全身性エリテマトーデス(Systemic lupus erythematosus:SLE)は全身の炎症によりさまざまな症状を示し、よくなったり、悪くなったりを繰り返し、慢性の経過をたどる病気[2]です。
20~40歳の出産可能な年齢の女性に発病しやすく、男性はその10分の1の発病率です。現在の日本では、10万人に7~8人の発病率です。
自分の体の成分に対する抗体が作られますが、とくに細胞の核にあるDNAに対する抗体が特徴的で、それが免疫複合体を作って炎症を起こし組織を壊していきます。
自己免疫疾患のひとつで、膠原病[3](こうげんびょう)の代表的疾患です。 SLEの原因は不明ですが、外敵や異種の蛋白質に対する防御反応であるべき免疫に異常を来し、自分の体の成分に対し抗体(自己抗体)を作って組織を破壊するために引き起こされた病気[2]といえます。
この免疫異常が起こる機序(仕組み)がわかれば、病気[2]を基から治すことができます。
病気[2]を起こしやすい遺伝的な体質にウイルス感染などの環境因子がきっかけになって、免疫異常が起こると考えられています。
ループスは、ラテン語で狼を意味します。エリテマトーデスは紅い斑点の意味です。
1829年にフランスの皮膚科医ビットという人が初めてこの病気[2]を診た時に、皮膚の病変がまるで狼にかまれた時の痕に似ていたことから、このような病名をつけました。
通常アメリカリウマチ学会の診断基準に従って診断する。
典型的な例は、38℃~40℃に及ぶ高熱、関節痛、筋痛、顔面の両頬に蝶の形をした発疹(蝶形紅斑)などをもって急性の発病をします。
全身症状として倦怠感、疲労感などが起こります。
蝶形紅斑は頬のみならず鼻筋にも現れるのが特徴です。
日光過敏が顕著で、皮膚生検では、真皮表皮結合部IgGの沈着が認められます。(ループスバンドテスト陽性) ディスコイド疹(円板状の皮疹)は顔面、耳、頭部、関節背面などによくみられます。
当初は紅斑ですが、やがて硬結、角化、瘢痕、萎縮をきたします。このほか凍瘡様皮疹、頭髪の脱毛、日光過敏等がみられます。
口腔、鼻咽腔に無痛性の潰瘍が現れることもあります。
ループスは狼を意味するラテン語である。蝶形紅班や円板状皮疹が狼の咬傷を想起させることから由来するされる。皮膚症状から皮膚科を初めに受診されることも多い。
頬骨部から鼻梁に広がる両翼を広げた蝶の形に類似した紅斑で、蝶形紅斑と呼称されることも多い。小児の皮膚筋炎においても同様の外観を呈することがあり鑑別を要する。
慢性の鱗屑を伴う円板状皮疹は次第に周囲が肥厚し中央が陥没様になっていく。
肌の露出部位において紫外線暴露後に発赤や水泡形成などの反応を示す日光過敏が観察されることがある。
通常は無痛性の口腔内潰瘍で、典型的発生部位は硬口蓋である。医師の口腔内診察で初めて気づかれることがある。
環状の紅斑局面である環状紅斑がみられることがある。
手指末梢に凍瘡のような外観を呈することがある。爪周囲に紅斑が観察されることもある。
SLEに特異的ではないが、寒冷刺激によって手指の色調が白色化・青紫色化するレイノー症状が観察される。
四肢に淡褐色の網目状皮疹が見られることがある。SLEに特異的ではないが、リベドー疹と呼ばれ、観察された場合は血管炎もしくは腎炎の存在に留意する。
頭皮に紅斑が形成され局所的な脱毛局面が形成される場合と。皮疹を伴わずびまん性の脱毛が発生する場合とがある。
皮下脂肪組織に炎症が発生し、脂肪組織が自壊、瘢痕形成に至る。脂肪組織が豊富な顔面頬部や臀部などに好発し、外観上は陥凹した局面を形成する。触診上、内部の瘢痕を硬結として触れる。治癒後も皮膚陥凹が残りやすく治療は急がれる。
