概要
骨髄(骨の内部)に細菌が侵入して、化膿性の炎症を起こします。抗生物質により治療を行いますが、抗生物質が効きにくいメチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)などが感染して発病する場合もあり、慢性化して再発を繰り返します。
小児では成長に伴って骨の変形や短縮などの問題が起こることもあります。
骨髄とは
骨の真ん中にある血液をつくる能力のある軟らかい組織です。
この骨髄は、周りを軟らかい海綿骨という骨で覆われ、さらにその周りは硬い皮質骨という骨で覆われています。
- 顎骨骨髄炎
顎骨骨髄がさまざまな原因で感染し、炎症が起きてしまった難治性疾患のことをいいます。
原因
細菌の感染源が扁桃腺や尿路の感染などにあり、血液中を流れて骨髄に感染する場合があります。
また、化膿した病巣があって、そこから波及して骨髄に感染を起こすこともあります。
怪我や手術などにより骨髄が外部にさらされ細菌が直接、骨髄に感染することもあります。 感染は、細菌または真菌類によって引き起こされます。膿が骨のなかにたまって、膿瘍(のうよう)を形成することがあります。
膿瘍は骨の血流を妨ぐため、抗生物質が効きにくくなります。 原因となる菌 黄色ぶどう球菌が最も多く、緑膿菌(りょくのうきん)、表皮ぶどう球菌、変形菌、MRSAなどがあります 病気の症状 急性化膿性骨髄炎 乳幼児期や10歳前後の学童期に多く、上肢より下肢に好発します。
上気道炎(じょうきどうえん)や尿路感染に続いて骨髄炎になることがあります。発熱、不機嫌、食欲不振、全身倦怠感、痛みや発赤が起こります。
発症は、大腿骨や脛骨(けいこつ)、上腕骨などの部位に起こります。 慢性化膿性骨髄炎 発熱などの全身症状はほとんどみられませんが、
患部ははれて痛みや発赤が認められます。慢性的に感染していると、皮膚に瘻孔(ろうこう)が起こります。
排膿が長期間続くと皮膚が悪性変化を起こし、稀に扁平上皮(へんぺいじょうひ)癌になることがあります。
- ブロディー骨膿瘍
成人に発症する特殊なタイプです。炎症症状が少なく、骨腫瘍との区別が必要になります。 - 慢性骨髄炎
血流が減少し、骨組織が壊死(えし)することにより、慢性の感染が長年にわたって断続的に起こることがあります。
診断
- 検査
- 血液検査
白血球数の増加、赤血球沈降速度の亢進、C反応性蛋白(CRP)の陽性など、炎症性の変化がみられます。 - アルカリフォスファターゼなどの骨代謝マーカーを調べます。
- X線検査、MRI 骨シンチグラフィ(薬剤を注入して行う画像検査)
急性化膿性骨髄炎の初期で、X線像では変化が現れにくい場合には画像検査が有効です。 - 瘻孔造影
慢性化膿性骨髄炎では、病変部の範囲を確認します。
問題のある箇所の骨や膿を採取し、培養して原因となる菌を特定します。時に血液の細菌培養も行います。
治療法
治療の目的は感染巣を除去し、慢性感染への拡大を防ぐことです。糖尿病は感染を助長するので、同時に積極的に治療を行う必要があります。また、ステロイド薬や免疫抑制薬などを使用している場合は、元の疾患との兼ね合いをみながら薬の量を決める必要があるかもしれません。
- 急性化膿性骨髄炎
患部を安静にし、局所を冷やし、抗生物質を点滴します。 - 慢性化膿性骨髄炎
全身へ抗生物質が投与されます。しかし、炎症がおさまらない場合は外科的治療を行います。 外科的治療 壊死した骨組織を除去します。
それにより欠損部が生じますが、骨を他の部位から移植したり、自然に盛り上がってくるのを待ちます。
この時、持続灌流(じぞくかんりゅう)*1を行うことがあります。
*1 持続灌流とは、体外から患部に生理的食塩水を注入するチューブと排液するチューブを入れて、1日中生理的食塩水を患部に流して洗浄するとともに、壊死に陥った組織を排出する目的で行います。期間は症状によって異なりますが、通常は2週間が目安です。
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