概要
甲状腺機能亢進症の代表的な病気がバセドウ病です。
この病気は、甲状腺臓器の特異性な自己免疫疾患のひとつで、10000人中4~8人いると言われており、女性患者が男性患者より5倍と多いのも特徴としてあげられます。
甲状腺機能異常があると、全身にさまざまな症状が現れます。新陳代謝が活発になり、その為に常にジョギングしているような状態で、脈拍が速く、汗が多く、暑がりで疲れやすくなる、37.5℃前後の微熱といった症状が現れます。
精神的には、落ち着きが無く、いらいら感や不眠になり、食欲が増しても体重が減ってしまう人や、むしろ食べ過ぎて体重が増えてしまう人もいます。
顔つきや目つきがきつくなったり、眼が出てくる眼球突出はバセドウ病の代表的な症状ですが、眼球突出をきたす割合は3割程度です。特に喫煙している方に多く禁煙することが重要です。
症状
甲状腺ホルモンが必要量より大量に産生され、血液中に多く流れ全身の新陳代謝を活発にさせます。
症状の大部分は、甲状腺ホルモンの過剰によるものです。体の代謝が過度に刺激されるため、運動時と同じ状態になります。
目の症状
- 目つきがきつい、眼球突出、複視
眼球の前方突出、上まぶたの腫れ、眼裂の開大(驚いたときの目に似る)、眼球運動の障害のために物が二重に見える(複視)、などいろいろな症状がありますが、必ずしもそうなるとは限りません。
目の症状の大部分は、甲状腺ホルモン過剰ではなく、眼球の後ろの組織や眼肉の免疫的な炎症によるものです。
循環器症状
- 動悸、頻脈、心房細動、心不全、むくみ、息切れ
交感神経が興奮状態になるため、脈拍が早くなり動悸を感じます。不整脈もよくみられ、高齢者ではむくみや呼吸困難などの心不全症状を示すこともあります。
筋骨症状
- 脱力感、筋力低下、骨粗鬆症、手足のふるえ、周期性四肢麻痺(男性のみ)
筋力が衰えて疲れやすく、階段の昇り降りや立ち上がるのも辛くなります。
また、手などが細かく震えるため書字などに困難を感じます。
血液値
- コレステロール低下、血糖上昇、血圧上昇、肝障害
原因
体質の変化により、自分の甲状線を異物とみなして、甲状腺の細胞の表面にあるTSHレセプターに対する自己抗体(TSHレセプター抗体、TRAb)が産生されます。
このTRAb がTSHの代わりに甲状腺のTSHレセプターにくっつくと、常に甲状腺を刺激する為に、甲状腺ホルモンを作り続けるバセドウ病になると考えられています。
検査
- 甲状腺ホルモン(freeT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定
甲状腺機能の把握には、欠かせない血液検査です。
バセドウ病ではfreeT4が高値、TSHが測定できないくらいに低値になります。 - TSH受容体抗体(TRAb)の測定
採血で測定します。バセドウ病であれば陽性となります。
10%くらいは陰性となりますが、最近は測定キットの性能もあがり、バセドウ病と他の疾患を高精度で鑑別できるようになってきています。
その他、甲状腺に対する抗体(抗Tg抗体、抗TPO抗体)も測定します。
- 超音波検査
甲状腺の大きさ、甲状腺内の血流、甲状腺の内部に結節(しこり)がないかどうかを検査します。
診断
診断ガイドライン(日本甲状腺学会)
- a)臨床所見
- 1.頻脈、体重減少、手指振戦、発汗増加等の甲状腺中毒症所見
- 2.びまん性甲状腺腫大
- 3.眼球突出または特有の眼症状
- b)検査所見
- 1.遊離T4、遊離T3のいずれか一方または両方高値
- 2.TSH低値(0.1μU/ml以下)
- 3.抗TSH受容体抗体(TRAb, TBII)陽性、または刺激抗体(TSAb)陽性
- 4.放射線ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率高値、シンチグラフィでびまん性
- バセドウ病
- a)の1つ以上に加えて、b)の4つを有するもの
- 確からしいバセドウ病
- a)の1つ以上に加えて、b)の1、2、3を有するもの
- バセドウ病の疑い
- a)の1つ以上に加えて、b)の1と2を有し、遊離T4、遊離T3高値が3ヶ月以上続くもの
- 付記
- 1.コレステロール低値、アルカリフォスターゼ高値を示すことが多い。
- 2.遊離T4正常で遊離T3のみが高値の場合が稀にある。
