SLE 概要
全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus:SLE)は全身の炎症によりさまざまな症状を示し、よくなったり、悪くなったりを繰り返し、慢性の経過をたどる病気です。
20~40歳の出産可能な年齢の女性に発病しやすく、男性はその10分の1の発病率です。現在の日本では、10万人に7~8人の発病率です。
自分の体の成分に対する抗体が作られますが、とくに細胞の核にあるDNAに対する抗体が特徴的で、それが免疫複合体を作って炎症を起こし組織を壊していきます。
自己免疫疾患のひとつで、膠原病(こうげんびょう)の代表的疾患です。 SLEの原因は不明ですが、外敵や異種の蛋白質に対する防御反応であるべき免疫に異常を来し、自分の体の成分に対し抗体(自己抗体)を作って組織を破壊するために引き起こされた病気といえます。
この免疫異常が起こる機序(仕組み)がわかれば、病気を基から治すことができます。
病気を起こしやすい遺伝的な体質にウイルス感染などの環境因子がきっかけになって、免疫異常が起こると考えられています。
病名の由来
ループスは、ラテン語で狼を意味します。エリテマトーデスは紅い斑点の意味です。
1829年にフランスの皮膚科医ビットという人が初めてこの病気を診た時に、皮膚の病変がまるで狼にかまれた時の痕に似ていたことから、このような病名をつけました。
診断基準
通常アメリカリウマチ学会の診断基準に従って診断する。
SLEの診断基準(アメリカリウマチ協会、1997年改訂)
- 頬部紅斑:頬骨隆起部上の紅斑
- 円板状紅斑
- 光線過敏症:患者病歴または医師の観察による
- 口腔内潰瘍:医師の観察によるもので通常無痛性
- 関節炎:二つ以上の末梢関節の非びらん性関節炎
- 漿膜炎
a)胸膜炎:疼痛、摩擦音、胸水
b)心膜炎:心電図、摩擦音、心膜液 - 腎障害
a)0.5g/日以上または3+以上の持続性蛋白尿
b)細胞性円柱:赤血球、顆粒、尿細管性円柱 - 神経障害
a)けいれん
b)精神障害 - 血液学的異常
a)溶血性貧血
b)白血球減少症:4,000/mm3未満が2回以上
c) リンパ球減少症:1,500/mm3未満が2回以上
d) 血小板減少症:100,000/mm3未満 - 免疫学的異常
a) 抗DNA抗体:native DNAに対する抗体の異常高値
b) 抗Sm抗体の存在
c) 抗リン脂質抗体:抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラント陽性、梅毒血清反応偽陽性 - 抗核抗体の検出
観察期間中、経時的あるいは同時に11項目中4項目以上存在すればSLE分類する。
症状
典型的な例は、38℃~40℃に及ぶ高熱、関節痛、筋痛、顔面の両頬に蝶の形をした発疹(蝶形紅斑)などをもって急性の発病をします。
全身症状として倦怠感、疲労感などが起こります。
皮膚・粘膜症状
蝶形紅斑は頬のみならず鼻筋にも現れるのが特徴です。
日光過敏が顕著で、皮膚生検では、真皮表皮結合部IgGの沈着が認められます。(ループスバンドテスト陽性) ディスコイド疹(円板状の皮疹)は顔面、耳、頭部、関節背面などによくみられます。
当初は紅斑ですが、やがて硬結、角化、瘢痕、萎縮をきたします。このほか凍瘡様皮疹、頭髪の脱毛、日光過敏等がみられます。
口腔、鼻咽腔に無痛性の潰瘍が現れることもあります。
漿膜炎
胸膜、心外膜、腹膜といった漿膜に炎症が発生し胸膜炎や心外膜炎をおこし、炎症性浸出液が貯留する例がある。SLEでは通常は血清CRPは上昇しないが、こうした漿膜炎を生じた場合、しばしばCRPの上昇が観察される。
胸部レントゲンでの胸水貯留像、心胸郭比の拡大、エコーによる心嚢液や腹水貯留、腹部膨隆が観察される。
腎症状
糸球体腎炎(ループス腎炎)は約半数の症例で出現し、放置すると重篤となります。急性期では、蛋白尿、むくみがみられ、尿沈渣では赤血球、白血球、
円柱などが多数出現します。
心血管症状
心外膜炎はよくみられ、タンポナーデとなることも稀にあります。心筋炎を起こすと、頻脈、不整脈が現れます。
弁膜病変は一般に無症状ですが、軽度の大動脈弁不全や僧帽弁不全を起こすことがあります。
また、弁尖に疣贅(いぼ)を形成してLiebman-Sachs 心内膜炎を呈することもあります。
また、反復する血栓性静脈炎を起こす場合には、抗りん脂質抗体症候群の合併が疑われるます。
- 抗リン脂質抗体症候群
血液中に抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体や、ループスアンチコアグラント)という自己抗体が証明され、習慣性に(2回以上)流産を起こしたり、動脈や静脈の中で血の固まりが出来る血栓症(脳梗塞、肺梗塞、四肢の静脈血栓症など)を起こしたり、血液検査上で血小板が減少する、というような症状や所見をきたす疾患です。
肝障害
しばしば肝機能障害を伴う。抗ミトコンドリアM2抗体陽性の胆汁うっ滞性肝硬変症(PBC)や抗LKM-1抗体陽性の自己免疫性肝炎(AIH)の合併もあるが、これらがない症例でも生化学データでのASTやALTといった肝逸脱酵素が上昇することがある。
ループス膀胱炎
頻度は少ないが膀胱壁の線維化がおこり膀胱容量が減少することがある。膀胱壁は肥厚しコンプライアンスが不良になる。1回尿量が150mL程度になり、著しい頻尿になる。
造血器症状
溶血性貧血はよくみられ、直接クームス試験陽性で、網状赤血球の増加とハプトグロビンの低下などの所見から診断されます。白血球減少や血小板減少もよくみられ、抹梢での破壊によるものと考えられています。
抗リン脂質抗体症候群では、血栓症の多発、血小板減少に基づく出血症状などがみられますが、APTTの延長とともに抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグランとなどが出現し、梅毒血清反応の生物学的偽陽性などがみられることもあります。
治療法
冒されている臓器や重症度によって治療の程度が変わりますが、基本はステロイドの投与になります。 皮膚症状だけの軽症の場合は、ステロイド軟膏の局所療法や少量のステロイド内服になりますが、明らかな汎血球減少症がある中等症ではステロイドの中等量の内服になります。
ループス腎炎やCNSループスのある重症例では、ステロイドの大量内服やステロイドパルス療法(大量ステロイドを短期に点滴する)を行いますが、
それでも不十分の場合はエンドキサンなどの免疫抑制薬の内服・点滴あるいは血漿交換療法が行われます。
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投稿一覧
昔ではかなり難しい病気とされていましたが、今は治療法も進歩し20年も、30年も長生きできるようになりました。
プレドニン、免疫抑制剤の副作用がまだまだ問題点ですが。。。、
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