MRA 概要
悪性関節リウマチは、既存の関節リウマチ(RA)に、血管炎をはじめとする関節以外の症状を認め、難治性もしくは重篤な病態を伴います。
米国では、リウマチ様血管炎(rheumatoid vasculitis)と呼んでいます。
RA患者の0.5%~1%を占め、RAに比べると男性にやや多く、40~60代の高齢者に多い。
症状
RAの活動性が高く関節外症状を伴います。発熱、体重減少、全身倦怠感、リンパ腺腫脹などの全身症状が強く出ます。
全身性の血管炎を伴うものは、肺臓炎、胸膜炎、心膜炎、心筋炎、腸梗塞などがみられます。
末梢性の血管炎を伴うものでは、多発性神経炎、皮膚潰瘍、指趾壊疽(ししえそ)、上胸膜炎、皮下結節、皮膚出血などがあります。
診療科
膠原病内科
検査
関節リウマチ参照
診断基準
1. 臨床症状
(1) 多発性神経炎:知覚障害,運動障害いずれを伴ってもよい。
(2) 皮膚潰瘍又は梗塞又は指趾壊疽:感染や外傷によるものは含まない。
(3) 皮下結節:骨突起部、伸側表面もしくは関節近傍にみられる皮下結節。
(4) 上強膜炎又は虹彩炎:眼科的に確認され,他の原因によるものは含まない。
(5) 滲出性胸膜炎又は心嚢炎:感染症など、他の原因によるものは含まない。癒着のみの所見は陽性にとらない。
(6) 心筋炎:臨床所見,炎症反応,筋原性酵素、心電図,心エコーなどにより診断されたものを陽性とする。
(7) 間質性肺炎又は肺線維症:理学的所見、胸部X 線、肺機能検査により確認されたものとし病変の広がりは問わない。
(8) 臓器梗塞:血管炎による虚血、壊死に起因した腸管、心筋、肺などの臓器梗塞。
(9) リウマトイド因子高値:2 回以上の検査で、RAHA ないしRAPA テスト2,560 倍以上(RF960IU/m ・以上)の高値を示すこと。
(10) 血清低補体価又は血中免疫複合体陽性:2 回以上の検査で、C3、C4 などの血清補体成分の低下又はCH50 による補体活性化の低下をみること、又は2 回以上の検査で血中免疫複合体陽性(C1q 結合能を基準とする)をみること。
2. 組織所見
皮膚、筋、神経、その他の臓器の生検により小なし中動脈壊死性血管炎、肉芽腫性血管炎ないしは閉塞性内膜炎を認めること。
3. 判定基準
関節リウマチの診断基準(アメリカリウマチ協会の1987 年改定基準(表1))を満たし、上記に掲げる項目の中で
(1) 1 臨床症状(1)~(10)のうち3項目以上満たすもの、又は
(2) 1 臨床症状(1)~(10)の項目の1項目以上と2 組織所見の項目があるものを悪性関節リウマチ(MRA)と診断する。
4. 鑑別診断
鑑別すべき疾患、病態として、感染症、続発性アミロイドーシス、治療薬剤(特に金剤、D-ペニシラミン、ブシラミンなど)の副作用があげられる。
アミロイドーシスでは、胃、直腸、皮膚、腎、肝などの生検によりアミロイドの沈着をみる。
関節リウマチ(RA)以外の膠原病(全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎など)との重複症候群にも留意する。
シェーグレン症候群は、関節リウマチに最も合併しやすく、悪性関節リウマチにおいても約10%の合併をみる。フェルティー症候群も鑑別すべき疾患であるが、この場合、白血球数減少、脾腫、易感染性をみる。
表1:関節リウマチの診断基準(アメリカリウマチ協会改定案1987)
(1) 少なくとも1 時間以上持続する朝のこわばり(6 週間以上持続)
(2) 3領域以上の関節の腫張(6 週間以上持続)
(3) 手(wrist)、中手指関節(MCP)、近位指関節(PIP)の腫張(6 週間以上持続)
(4) 対称性関節腫張
(5) 手・指のX 線変化
