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MS 概要 anchor.png

多発性硬化症は中枢神経系の脱髄疾患の一つです。
私達の神経活動は神経細胞から出る細い電線のような神経の線を伝わる電気活動によってすべて行われています。

家庭の電線がショートしないようにビニールのカバーからなる絶縁体によって被われているように、神経の線も髄鞘(ずいしょう)(myelin sheath)というもので被われています。

この髄鞘が壊れて中の電線がむき出しになる病気が脱髄疾患です。この脱髄が斑状にあちこちにでき(脱髄斑)、病気が再発を繰り返すのが多発性硬化症(MS)です。
MSというのは英語のmultiple sclerosisの頭文字をとったものです。

一方、主として視神経と脊髄に由来する症候を呈する患者の中には視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO)の病態を有する患者が含まれています。
NMO は、視神経と脊髄を比較的短期間に強い炎症を起こします。

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症状 anchor.png

  • 視神経炎
    視神経が侵され視力が低下したり、視野が欠けたりします。球後視神経炎の場合は目の奥に痛みを感じることがあります。
  • 脳幹障害
    脳幹が障害されると、目を動かす神経が麻痺してものが二重に見えたり、目が揺れたり、顔の感覚や運動が麻痺したり、食べ物が飲み込みにくくなったり、しゃべりにくくなったりします。
  • 小脳障害
    小脳が障害されると、まっすぐ歩けなくなり、 手が震えたりします。
  • 大脳障害
    大脳は少々の病変が起きても症状が出ないことが多いです。
  • 脊髄障害
    脊髄が障害されると、胸や腹の帯状のしびれ、ぴりぴりとした痛み、手足のしびれや運動麻痺、尿失禁、排尿障害などが起こります。
    • 有痛性強直性痙攣
      脊髄障害の回復期に手や足が急にジーンとして突っ張ることがあります。
  • ウートフ徴候
    熱めの風呂に入ったりして体温が上がると、一過性にMSの症状が悪くなる場合があります。
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原因 anchor.png

原因は不明ですが、ウイルスや何らかの抗原が引き金になって、自分の組織を攻撃する自己免疫反応が起こるのではないかと考えられています。また、遺伝も何らかの役割を担っている可能性があります。
多発性硬化症を発症した人の多くは、体が自分の組織と異物を見分けるときの目印になるタンパク質の遺伝マーカー(ヒト白血球抗原)のある種のタイプHLA-DR2をもっています。

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診療科 anchor.png

神経内科 眼科

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検査 anchor.png

  • 腰椎穿刺
    脳の病変部位に炎症がありますので、脳脊髄液に炎症反応の有無を調べます。
    腰の部分に針を刺して脳脊髄液をとって調べます。
    • 所見
      急性期ではリンパ球数の増加、蛋白質の増加、免疫グロブリンIgGの増加などが見られます。
      また髄鞘の破壊を反映して髄鞘の成分であるミエリン塩基性蛋白の増加が見られます。
      • ミエリン塩基性蛋白(MBP)基準値:102以下(pg/mL)
  • MRI
    脱髄病巣はT2強調画像およびフレア 画像で白くうつります。また、急性期の病変はガドリニウムという造影剤を注射すると、造影剤が漏れ出て白くうつります。脱髄病変に不可逆性の軸索変性が生ずると、T1強調画像で黒くうつります。
  • 誘発脳波(視覚誘発脳波、聴覚誘発脳波、体感覚誘発脳波)
    電気の伝導を脳波で捉える検査法です。脱髄が起こると電線がむき出しになり、電気の伝導が遅くなります。
  • 抗アクアポリン4抗体の測定
    視神経脊髄炎(NMO)では、血液中に抗AQP-4抗体と言われる自己抗体が高率に認められます。
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診断 anchor.png

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多発性硬化症 MS (Multiple Sclerosis) anchor.png

中枢神経内に時間的空間的に病変が多発する炎症性脱髄疾患である。

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A) 再発寛解型 MS の診断 anchor.png

下記の1)あるいは2)を満たすこととする。

1)中枢神経内の炎症性脱髄に起因すると考えられる臨床的発作が 2 回以上あり、かつ客観的臨床的証拠がある 2 個以上の病変を有する。ただし客観的臨床的証拠とは、医師の神経学的診察による確認、過去の視力障 害の訴えのある患者における視覚誘発電位(VEP)による確認、あるいは過去の神経症状を訴える患者における対応部位での MRI による脱髄所見の確認である。

2)中枢神経内の炎症性脱髄に起因すると考えられ、客観的臨床的証拠のある臨床的発作が少なくとも 1 回あり、さらに中枢神経病変の時間的空間的な多発が臨床症候、あるいは以下に定義される MRI 所見により証明さ れる。

  • MRI による空間的多発の証明
    4 つの MS に典型的な中枢神経領域(脳室周囲、皮質直下、テント下、脊髄)のうち少なくとも 2 つの領域に T2 病変が 1 個以上ある(造影病変である必要はない。脳幹あるいは脊髄症候を呈する患者では、 それらの症候の責任病巣は除外する)
  • MRI による時間的多発の証明
    無症候性のガドリニウム造影病変と無症候性の非造影病変が同時に存在する(いつの時点でもよい)。 あるいは基準となる時点の MRI に比べてその後(いつの時点でもよい)に新たに出現した症候性また は無症侯性の T2 病変及び/あるいはガドリニウム造影病変がある。