急性期に筋肉痛、関節痛がみられ、関節炎もみられるが、骨に影響を及ぼすことはありません。
胸膜、心外膜、腹膜といった漿膜に炎症が発生し胸膜炎や心外膜炎をおこし、炎症性浸出液が貯留する例がある。SLEでは通常は血清CRPは上昇しないが、こうした漿膜炎を生じた場合、しばしばCRPの上昇が観察される。
胸部レントゲンでの胸水貯留像、心胸郭比の拡大、エコーによる心嚢液や腹水貯留、腹部膨隆が観察される。
糸球体腎炎(ループス腎炎)は約半数の症例で出現し、放置すると重篤となります。急性期では、蛋白尿、むくみがみられ、尿沈渣[25]では赤血球、白血球、
円柱などが多数出現します。
中枢神経症状を呈する場合は重症である(CNSループス)。鬱状態、失見当識、妄想などの精神症状と痙攣、脳血管障害がよくみられます。
心外膜炎はよくみられ、タンポナーデとなることも稀にあります。心筋炎を起こすと、頻脈、不整脈[30]が現れます。
弁膜病変は一般に無症状ですが、軽度の大動脈弁不全や僧帽弁不全を起こすことがあります。
また、弁尖に疣贅(いぼ)を形成してLiebman-Sachs 心内膜炎を呈することもあります。
また、反復する血栓性静脈炎を起こす場合には、抗りん脂質抗体症候群の合併が疑われるます。
しばしば肝機能障害を伴う。抗ミトコンドリアM2抗体陽性の胆汁うっ滞性肝硬変症(PBC)や抗LKM-1抗体陽性の自己免疫性肝炎[35](AIH)の合併もあるが、これらがない症例でも生化学データでのASTやALTといった肝逸脱酵素が上昇することがある。
腹痛がみられる場合には、腸間膜血管炎やループス腹膜炎に注意する。
稀に膵炎を起こすこともあります。肝障害は軽度で一過性の場合が多い。
溶血性貧血[7]はよくみられ、直接クームス試験陽性で、網状赤血球の増加とハプトグロビンの低下などの所見から診断されます。白血球減少や血小板減少もよくみられ、抹梢での破壊によるものと考えられています。
抗リン脂質抗体症候群では、血栓症の多発、血小板減少に基づく出血症状などがみられますが、APTTの延長とともに抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグランとなどが出現し、梅毒血清反応の生物学的偽陽性などがみられることもあります。
リンパ節腫脹は急性期によく現れます。
冒されている臓器や重症度によって治療の程度が変わりますが、基本はステロイドの投与になります。 皮膚症状だけの軽症の場合は、ステロイド軟膏の局所療法や少量のステロイド内服になりますが、明らかな汎血球減少症がある中等症ではステロイドの中等量の内服になります。
ループス腎炎やCNSループスのある重症例では、ステロイドの大量内服やステロイドパルス療法(大量ステロイドを短期に点滴する)を行いますが、
それでも不十分の場合はエンドキサンなどの免疫抑制薬の内服・点滴あるいは血漿交換療法が行われます。
アフェレーシス治療は、病的な自己抗体やサイトカイン[55]などの炎症物質を、血液中から一時的に除去するのが狙いであり、抗体産生を抑える効果は持ち合わせていない。
治療抵抗性のループス腎炎、中枢神経性の病変、肺胞出血などの重症病変において行われることがある。
内服薬や注射剤等の一般的な内科治療のみでは治療困難な患者に対して、中空糸膜や吸着材による分離技術を応用して病気[2]の原因となる物資(病因物質)を取り除く治療法です。
新鮮凍結血漿を用いて、患者の血漿中に存在する病因物質を体外循環により直接除去します。
血漿成分から一定の分子サイズのものを除去し残りを返血する療法
吸着カラムを用いた選択的抗DNA抗体吸着療法
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