1: 2013-05-01 (水) 14:47:49 cons | 現: 2019-01-29 (火) 22:17:09 kondo | ||
---|---|---|---|
Line 2: | Line 2: | ||
#contents | #contents | ||
*概要 [#ddb412f3] | *概要 [#ddb412f3] | ||
+ | 大腸がんは、長さ約2mの大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんで、日本人ではS状結腸と直腸にがんができやすいといわれています。 | ||
+ | 大腸がんは、大腸粘膜の細胞から発生し、&ruby(せんしゅ){腺腫};という良性腫瘍の一部ががん化して発生したものと正常粘膜から直接発生するものがあります。 | ||
+ | |||
大腸癌の多くは、結腸と直腸の粘膜の分泌腺組織にできる腺癌です。 | 大腸癌の多くは、結腸と直腸の粘膜の分泌腺組織にできる腺癌です。 | ||
- | 初めは、結腸や直腸の粘膜やポリープが膨らんできます。癌が進行すると結腸壁や直腸壁に浸潤し、周囲のリンパ節にも浸潤します。腸壁、特に直腸壁からの血液は肝臓へ流れるため、肝臓へ転移しやすく、その後すぐにリンパ節にも転移します。 癌は腹部の触診で大きなしこりとして発見される場合があります。 | + | 初めは、結腸や直腸の粘膜やポリープが膨らんできます。癌が進行すると結腸壁や直腸壁に浸潤し、周囲のリンパ節にも浸潤します。 |
+ | 腸壁、特に直腸壁からの血液は肝臓へ流れるため、肝臓へ転移しやすく、その後すぐにリンパ節にも転移します。 癌は腹部の触診で大きなしこりとして発見される場合があります。 | ||
**原因 [#r06f6e7b] | **原因 [#r06f6e7b] | ||
欧米食の特徴である高脂肪、高蛋白かつ低繊維成分の食事との関係にあり、腸の中に常時存在している大腸菌などの腸内細菌や、胆汁成分の変化・遺伝因子等が原因として考えられています。 | 欧米食の特徴である高脂肪、高蛋白かつ低繊維成分の食事との関係にあり、腸の中に常時存在している大腸菌などの腸内細菌や、胆汁成分の変化・遺伝因子等が原因として考えられています。 | ||
**症状 [#b3c3d355] | **症状 [#b3c3d355] | ||
大腸癌はゆっくりと進行し、長い間無症状です。症状は癌の種類やできた部位、範囲によって異なります。 | 大腸癌はゆっくりと進行し、長い間無症状です。症状は癌の種類やできた部位、範囲によって異なります。 | ||
- | 初期症状は、潜血(見た目で確認出来ない少量の出血量)からくる疲労や脱力、倦怠感などがあります。 腫瘍が結腸の左側(下行結腸)にあると、早期に腸が閉塞する可能性があります。下行結腸は非常に細く、腸内の便がすでに半固形状態になっているため、そこで癌が発育すると便が詰まってしまいます。 | + | |
+ | 初期症状は、潜血(見た目で確認出来ない少量の出血量)からくる疲労や脱力、倦怠感などがあります。 腫瘍が結腸の左側(下行結腸)にあると、早期に腸が閉塞する可能性があります。下行結腸は非常に細く、腸内の便がすでに半固形状態になっているため、そこで癌が発育すると便が詰まってしまいます。 | ||
癌は結腸の部位に輪状に生じ、閉塞に至る間、便秘と下痢を頻繁に繰り返します。痙攣性の激しい腹痛を起こし排便障害が起こるので、すぐに治療をしなければなりません。 | 癌は結腸の部位に輪状に生じ、閉塞に至る間、便秘と下痢を頻繁に繰り返します。痙攣性の激しい腹痛を起こし排便障害が起こるので、すぐに治療をしなければなりません。 | ||
- | 結腸の右側(上行結腸)に癌ができた場合は、癌が末期状態になるまで閉塞することはありません。上行結腸は太く、腸内の便はまだ水様性だからです。 | + | |
+ | 結腸の右側(上行結腸)に癌ができた場合は、癌が末期状態になるまで閉塞することはありません。上行結腸は太く、腸内の便はまだ水様性だからです。 | ||
結腸癌の多くは出血しますが、進行はゆっくりです。血液が便に筋状についたり便に混ざることが多いのですが、出血が認められないこともあります。 | 結腸癌の多くは出血しますが、進行はゆっくりです。血液が便に筋状についたり便に混ざることが多いのですが、出血が認められないこともあります。 | ||
+ | |||
この場合は便潜血反応の検査をします。 直腸癌の初期症状は排便時の出血です。この他の症状として、排便時の痛みや残便感があります。 | この場合は便潜血反応の検査をします。 直腸癌の初期症状は排便時の出血です。この他の症状として、排便時の痛みや残便感があります。 | ||
座るときに痛むことがありますが、普通は周囲に癌が転移するまでは痛みはありません。 | 座るときに痛むことがありますが、普通は周囲に癌が転移するまでは痛みはありません。 | ||
