概要
本来は、子宮腔内面にある子宮内膜が子宮以外の場所にも増殖したもので、子宮腺筋症(内性子宮内膜症)と外性子内膜症があります。女性ホルモンの働きで増殖、進行する病気で、月経のある女性にみられます。
子宮腺筋症
子宮内膜組織が子宮筋層の内部ある場合です。それが卵巣から出るホルモンの影響で筋層内に月経の時の子宮内膜と同じように増殖、出血して月経困難症の原因になります。
子宮は肥大し、強い月経痛と過多月経があり、30代ごろより始まって次第に症状が強くなります。
診断
内診所見や内視鏡検査、子宮卵管造影法、超音波検査などの結果を確認後、腹腔鏡検査で確定診断します。
後天性月経困難症が見られた場合は、子宮内膜症の疑いがあります。
病期 ステージ
非直視下ではBeecham分類が用いられますが、直視下でのRe-AFS分類(米国不妊学会による分類方法)が用いられます。
薬
消炎鎮痛剤
炎症を鎮めて、腫れや発赤、痛みなどの症状をおさえます。熱を下げる効果があります。
- ボルタレン錠(一般名:ジクロフェナクナトリウム)
- ボルタレンSRカプセル(一般名:ジクロフェナクナトリウム)
- ナボールSRカプセル(一般名:ジクロフェナク ナトリウム)
- 副作用
胃痛、腹痛、吐き気、嘔吐、食欲不振、口内炎、発疹、じんま疹、むくみ、肝臓や腎臓の働き低下
- 副作用
治療法
大まかに分けて待機療法、薬物療法、外科療法、マイクロ波照射 の4種の治療法がある。
待機療法
Re-AFS分類でステージ I、IIで無症状の患者が対象。不妊との関係は明らかではないため、しばらくは治療せずに経過を観察します。
- 補助療法
腹腔鏡下でブルーベリー・スポットの焼灼などを行います。
薬物療法
子宮内膜はホルモンの影響を受けるため、ホルモン療法が基本です。
プロスタグランジン合成阻害剤
子宮内膜症の疼痛は局所的なプロスタグランジン濃度の変化が考えられているため。長期の低エストロゲン療法を避けたい就学中の学生や不妊患者が主な対象。
ゲスターゲン療法
エストロゲン+プロゲステロン剤を投与する偽妊娠療法。いわゆるピルが用いられる。但し保健適応を受けた製剤は一種類(ルナベル配合錠:販売-日本新薬)だけで、それ以外の製剤は自由診療(全額自己負担)となる。
外科療法
腹腔鏡下手術
ブルーベリー・スポットの焼灼、癒着の剥離、卵巣嚢腫の摘出や固定のほか疼痛に対して仙骨子宮靭帯切断術などを施行する手術。
卵巣チョコレート嚢胞アルコール固定術
嚢胞内容を吸引後生理食塩水で洗浄し、100%エタノールを注入して固定する。これを繰り返す手術。
マイクロ波照射
- マイクロ波とは
周波数1~30GHz(波長30~1cm)の範囲の電磁波はマイクロ波と呼ばれています。
電磁波は電場と磁場の相互作用によって発生する空中(真空中も)を伝わる波動です。電磁波は周波数の違いによって、ラジオ波、マイクロ波、赤外線、可視光、紫外線、X線、ガンマ線などさまざまに名前が付けられています。
マイクロ波は直進性、反射屈折性など光に近い性質を示すためレーダーや通信に広く使われています。また、水などの誘電物質にマイクロ波が照射されると効率よく熱が発生します。この現象は電子レンジ(マイクロ波オーブン)に応用されています。生体組織も水を多く含むためマイクロ波を照射されると発熱します。
マイクロ波子宮内膜アブレーション(MEA)
MEAは、子宮内からマイクロ波を子宮内膜へ照射して壊死させる治療法で、術後は出血量が激減します。
MEAは子宮摘出術の代替治療法として、体に負担をかけずに、数分から数十分で安全に実施できる治療法です。
閉経までの5~10年の期間を、外科的治療を回避したいために十分満足できない状態で我慢している患者さんが、MEAによって過多月経を治療できます。
なお、妊娠を望む方には適応できません。
- マイクロ波アプリケーター
マイクロ波アプリケーターの直径は4mmで子宮の中までスムーズに挿入可能な形状です。
マイクロ波はアプリケーターの先端周囲の組織を加熱します。子宮腔の内面をすべて覆うようにマイクロ波を照射できたら終了です。
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