性基準は施設ごとの正常値を超える範囲 スコアリングには、最低1つの血清反応と最低1つの炎症反応の測定が必要 | |
CRP、ESRの両方が正常 | 0点 |
CRPもしくはESRのいずれかが異常高値 | 1点 |
6点以上で関節リウマチと診断確定
静脈から採取した血液に抗凝固剤を入れて、細長い管(ピペット)に移します。その管を立てた状態で赤血球の層が1時間に沈む速度を調べます。
CRPとは、体内で炎症、感染、組織障害などの異変が起こると肝臓で作られるC反応性タンパクのことです。体内に異変が起こると12~24時間後に血液中に現れます。関節リウマチの炎症だけでなく、他の 膠原病、ウィルス感染、自己免疫疾患などでも陽性(-)を示します。
但し、貧血の影響は受けません。
MMP-3は、RAで滑膜の増殖に伴い、滑膜表層細胞で発現、生産される酵素で、そのマトリックス分解作用の結果、関節破壊をきたすといわれている。
産生されたMMP-3が関節液中に貯留し、それが血管やリンパ管を経由して血中に移行し血清中MMP-3値が上昇すると考えられている。早期RAでは、血清中MMP-3値が上昇または高値を維持した場合は進行性で、低下または低値を維持した場合は非進行性である傾向がある。
シトルリン化ペプチド*1を人工的に環状化した抗原を用いた自己抗体測定法です。
関節リウマチ(RA)を疑ってこの検査を行った場合、陽性なら95%の確率でRAと言えます。但し、RAの方でも約20%は抗CCP抗体が低値(陰性)であり、関節炎の早期に限れば後にRAと診断された方の約40%が初期は陰性です。ですから、陰性だからといってRAではないとは言い切れないので注意が必要です。
抗CCP抗体陽性のRAは、陰性の場合よりも骨破壊が強く進む傾向にあるという報告もあります。 また、抗CCP抗体は一般にCRPや血沈のように関節炎の活動性を反映しません。
関節リウマチは、頭から足の先まで、さまざまな症状を起こす全身性の病気で、起こり方も一様ではありません。
多発性関節炎により全身の関節に症状が出現します。症状の特徴は、初めは朝のこわばりから、しだいに腫れと痛みがあらわれます。
関節炎が進むと、手や足の指に特有の変形が起こり、日常生活動作が妨げられます。また、訓練をしないと筋力も落ちます。
慢性関節リウマチの障害の程度は人により様々です。関節の障害が日常生活に及ぼす影響によって、大きくは次のような四つのクラスに分類されます。このクラスを進めないことが治療の目標となります。
滑膜の炎症が慢性化すると、徐々に関節の変形が起こっていきます。 骨の破壊や変形は元へは戻せないので、早期発見で治療を行い炎症をくい止めることが大切です。
貧血、発熱、倦怠、体重減少、皮下結節 腱鞘炎・腱の断裂、シェーグレン症候群
肺疾患(間質性肺炎、肺線維症、肋膜炎)
心疾患(心筋炎、心のう炎など) 、アミロイドーシス、眼疾患、未梢神経炎、下腿潰瘍など
これらの合併症を発見し、早期治療を行っていくためには、定期的な診察と血液検査等が必要です。
炎症をおさえる作用が強い。
免疫異常を調節して、リウマチを改善する。 但し、遅効性の薬であるため、効果が出るのに2~3ヶ月程度かかります。 効果が出れば 、
副作用に注意しながら長期間服用します。
「サイトカイン」とは、免疫などにかかわるさまざまな物質の総称です。
サイトカイン阻害薬は、関節の炎症を引き起こす特定のサイトカインの働きを妨げて、関節の炎症や、骨や軟骨の破壊が進むのを抑える効果があります。
免疫細胞の働きを抑制して、リウマチを改善する。 体内で有用な働きをしている正常な免疫細胞の働きまで抑制するので重い副作用の可能性がある。
この薬はメソトレキサートという元々は昔から使われている強力な抗がん剤です。