- | -盲腸癌,上行結腸癌,横行結腸癌 | + | |
+ | -盲腸癌、上行結腸癌、横行結腸癌 | ||
大きくなるまで症状が出にくいため、腹痛、腫瘤(固いしこり)として見つかります。 慢性的な出血による貧血症状も見られます。 下行結腸癌、S状結腸癌、直腸癌 血便、粘血便、便柱が細くなったり、便秘、下痢が特徴的です。 | 大きくなるまで症状が出にくいため、腹痛、腫瘤(固いしこり)として見つかります。 慢性的な出血による貧血症状も見られます。 下行結腸癌、S状結腸癌、直腸癌 血便、粘血便、便柱が細くなったり、便秘、下痢が特徴的です。 | ||
+ | |||
**診断 検査 [#j1dd43bd] | **診断 検査 [#j1dd43bd] | ||
***スクリーニング検査 [#c8ce222f] | ***スクリーニング検査 [#c8ce222f] | ||
Line 23: | Line 33: | ||
腫瘍マーカーは、癌細胞で特異的に産生されるものではなく、癌になれば100%上昇するものではありません。良性の疾患でも上昇する事があります。 腫瘍マーカーは、ある程度進行した癌に対して、とても意義ある検査であり、治療により変動するため、治療効果判定に有用であると言われています。 | 腫瘍マーカーは、癌細胞で特異的に産生されるものではなく、癌になれば100%上昇するものではありません。良性の疾患でも上昇する事があります。 腫瘍マーカーは、ある程度進行した癌に対して、とても意義ある検査であり、治療により変動するため、治療効果判定に有用であると言われています。 | ||
早期の癌に対してはまだ十分だとはいえず、臨床の中では画像診断や他の臨床診断の補助診断として位置付けられています。 | 早期の癌に対してはまだ十分だとはいえず、臨床の中では画像診断や他の臨床診断の補助診断として位置付けられています。 | ||
- | 大腸癌に有用である腫瘍マーカーはCEA、CA19-9などです。 | + | 大腸癌に有用である腫瘍マーカーは[[CEA]]、CA19-9などです。 |
- | -CEA | + | -[[CEA]] |
- | 手術で癌を根治切除すると一旦、CEAは減少します。 | + | 手術で癌を根治切除すると一旦、[[CEA]]は減少します。 |
- | 術後の経過観察のために、定期的にチェックシ、術後減少したCEAが再度上昇した場合、あるいは切除後も減少しない場合は癌が残存している可能性が考えられます。 | + | 術後の経過観察のために、定期的にチェックシ、術後減少した[[CEA]]が再度上昇した場合、あるいは切除後も減少しない場合は癌が残存している可能性が考えられます。 |
大腸癌の陽性率は70%です。 | 大腸癌の陽性率は70%です。 | ||
-CA19-9 | -CA19-9 | ||
Line 33: | Line 43: | ||
**結腸癌の病期分類 [#g1c0ecc7] | **結腸癌の病期分類 [#g1c0ecc7] | ||
-ステージ0 | -ステージ0 | ||
- | 癌がポリープを覆っている大腸(結腸)の内層(粘膜)にとどまるもの。この段階で治療を行った場合の5年生存率は95%以上です。 | + | 癌がポリープを覆っている大腸(結腸)の内層(粘膜)にとどまるもの。 |
-ステージ1 | -ステージ1 | ||
- | 癌が大腸の内層と筋層の間に広がったもの(この中は血管、神経、リンパ管などが走っています)。この段階で治療を行った場合の5年生存率は90.6%です。 | + | 癌が大腸の内層と筋層の間に広がったもの(この中は血管、神経、リンパ管などが走っています)。 |
-ステージ2 | -ステージ2 | ||
- | 癌が筋層から結腸の外層に浸潤したもの。この病期で治療を行った場合の5年生存率は83.6%です。 | + | 癌が筋層から結腸の外層に浸潤したもの。 |
-ステージ3 | -ステージ3 | ||
- | 癌が結腸の外層を越えて周囲のリンパ節に広がったもの。この病期で治療を行った場合の5年生存率は71.3%です。 | + | 癌が結腸の外層を越えて周囲のリンパ節に広がったもの。 |
-ステージ4 | -ステージ4 | ||
- | 癌が肝臓、肺、卵巣、腹腔(腹膜)などの他の器官へ広がったもの。この時期で治療を行った場合の5年生存率は14.3%です。 | + | 癌が肝臓、肺、卵巣、腹腔(腹膜)などの他の器官へ広がったもの。 |
+ | |||
+ | |||
+ | |||
+ | **薬 [#udfc689b] | ||
+ | ***抗がん剤 [#z77f426e] | ||
+ | -5-FU注(ファイブエフユー) | ||
+ | -5-FU錠 | ||
+ | この抗がん剤は古くから使用されているものです。 | ||
+ | 5-FUの代謝産物が細胞の核内のチミジル酸合成酵素によるDNA合成経路の阻害をする。 | ||