発作(再発、増悪)とは、中枢神経の急性炎症性脱髄イベントに典型的な患者の症候(現在の症候あるいは 1 回は病歴上の症候でもよい)であり、24 時間以上持続し、発熱や感染症がない時期にもみられることが必要である。

突発性症候は、24 時間以上にわたって繰り返すものでなければならない。独立した再発と認定するには、1 ヵ月以上の間隔があることが必要である。 ただし診断には、他の疾患の除外が重要である。特に小児の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)が疑われる場合 には上記 2)は適用しない。

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B) 一次性進行型 MS の診断 anchor.png

1 年間の病状の進行(過去あるいは前向きの観察で判断する)及び以下の 3 つの基準のうち 2 つ以上を満たす。

1)と 2)の MRI 所見は造影病変である必要はない。脳幹あるいは脊 髄症候を呈する患者では、それらの症候の責任病巣は除外する。

1)脳に空間的多発の証拠がある(MS に特徴的な脳室周囲、皮質直下、あるいはテント下に 1 個以上の T2 病変 がある)
2)脊髄に空間的多発の証拠がある(脊髄に 2 個以上の T2 病変がある)
3)髄液の異常所見(等電点電気泳動法によるオリゴクローナルバンド及び/あるいは IgG インデックスの上昇) ただし、他の疾患の厳格な鑑別が必要である。

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C) 二次性進行型 MS の診断 anchor.png

再発寛解型としてある期間経過した後に、明らかな再発がないにもかかわらず病状が徐々に進行する。

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視神経脊髄炎 NMO (Neuromyelitis Optica) anchor.png

Devic 病とも呼ばれ、重症の視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする。視神経炎は失明することもまれではなく、 視交叉病変により両眼性視覚障害を起こすこともある。また脊髄炎は MRI 矢状断ではしばしば 3 椎体以上に及ぶ長い病変を呈し、軸位断では慢性期には脊髄の中央部に位置することが多い。アクアポリン 4 抗体(AQP4 抗 体)は NMO に特異的な自己抗体であり、半数以上の症例で陽性である。

NMO の診断基準として 2006 年の Wingerchuk らの基準が広く用いられている

Definite NMO の診断基準(Wingerchuk ら, 2006) 視神経炎

急性脊髄炎
3 つの支持基準のうち少なくとも 2 つ

1. 3 椎体以上に及ぶ連続的な脊髄 MRI 病変
2. MS のための脳 MRI の基準(*)を満たさない
3. NMO-IgG(AQP4 抗体)陽性

  • 脳 MRI 基準は Paty の基準(4 個以上の病変、あるいは 3 個の病変がありそのうち 1 個は脳室周囲にある)とする

AQP4 抗体陽性で急性炎症性中枢性病変をともなう場合は、他の疾患が除外されれば、NMO の範疇(NMO Spectrum Disorders, NMOSD)に加える。NMO ではオリ ゴクローナル IgG バンドはしばしば陰性である。 NMO の再発の定義は MS に準ずる。

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Balo 病(バロー同心円硬化症) anchor.png

病理または MRI にて同心円状病巣が確認できるものをいう。

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病期 ステージ anchor.png

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合併症 anchor.png

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  • アボネックス筋注用シリンジ (インターフェロンβ)
    アボネックスは、遺伝子組換え技術を用いて作られています。
    症状を直接に改善する薬ではなく、再発を減らし病気の進行を遅らせます。
    • 副作用
      注射した数時間後に、副作用として風邪に似た症状が出ます。発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感など
      注射部位に反応が起こります。 赤くなる、痛む、腫れる、熱っぽい、皮膚が硬くなる。
      白血球数の減少、リンパ球数の減少(重篤なものは稀)
      肝機能検査値の異常(重篤なものは稀)
  • テグレトール錠(一般名:カルバマゼピン)
    有痛性強直性痙攣を鎮めます。
  • リオレサール錠ギャバロン錠(一般名:バクロフェン)抗痙縮剤
    手足の突っ張りに効果があります。
  • バップフォー錠(一般名:塩酸プロピヴェリン)
    排尿障害に効果があります。
  • タイサブリ点滴静注(一般名:ナタリズマブ(遺伝子組換え))モノクロール抗体
    MSに関連があるとされるリンパ球が脳に入らないようにブロックする作用があると考えられています。
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治療法 anchor.png

  • パルス療法
    急性期には、ソルメドロールという水溶性の副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)を500mgまたは1000mgを2~3時間かけて点滴静注します。これを毎日1回、3日~5日間行い1クールとして様子を見ます。

症状の改善が見られない場合は、数日後もう1~2クール追加したり、血液浄化療法を行うことがあります。

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罹患した著名人 anchor.png

  • 林家こん平 落語家
  • アリス=紗良・オット ドイツ・ミュンヘン出身の女性ピアニスト
    2019年1月15日、多発性硬化症と診断される。
  • 癒シンガーKeiko(けいこ) プロシンガー
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