WS 概要
ウェルナー症候群(Werner Syndrome )は、 早老症の代表的疾患で、さまざまな生理的老化に似た症状をあらわします。
1904年、ドイツ人内科医オットー・ウェルナー(Otto Werner)により、臨床症例が初めて報告されました。
原因
ウェルナー症候群は、WRN遺伝子の異常によって発症します。
WRN遺伝子に異常が生じると、正常なDNAが保てなくなり、傷を受けやすくなります。DNAが損傷を受けると健康な細胞活動も障害され老化現象が生じるようになります。
常染色体劣性遺伝病であり、ヒト8番染色体上にあるRecQ型DNA/WRNと呼ばれる単一遺伝子の異常があります。
WRN
WRNはすべての細胞で働くタンパク質で、DNAの二重らせんをほどく作用があり、DNAの複製、異常の修復、組み換え、転写などの生命の基本現象に関わります。そのため、異常によって細胞増殖の停止、染色体不安性、DNA複製速度の低下などを引き起こし、寿命が短縮します。
症状
低身長、低体重、白髪、両側性白内障、皮膚の硬化、萎縮、嗄声*1、その他、耐糖能低下、骨粗鬆症、性腺機能低下、尿中ヒアルロン酸量の増加がみられます。
診療科
皮膚科、内科
検査
染色体検査を行い、WRNヘリカーゼ遺伝子変異を見つけます。
PCR法やダイレクトシークエンス法を用いた遺伝子検査が行われることもあります。
診断基準
(1)主要徴候(10歳以後~40歳までに出現)
- 早老正外貌
白髪、禿頭
- 白内障
- 皮膚の萎縮、硬化または潰瘍形成。
(2)その他の徴候と所見
- 原発性性腺機能低下
- 低身長及び低体重
- 音声の異常
声帯の萎縮により、特有の高調な声となる。
- 骨の変形
骨粗鬆症、骨の変形、特に扁平足が多い。
- 糖同化障害
ブドウ糖負荷試験で耐糖能の低下と認め、インスリンの過剰反応を伴うことが多い。
- 早期に現れる動脈硬化
- 尿中ヒアルロン酸増加
- 血族結婚
(3)皮膚線維芽細胞の分裂能の低下
- 線維芽細胞の染色体に転座(モザイク)を、高頻度に認める。
合併症
- 糖尿病
インスリン抵抗性を伴った糖尿病を高率に合併します。
- 脂質異常症、高LDLコレステロール血症
- 動脈硬化
- 四肢末端の難治性皮膚潰
皮膚の潰瘍が発生しやすく、難治性です。
- 悪性腫瘍
甲状腺がん、悪性線維性組織球腫、悪性黒色腫
- 骨粗鬆症
薬
治療法
根本的な治療法がないため、合併症への対症療法が中心になります。生活習慣病の予防、精神的ストレスなどをなるべくためないようにします。