+ | またRNAを障害し抗がん作用を発揮するともいわれる。 | ||
+ | 5-FUの作用を増強するものとして1-LV(ロイコボリン)がありこれは5-FUの抗がん作用であるチミジル酸合成酵素阻害を増強する。 | ||
+ | |||
+ | -CPT-11(一般名:塩酸イリノテカン) | ||
+ | 抗腫瘍性アルカロイドであるカンプトテシンから合成されたものであり生体内で活性物質のSN38に変換されI型トポイソメラーゼを阻害することによりDNA合成を阻害して抗がん作用を発揮する。 | ||
+ | |||
+ | -エルプラット点滴静注液(一般名:オキサリプラチン) | ||
+ | 新しい白金製剤で、これまで胃がんなどで使用 されていたシスプラチンも同様の白金製剤ですが、この薬に比べて腎臓の負担が少ない薬です。 | ||
+ | 海外では5FU/1-LVと併用して用いられることが多い薬剤 です。 | ||
+ | |||
+ | ***分子標的薬 [#rcc7869b] | ||
+ | -アバスチン点滴静注用(一般名:ベバシズマブ) | ||
+ | 血管新生阻害薬で、他の抗がん剤と併用することでよい治療成績が得られています。 | ||
+ | がんが増殖するに伴って、がん自身に栄養を供給するために血液を送りこむ血管を新しく作ります(血管新生)。 | ||
+ | アバスチンは、この血管新生を促すためにがん細胞が分泌するVEGFというタンパク質に結合して、血管の新生を抑え、栄養を行き渡らせないようにして、増殖のスピードを低下させるはたらきがあります。 | ||
+ | |||
+ | -アービタックス注射液(一般名:セツキシマブ) | ||
+ | 大腸がんを対象としたモノクローナル抗体です。 | ||
+ | モノクローナルとは、「特定の物質だけに結合する抗体を選び、人口に作り上げたもの」という意味合いですが、体内の特定の分子を狙い撃ちにして、その機能を抑えるはたらきをするため、分子標的薬と呼ばれています。 | ||
+ | セツキシマブは、がん細胞が増殖するために必要なシグナルを受け取るEGFR(上皮成長因子受容体)というタンパク質を標的としています。 | ||
+ | セツキシマブがEGFRと結合すると、がん細胞の表面に顔を出してアンテナの役割を果たしているEGFRは働けなくなり、その結果、シグナル伝達が遮断され、がん細胞は増殖できなくなります。 | ||
+ | |||
+ | -ベクティビックス点滴静注(一般名:パニツムマブ) | ||
+ | ベバシズマブやセツキシマブと同じく、進行・再発の大腸がんを対象とした分子標的薬です。 | ||
+ | がん細胞の表面に出ているEGF(上皮細胞増殖因子)の受容体に自ら結合することで、がんの増殖を抑えるはたらきをします。 | ||
+ | |||
+ | パニツムマブは、セツキシマブと違い、完全ヒト化抗体であることから、注射投与中または投与後に現れるアレルギーによるトラブルが起こりにくいというメリットがあるとされています。 | ||
+ | しかし、セツキシマブでもこのアレルギーのトラブルはまれにしか起こらないと報告されているので、完全ヒト化抗体の薬が登場しても、大きな変化にはならない等意見もあります。 | ||
**治療法 [#b307081c] | **治療法 [#b307081c] | ||
Line 91: | Line 138: | ||
-晩期合併症 | -晩期合併症 | ||
放射線の蓄積作用により閉塞性血管炎が進み、照射後数か月から数年後に障害が起こります。 腹部や骨盤腔への照射では、直腸炎、出血、頻便、便失禁、膀胱炎、隣接する臓器(膣、膀胱など)と瘻孔が起こる。 | 放射線の蓄積作用により閉塞性血管炎が進み、照射後数か月から数年後に障害が起こります。 腹部や骨盤腔への照射では、直腸炎、出血、頻便、便失禁、膀胱炎、隣接する臓器(膣、膀胱など)と瘻孔が起こる。 | ||
+ | |||
+ | **罹患した著名人 [#j346b1d5] | ||
+ | -大島康徳 元プロ野球選手、監督、野球解説者 | ||
+ | -原口&ruby(ふみひと){文仁}; プロ野球選手、阪神タイガース捕手 | ||
+ | 2019年1月、26歳で大腸がんの診断を受ける。 | ||
+ | -村上弘明 俳優 | ||
+ | 2019年2月、大腸がんと診断され手術を受ける。 |
- 大腸がん のバックアップ一覧
- 大腸がん のバックアップの現在との差分(No. All)
スポンサーリンク
ぺージ情報 | |
---|---|
ぺージ名 : | 大腸がん |
ページ別名 : | 大腸癌 |
ページ作成 : | kondo |
閲覧可 | |
グループ : | すべての訪問者 |
ユーザー : | すべての訪問者 |
編集可 | |
グループ : | 登録ユーザ |
ユーザー : | なし |
Counter: 12996,
today: 1,
yesterday: 0