- 閉塞性血栓血管炎(TAO:thromboangiitis obliterans) 概要
- 症状
- 原因
- 診療科
- 検査
- 診断
- 病期 ステージ
- 合併症
- 薬
- 治療法
閉塞性血栓血管炎(TAO:thromboangiitis obliterans) 概要 [1]
Leo Buergerによって初めて報告されたことから、バージャー病(英語読み)、あるいはビュルガー病(ドイツ語読み)と名づけられた病気[2]で、閉塞性血栓血管炎とも呼ばれます。
四肢の末梢血管に閉塞をきたし、虚血症状および足趾や手指の潰瘍・壊疽を引き起こす病気[2]です。また、表在静脈にも血栓性静脈炎を生じる場合がある。
20歳代から40歳代で多く発症し、圧倒的に男性が多い。また患者の9割以上に喫煙歴がある。
手足の動脈が閉塞して、その結果虚血症状*1が起こります。
自覚症状は、指趾の冷感やしびれ感、蒼白化に始まり、間欠性跛行*2、激しい痛み、さらには皮膚に潰瘍を形成して、ついには壊死に陥ることもあります。
また手足の静脈にも炎症を起こし、静脈に沿って発赤や痛みを生じることもあります(遊走性静脈炎)。
原因は不明ですが、四肢末梢血管の炎症に起因するものと考えられています。
また、喫煙は発症の誘因になると考えられています。
- 身体診察
全肢について視診、皮膚温や脈拍の触診、血管雑音の聴診を行う。アレンテストや下肢挙上下垂試験も虚血の診断に有用である。
- 機能検査
下肢の罹患では足関節上腕血圧比(ankle-brachial index: ABI)や足趾上腕血圧比(toe-brachial index: TBI)が低値を示す。運動負荷ABIの回復時間は、血液供給の予備能の評価に有用である。
潰瘍や強い疼痛など重度の虚血を示唆する症状があれば、皮膚灌流圧や経皮酸素分圧の測定で血流を評価する。
サーモグラムを用いた皮膚温測定では、冷水負荷によるレイノー現象や、治療薬に対する反応が観察できる。
- 画像検査
動脈の閉塞部位はMR angiographyやCT angiographyによって把握できる。
血行再建術を考慮する場合には、血管造影検査によって詳細な評価を行う。
閉塞像は途絶型、先細り型が多い。発達した側副血行路の像はコルクの栓抜き状、樹根状、橋状を呈する。
病変よりも中枢側の動脈壁は平滑で、動脈硬化性の所見を認めない。
- 血液検査
特異的なマーカーはない。炎症の強さは必ずしも赤血球沈降速度やCRPに反映されない。
- 50歳未満の発症
- 喫煙歴を有する
- 膝窩動脈以下の閉塞がある
- 動脈閉塞がある、または遊走性静脈炎の既往がある
- 高血圧[9]症、高脂血症、糖尿病[10]を合併しない
- 以上の5項目を満たし、膠原病[11]の検査所見が陰性の場合、バージャー病と診断できるが、女性例、非喫煙例では鑑別診断を厳密に行う。
3度以上を医療費助成の対象とする。
- 1度
患肢皮膚温の低下、しびれ、冷感、皮膚色調変化(蒼白、虚血性紅潮など)を呈する患者であるが、禁煙も含む日常のケア、または薬物療法などで社会生活・日常生活に支障のないもの。
- 2度
上記の症状と同時に間欠性跛行(主として足底筋群、足部、下腿筋)を有する患者で、薬物療法などにより、社会生活・日常生活上の障害が許容範囲内にあるもの。
- 3度
指趾の色調変化(蒼白、チアノーゼ)と限局性の小潰瘍や壊死または3度以上の間欠性跛行を伴う患者。通常の保存的療法のみでは、社会生活に許容範囲を超える支障があり、外科療法の相対的適応となる。
- 4度
指趾の潰瘍形成により疼痛(安静時疼痛)が強く、社会生活・日常生活に著しく支障を来す。薬物療法は相対的適応となる。したがって入院加療を要することもある。
- 5度
激しい安静時疼痛とともに、壊死、潰瘍が増悪し、入院加療にて強力な内科的、外科的治療を必要とするもの。(入院加療:点滴、鎮痛、包帯交換、外科的処置など)
- ノバスタンHI注[19](一般名:アルガトロバン水和物)
- アルガトロバン注射液(一般名:アルガトロバン水和物)
- アピスタンディン注射用(一般名:アルプロスタジル アルファデクス)
- アルプロスタジル注(一般名:アルプロスタジル)
- パルクス注ディスポ(一般名:アルプロスタジル)
- リプルキット注(一般名:アルプロスタジル)
- デフィブラーゼ点滴静注液(一般名:バトロキソビン)
- ヘプロニカート錠[20](一般名:ヘプロニカート)
抗血小板薬や抗凝固薬の投与、プロスタグランジンE1製剤の静注などを行う。
可能であればバイパス術などの血行再建術を行う。
吻合に適した動脈や自家静脈がないなど血行再建術が不可能な場合は、交感神経節切除手術や、交感神経節ブロックを行う。