- 概要
- 分類
- 原因
- 症状
- 診療科
- 診断
- 合併症
- 薬
- 治療法
ネフローゼ症候群とは、尿に大量の蛋白が出て、血液中の蛋白質が減少するため、浮腫(むくみ)や、コレステロールなどの脂質の上昇などが起こる病気[2]です。
この症候群には、いろいろな腎疾患が含まれていて、ひとつの疾患ではありません。
- 一次性(原発性)ネフローゼ症候群
原発性糸球体疾患によるもの
- 二次性(続発性)ネフローゼ症候群
糖尿病[4]性腎症、膠原病[5]、アミロイド[6]ーシスなどの全身の病気[2]によるもの。
- 微小変化型ネフローゼ症候群
15歳以下に発症するもの
- 膜性腎症を中心とした他の組織型
50歳以上に発症するもの
糸球体基底膜の高分子蛋白(主にアルブミン)*1の透過性亢進により高度の蛋白尿が認められ、このため低蛋白血症となります。
浮腫の原因は、大量の蛋白尿喪失による血漿膠質浸透圧の低下や循環血漿量*2の増加などが考えられています。
顔や手足に浮腫が起こります。ときに全身の浮腫が著しくなり、胸水や腹水が起こる場合もあります。また、尿が出にくくなり腎機能の障害、血圧低下を認めることもあります。
確定診断には、組織の一部を採取して調べる腎生検[11]が必要になります。
ネフローゼ症候群の診断基準 [12]
- 蛋白尿
1日蛋白量3.5g以上を持続する
- 低蛋白血症
血清総蛋白量は6.0g/100ml以下(低アルブミン血症とした場合は血清アルブミン量3.0g/100ml以下)
- 高脂血症
血清総コレステロール値250mg/100ml以下
- 浮腫
注意
(1) 上記蛋白尿、低蛋白血症(低アルブミン血症)は本症候群診断のための必須条件である。
(2) 高脂血症、浮腫は本症候群診断のための必須条件ではない。
(3) 尿沈渣[13]中、多数の卵円型脂肪体、重屈折性脂肪体の検出は本症候群診断の参考になる。
血液が凝固しやすい状態のため、腎静脈や下肢深部静脈に血栓症を起こすことがあります。
入院安静が原則です。
浮腫に対して水分、塩分、蛋白の摂取量の制限がされています。
- 一次性ネフローゼ症候群[19]での薬物療法としては副腎皮質ステロイド[20]薬が用いられることが多いのですが、その反応性は病型や重症度によって異なります。
- 副作用
耐糖能障害、感染症、骨粗鬆症、消化性潰瘍、高血圧[21]、精神症状
- 難治性のネフローゼ症候群に対しては免疫抑制薬を併用することがあります。
- 抗血小板薬や蛋白尿減少作用が認められる降圧薬であるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬が処方されます。
- 二次性ネフローゼ症候群では、基礎疾患に対する治療が優先されます。
続発症の治療として、高脂血症に対しては抗高脂血症薬を投与します。浮腫に対しては利尿薬が用いられます。高度な浮腫、胸水・腹水、末梢循環不全状態に対してアルブミン製剤を使用することがありますが、効果は一時的で、また尿蛋白量の増加により腎障害を助長することがあるので注意が必要です。機械を使用した血液濾過(ろか)法を行うこともあります。
- 小児の微小変化型ネフローゼ症候群はステロイド薬により90%以上、成人でも約75%が完全寛解(尿蛋白の陰性化)しますが、約60%に再発が認められます。
- 他のネフローゼ症候群は一般的にはステロイド抵抗性が多く、巣状分節状糸球体硬化症、膜性腎症などでは約70%が抵抗性です。ネフローゼ状態が続けば、徐々に腎機能障害が認められるようになります。