概要
クッシング症候群(Cushing's syndrome)は、慢性の糖質コルチコイド過剰による症候群です。ただし、下垂体腺腫が原因で起こるクッシング症候群を、特にクッシング病(Cushing's disease)と呼びます。
副腎でコルチコステロイドがつくられすぎるのは、副腎に問題があるか、あるいは下垂体からの刺激が過剰であることが原因です。下垂体に腫瘍などの異常があると、副腎の副腎皮質ホルモンの分泌を調節する副腎皮質刺激ホルモンが下垂体から大量に分泌されるようになります。
良性腫瘍(腺腫)が副腎内に発生すると、これもコルチコステロイドがつくられすぎる原因になります。副腎腺腫は非常によくみられますが、ホルモンを過剰に分泌するのは、ごく少数です。
クッシング症候群は、病状が重いために大量のコルチコステロイドを服用しなければならない人にも起こる場合があります。また、喘息のためにコルチコステロイドを吸入した場合や、皮膚に局所的に使用したときにも起こることがあります。
症状
- 中心性肥満
体幹の周りに過剰な脂肪がつきます。特に背中の上部に目立ちます。
中心性肥満により、皮膚線条(妊娠線)が出来ます。
- 満月様顔貌(ムーンフェイス)
顔が丸く膨らみ皮膚が薄くなります。
- 高血圧
糖質コルチコイドが持つ鉱質コルチコイド作用によってナトリウムの再吸収が亢進し、ナトリウムによる浸透圧で水の再吸収が亢進し、循環血漿量が増加することで高血圧、高ナトリウム血症になります。 - 一般糖尿病症状
糖質コルチコイドが血糖値を上昇させるホルモンであるため。 - 皮膚
皮膚は薄くなり、あざができやすく、打撲傷や切り傷は治りにくくなります。
- 筋力低下
筋肉は衰えて力が弱くなります。 腕と脚は太った体幹に比べてほっそりします。
糖質コルチコイドが持つ鉱質コルチコイド作用によってナトリウムの再吸収が亢進し、逆にカリウム利尿が亢進して低カリウム血症が起こるため。 - 骨粗鬆症
骨が弱くなります。 - その他
感染症に対する抵抗力が弱くなります。
腎結石と糖尿病が発生するリスクが増大します。
うつ病や幻覚などの精神障害が起こることがあります。
女性は月経周期が不規則になります。
一部の人では副腎でアンドロゲン(テストステロンとその類似物質)も大量につくられるため、女性は顔の毛や体毛が濃くなり、頭髪は薄くなります。
クッシング症候群の小児は成長が遅く、身長は低いままです。
原因
通常、副腎でのコルチコステロイドの過剰産生を引き起こす下垂体の腫瘍です。
診療科
内分泌科
下垂体外科
診断
クッシング症候群が疑われる場合は、血液中の主な副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの値を測定します。。
正常ならば、コルチゾールの値は1日のうちで午前中に高く、その後低下します。
クッシング症候群の場合、コルチゾールは1日中高い値を示します。
コルチゾール値が高ければ、デキサメタゾン抑制試験を行います。デキサメタゾンは下垂体を抑制して副腎のコルチゾールの分泌を抑えます。クッシング症候群の原因が下垂体による過剰な刺激ならば、コルチゾール値はある程度は下がります。クッシング症候群の原因がほかにある場合、コルチゾール値は高いままです。
副腎皮質刺激ホルモンの値が高ければ、副腎が過剰に刺激されていることを意味します。
合併症
クッシング病の治療のために副腎を両方とも摘出した人は、ネルソン症候群を発症することがあります。
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