モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症) 概要
内頚動脈は、脳に酸素や栄養を運ぶ、大切な動脈です。モヤモヤ病は、内頚動脈が首から頭蓋内に入り最初に血管を分岐する内頚動脈終末部が急速に狭窄ないしは閉塞する病気で、ウィリス動脈輪が機能せず脳の血流が不足します。
その結果、動脈輪に近くにある毛細血管が多数拡張して側副血行路(迂回路)を形成し脳の血流を維持しようとします。血管撮影検査などでこれらの毛細血管が煙のようにもやもやと見えるためモヤモヤ病と名づけられました。
- ウィリス動脈輪
人の脳は左右の内頸動脈と左右の椎骨動脈の合計4本の血管によって栄養されており、これら4本の血管は脳底部で互いに繋がって 輪を形成しています。これをウィリス動脈輪といいます。この動脈輪は動脈が一本詰まっても他の血管から血液が流れこむための安全装置として働いています。
症状
小児の場合は、反復性の頭痛、運動麻痺、痙攣発作、言語障害、失神発作、脱力発作などの症状が起こります。また、過呼吸により大きな息を短い時間に繰り返すと、血液中のある成分のバランスが崩れ、もやもや血管が細くなり、血流が低下し脳梗塞のような症状が現れます。このような脳梗塞に似た症状を虚血と呼びます。虚血の症状は、左右交代で現れたり、時に片方から反対側へ症状が進行することがあります。虚血の症状がさらに進行すると、麻痺や知能低下が起こる場合があります。
大人の場合は、脳出血、虚血症状、頭痛、意識障害、運動麻痺などの症状が起こります。
脱力発作
人の脳は酸素を必要としていますが、脳血管の拡張や収縮をコントロールしているのは二酸化炭素です。
通常、血液中の酸素が少なくなるときは呼吸困難な状況であると考えられ、二酸化炭素は増えます。そこで、脳へ酸素を多く送るため、脳血管を広げます。
逆に、泣いたり、笛を吹いたりして過呼吸の状態になると、血液中の酸素は増えますが二酸化炭素は減ってしまいます。すると、体は酸素がたくさんある状態だと判断して、脳血管を収縮させて血流を少なくしてしまいます。もやもや病の人は普段から脳血流が低下している上に、血管がさらに収縮して血流が低下してしまうと、脳血流の不足が一気にきて脳が働くなり、脱力発作が生じてしまいます。
検査
- MRI検査・MRA検査
MRI・MRAは、造影の必要も無く、短時間でできますので、子供も検査できます。
MRIは脳の形を描出し、脳梗塞を早期に発見できますし、MRAでは脳の血管の形を見ることが出来ます。正確ではありませんが、ある程度は脳血管の大きさや形がわかり、もやもや血管を見ることが出来ます。また、撮像法には種類があり、水が黒く映る「T1強調像」、水が白く写る「T2強調像」、脳梗塞があれば白く映る「拡散強調像」が最も頻繁に用いられています。
- CTスキャン
血管の外に出た血液が白く描出されるので、脳出血の診断に適しています。しかし、CTスキャンでは造影剤の注射を行わないと脳血管の検査ができず、虚血型もやもや病をCTスキャンで診断することは困難です。大人で発症される人は、頭痛、吐き気、意識障害、片麻痺などで発症する脳出血型のことが多いので、CT検査で脳出血がないかを確認する必要があります。しかし、初期の脳梗塞巣を発見することは難しいため、脳梗塞の早期診断には、MRI検査を行う必要があります。
- ヘリカルCT (3D-CTA: 3次元CT血管撮影)
造影剤の注射を行いながらCTスキャンの検査を行うことで、脳および頭皮の血管の走行を三次元的に検査することができます。得られた画像を3次元に再構成することで、脳内の血管の走行や、頭皮の血管の走行を知ることができ、どの血管をどこに手術でつなげばよいかを知ることができます。また、血管が細くなっている場合は、どの程度細くなっているかを知ることができます。また、術後の検査にも用いることが出来ます。
- 脳循環代謝検査(SPECT・PET)
脳血管撮影やMRAは脳血管の形を見るものですが、SPECT (スペクト:Single Photon Emission Computed Tomography)やPET(ペット: Positron Emission computed Tomography)は、より症状と関係する脳循環代謝をみる検査です。脳循環すなわち脳の血液のめぐり方をみることで、脳の中のどの部分に血流が不足しているのかを検討します。病態を理解したり、バイパス手術の必要性を検討するにはこの検査が必要です。安静時の撮影と、アセタゾラミド(ダイアモックス)という過呼吸状態を擬似的に作り出す薬剤を注射しての撮影の2回の撮影が必要で、その比較で手術を行うかどうかを判断します。
病期 ステージ
もやもや病の命名をされた鈴木先生(東北大学グループ)は、もやもや病を6つの病期に分けて解説しています。
鈴木の6期相分類 (脳血管撮影の所見からの分類)
- I期
内頚動脈終末部の狭窄 - II期
内頚動脈終末部の狭窄にもやもや血管が見られる - III期
もやもや血管が増勢し前大脳動脈、中大脳動脈群が脱落し始める - IV期
病変が後ろへ及び後大脳動脈群が脱落し始める - V期
内頚動脈系主幹動脈がほとんど消失 - VI期
外頚動脈および椎骨動脈系よりのみ血流保全
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