- 3.眼症状がありTRAbまたはTSAb陽性であるが、遊離T4およびTSHが正常の例はeuthyroid Graves' diseaseまたはeuthyroid ophthalmopathyといわれる。
- 4.高齢者の場合、臨床症状が乏しく、甲状腺腫が明らかでないことが多いので注意をする。
- 5.小児では学力低下、身長促進、落ち着きの無さ等を認める。
- 6.遊離T3(pg/ml)/遊離T4(ng/dl) 比は無痛性甲状腺炎の除外に参考となる。
合併症
- 心臓病
長い間、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている間は、心臓にかかる負担が大きく、疲弊してしまいます。その結果、不整脈を起こしたり、心不全といって心臓が充分働けない状態になります。
甲状腺クリーゼ 体が強いストレスを受けた時、他の病気で大きな手術をしたり、重い感染症にかかった時に起こることがあります。甲状腺クリーゼになると、40℃の高熱、激しい頻脈(1分間に150以上)、下痢、多汗、意識状態の混濁、あるいは意識不明といった状態になります。 - 甲状腺中毒性周期性四肢麻痺
朝起きたときに手足、とくに足が動かなくなることがあります。
発作は長くても数時間で自然に治まりますが、何度も繰り返して起こります。これは、男性だけに見られる症状です。 - 低カリウム性周期性四肢麻痺
麻痺は下肢優位で対称性があり、飲酒や摂食が契機となり、明け方に好発します。 呼吸筋麻痺を来たすことはなく、知覚障害も認められません。 - 高血糖
バセドウ病では、尿に糖が出ることがあります。これは食事の吸収がよくなるためで、食後に高血糖になり尿糖が陽性となります。 - その他
ごく稀に、毛髪が抜けやすい、爪の変形、皮膚の白斑が現れます。また、すねの一部が腫れて色が黒くなる症状(前頚骨粘液水腫)もあります。
薬
抗甲状腺薬は甲状腺に集まり、ホルモンの合成を阻害する薬で、1日6錠の内服で治療を始めるのが一般的です。
ヨードの摂りすぎは抗甲状腺薬の効き目を阻害しますので昆布類は制限します。飲み始めてから1~2週間して血中甲状腺ホルモンは低下し始めます。
メルカゾール錠の場合、正常域に達するのに6週間程かかりますが、その間はβ-ブロッカーを併用しホルモン過剰による頻脈や動悸などの症状を抑えます。
血液中の甲状腺ホルモン値が低下してきたら抗甲状腺薬を減らすタイミングを計ります。
自覚症状は改善し甲状腺腫は小さくなっていきますが、減らすのが遅いと甲状腺ホルモンが下がりすぎ、甲状腺腫が再び大きくなり、体がだるいなどの症状が出てきます。逆に減量が早すぎると、甲状腺ホルモンは再び異常高値となってしまいます。 コントロールが非常に難しいため、少なくとも4週間ごとの来院と甲状腺機能チェックが必要です。
併用療法で用いる甲状腺ホルモン製剤
薬の副作用
- 発疹
痒い赤い小さな丘疹が多発したり、みみず腫れ(蕁麻疹)が生じます。生じた場合はメルカゾール錠をプロパジール錠に、プロパジール錠をメルカゾール錠にと変更します。発疹に対しては抗ヒスタミン薬の内服や塗布を行います。 - 無顆粒球症
顆粒球という種類の白血球が激減し感染に対する防衛機能が衰え、気づかぬうちに敗血症などの重大な結果を生じかねません。発熱したり扁桃炎症状などの症状が生じた場合には直ちに薬を辞め、白血球の血液検査をしなければなりません。
頻度は1000人に2~3人ですが、おこりやすい方をあらかじめ特定することはまだできません。薬を中止すれば1~2週間で顆粒球は回復しますが、その間、抗生剤などでサポートします。 - 肝機能障害
治療法
甲状腺の働きを抑えるため、甲状腺ホルモンが過剰に作られないようにします。
抗甲状腺剤の内服
- 症状が軽い人、甲状腺腫が小さい人などですが1年~数年間の服用が必要です。
- 外来治療が出来、妊娠・授乳が可能である。
- 治療期間が長く、實解率が低い。副作用(白血球減少、皮疹)に注意が必要。 甲状腺腫の小さい人に効果がある。
- 服用に年齢の制限はない。
手術(甲状腺亜全摘術)
短期間に實解が得られ永久實解率が高く、手術後の反回神経麻痺や副甲状腺機能低下症は稀である。
- 入院が必要であり、体に傷跡が残る。
- 若年者から中年者、薬の副作用がある人、甲状腺腫が大きい人、甲状腺腫瘍の合併している人、社会的事情があり早期に確実に實解希望の人などが 適応する。
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