副腎酵素欠損症は、ステロイドホルモンを作る過程に関与する酵素やコレステロールを輸送する蛋白が先天的に欠損することで起こる病気です。
この疾患は常染色体劣性遺伝を示します。発症は出生後1ヶ月以内がほとんどですが、酵素障害の程度が軽いもので幼児期から思春期年齢で発症することもあります。
ステロイドホルモンはコレステロールを原料として種々の酵素を介して作られます。
ステロイドホルモンが作られる過程には五つのチトクローム酵素(P450)と3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの六つの酵素が関与しています。
特にコルチゾールができないことにより、下垂体から ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)が過剰に分泌される結果副腎が過形成をきたすものを先天性副腎過形成症と呼んでいます。これには下記の五つの病気があります。
その他の病気
先天性副腎過形成症では、コルチゾールとアルドステロンが不足することから、低血糖、食欲不振、易疲労 感、低血圧、塩喪失、循環障害、ショックなどがみられます。
電解質異常として低ナトリウム血症、高カリウム血症がみられます。またACTH過剰による症状として皮膚に黒色の色素沈着もみられます。
その他欠損する酵素の種類によりさまざまな外性器異常がみられますが、性ステロイド過剰による外性器異常として女児外性器の男性化(陰核肥大、共通泌尿生殖洞など)、逆に性ステロイド不足による異常として男児に尿道下裂、停留精巣や女性型の外性器などがみられます。
男児のリポイド過形成症、3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症、17α-水酸化酵素欠損症では、性ステロイド不足が起こることから男児の外性器は女性化の異常を示します。女児の21水酸化酵素欠損症、11β-水酸化酵素欠損症では外性器の男性化の異常がみられます。
新生児期から治療をうけていない場合には男女とも思春期早発症がみられることがあります。さらに女児の3β-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ欠損症では性ステロイドが増加することから外性器の男性化がみられます。
女児の17α-水酸化酵素欠損症では女性ホルモンが不足することから二次性徴発達不全や無月経がみられます。
その他、鉱質コルチコイドのみが不足する欠損症では低血圧、塩喪失などの症状が主にみられます。
その他11β-水酸化酵素欠損症では高血圧がみられます。
P450オキシドレダクターゼ欠損症では女児では出生時、外性器の 男性化が認められます。逆に男児には尿道下裂、停留精巣がおこります。また17α-水酸化酵素活性低下により性ホルモンが不足することから男子、女子においても二次性徴発達不全がおこります。さらに21-水酸化酵素活性低下によりコルチゾールが不足し副腎不全をおこすこともあります。
またこの病気では頭蓋骨癒合症、橈骨上腕骨癒合症、大腿骨の彎曲、関節拘縮を伴うことがあります。