(6) 皮下結節(リウマトイド結節)
(7) リウマトイド因子の存在
以上の7 項目中4 項目を満たすものをRA とする。
病期 ステージ
表2:悪性関節リウマチの重症度分類
- 1 度
免疫抑制療法(ステロイド薬,免疫抑制薬の投与)なしに1 年以上活動性の血管炎症状(皮下結節や皮下出血などは除く)を認めない寛解状態にあり,血管炎症状による非可逆的な臓器障害を伴わない患者 - 2 度
血管炎症状(皮膚梗塞・潰瘍,上強膜炎,胸膜炎,間質性肺炎など)に対し免疫抑制療法を必要とし,定期的な外来通院を要する患者,もしくは血管炎症状による軽度の非可逆的な臓器障害(末梢神経炎による知覚障害,症状を伴わない肺線維症など)を伴っているが,社会での日常生活に支障のない患者 - 3 度
活動性の血管炎症状(皮膚梗塞・潰瘍,上強膜炎,胸膜炎,心外膜炎,間質性肺炎,末梢神経炎など)が出没するために免疫抑制療法を必要とし,しばしば入院を要する患者,もしくは血管炎症状による非可逆的臓器障害(下記~のいずれか)を伴い社会での日常生活に支障のある患者
下気道の障害により軽度の呼吸不全を認め,PaO2 が60~70Torr
NYHA 2 度の心不全徴候を認め,心電図上陳旧性心筋梗塞,心房細動(粗動),期外収縮又はST 低下(0.2mV 以上)の1 つ以上を認める
血清クレアチニン値が2.5~4.9mg/d ・の腎不全
両眼の視力の和が0.09~0.2 の視力障害
拇指を含む2 関節以上の指・趾切断
末梢神経障害による1 肢の機能障害(筋力3) - 4 度
活動性の血管炎症状(発熱,皮膚梗塞・潰瘍,上強膜炎,胸膜炎,心外膜炎,間質性肺炎,末梢神経炎など)のために,3 カ月以上の入院を強いられている患者、もしくは血管炎症状によって以下に示す非可逆的関節外症状(下記~のいずれか)を伴い家庭での日常生活に支障のある患者
下気道の障害により中等度の呼吸不全を認め、PaO2 が50~59Torr
NYHA 3 度の心不全徴候を認め、X 線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2 度以上の房室ブロック、心房細動(粗動)、人工ペースメーカーの装着のいずれかを認める
血清クレアチニン値が5.0~7.9mg/d ・の腎不全
両眼の視力の和が0.02~0.08 の視力障害
1 肢以上の手・足関節より中枢側における切断
末梢神経障害による2 肢の機能障害(筋力3) - 5 度
血管炎症状による重要臓器の非可逆的障害(下記~のいずれか)を伴い,家庭内の日常生活に著しい支障があり,常時入院治療,あるいは絶えざる介護を要する患者
下気道の障害により高度の呼吸不全を認め、PaO2 が50Torr 未満
NYHA 4 度の心不全徴候を認め、X 線上CTR60%以上、心電図上陳旧性心筋梗塞、脚ブロック、2 度以上の房室ブロック,心房細動(粗動),人工ペースメーカーの装着のいずれか2 つ以上を認める
血清クレアチニン値が8.0mg/d ・以上の腎不全
両眼の視力の和が0.01 以下の視力障害
2 肢以上の手・足関節より中枢側における切断
末梢神経障害による3 肢の機能障害(筋力3)、もしくは1 肢以上の筋力全廃(筋力2 以下)
治療法
急性期には、安静と感染防止が重要です。
基本的なRAに対する治療に加えて、関節外症状に対しての治療が必要となります。
血管炎に対しては、大量のステロイド(プレドニゾロン60mg/日)を使用し、免疫抑制剤を必要とすることが多い。
予後
予後が一般に悪く、死因としては呼吸不全が最も多く、感染症の合併、心不全、心筋梗塞、腎不全などがあげられます。
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