メソトレキサートが白血病の治療薬として開発されたのは、1940年代。抗がん剤開発の創成期とも言える時期に登場した、非常に古い歴史を持つ抗がん剤です。日本では、1963年に経口薬、68年に注射薬が承認されました。 海外では、関節リウマチ治療に非常に高い効果をあげ、1980年代より、最も中心的な薬剤として用いられてきましたが、日本国内でリウマチに対する保険適応が認められたのは、1999年になってからです。
服用中に副作用により死に至った例が報告されています。リウマチ治療の専門の医師と緊密な連絡をとりながら服用して下さい。
特に発熱、咳、呼吸困難などの呼吸器症状、口内炎、倦怠感の症状は医師に連絡して下さい。
アメリカでは1999年から、日本では2003年7月が使用されています。 レミケード点滴静注用(一般名:インフリキシマブ)*3 レミケードは点滴投与をする薬です。
0、2週、6週、以後8週毎に反復します。抗体の一部にマウスのタンパク質を使って作成されたきめら抗体なので、点滴時のアレルギーの症状がみられることもあります。また中和抗体が産生されて効果が減弱することがあります。
中和抗体の産生は、メトトレキサート(リウマトレックスカプセル)によって防ぐことが出来るため、原則として週6mg以上のメトトレキサートを併用します。
アメリカでは1998年、日本では2005年3月から関節リウマチの治療薬として使用されています。
サイトカインの中のひとつに、TNF(腫瘍壊死因子)と呼ばれる物質があります。これは、腫瘍を殺す働きへの関与のみまらず、
免疫の働き全般に広く関係するものと考えられています。このTNFが、関節リウマチの炎症や痛みの発現、さらには関節破壊の進行にまで深く関わっています。
抗TNF療法では、TNFが細胞表面のTNFレセプターと結合するのを阻止したり、TNFそのものが作用しないように働きかけます。
関節の炎症にかかわるTNFそれ自体をターゲットとし、炎症や痛み、そして関節破壊の進行を抑制することが特徴といえます。
局所の関節の治療だけでなく全身的な治療が大切です。
それにはリウマチの全身の活動性と関節の壊れ具合、その他の症状、検査所見などを総合して、最善の治療法が組まれます。 薬物療法 リウマチ治療は、飲み薬や注射薬が中心になります。のみ薬は医師の指示に従って、きちんと内服を続けることが大切です。 定期的に診察を受け、病状の変化や痛みの状態を医師に相談してください。また副作用(発疹、口内炎、下痢、吐き気、便の色の異常など)があれば、早目に診察を受けましょう。
リウマチの手術は、薬やリハビリなどと同じく、リウマチの治療には欠かせない治療手段の一つです。 手術をするかどうかは、リウマチの全身活動性が高いが薬の量をこれ以上増やせない場合や、関節の破壊が強くなって日常生活が不自由になった場合に検討されます。
リウマチの炎症が治まってから始めるのが理想的です。 関節を保護しながら筋力をつける工夫が大切です。
水泳等は、関節に負担が少ないのでよいでしょう。 副腎皮質ステロイド剤を服用中は、無理をして症状を悪化させてしまう場合がありますので注意が必要です。
「寛解」とは 病気の症状がほぼ消失し、臨床的にコントロールされた状態を意味します。関節リウマチおいては3つの寛解があります。
関節リウマチおいては、上記3つの寛解の導入を治療目標としています。この目標が達成できれば、抗リウマチ薬を服用しながらではありますが、関節リウマチを罹患していることをほとんど自覚することなく日常生活を送ることが出来るようになります。
2010年に欧州リウマチ学会 (European League against Rheumatic Diseases, EULAR) を中心に「目標達成に向けた治療」(Treat to Target, T2T) という寛解を目標とする治療勧奨(リコメンデーション)がまとめられ、 2011年には米国リウマチ学会 (American College of Rheumatology, ACR) と欧州リウマチ学会共同で目標とすべき寛解基準が定められました。
ACR/EULAR寛解基準
Treat to Target (T2T) リコメンデーション