中性子捕捉療法(BNCT)とは、原子炉等から発生する中性子とそれに増感効果のあるほう素との反応を利用して、正常細胞にあまり損傷を与えず、腫瘍細胞のみを選択的に破壊する治療法です。
がん細胞と正常細胞が混在している悪性度の高い脳腫瘍[2]をはじめとするがんに特に効果的で生活の質(QOL)に優れています。
BCNTは、腫瘍細胞に取り込まれたほう素10Bと中性子との核反応により発生する強力な粒子線(アルファ線、7Li粒子)によって治療を行います。用いられる中性子は、ほう素10Bとの反応が大きな熱中性子をはじめとする低エネルギーの中性子です。
ホウ素[4]化合物をあらかじめ投与しておき、腫瘍にホウ素[4]が集まったときに熱中性子線を照射すると、ほう素化合物をほとんど取り込まない正常細胞はあまり大きなダメージを受けませんが、ホウ素[4]をたくさん取り込んだ腫瘍細胞では細胞内部でホウ素[4]と熱中性子の核反応が生じ、核反応により発生したアルファ線と7Li粒子が腫瘍細胞のみを殺します。
大きな利点は、アルファ線も7Li粒子もおよそ10ミクロンしか飛ばないため、正常細胞を傷つけることなく腫瘍細胞のみが選択的に治療できることです。
国内の多くの放射線治療は、X線やガンマ線と呼ばれる放射線を使っています。
X線やガンマ線と呼ばれる放射線治療は、悪性グリオーマは広い範囲に微小浸潤しているため、腫瘍細胞を完全に治療するためには広い範囲の正常脳組織に大量の放射線をかける必要が生じます。
強力に治療を行おうとすればするほど、微小浸潤のある周りの正常脳組織の障害を避けることができません。
BNCTで発生するアルファ線と7Li粒子は、X線やガンマ線と異なり、発生してから止まるまでの距離(飛程)が短く(ほぼ細胞1個分の長さ)、腫瘍細胞で発生したアルファ線も7Li粒子も周囲の正常脳組織に与える影響は小さいとされています。また、BNCTで発生するアルファ線と7LiはX線やガンマ線に比べて生物学的な効果が2~3倍程度高いとされており、治療効果が高いことが期待されます。
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