ページへ戻る

− Links

 印刷 

B型肝炎 のバックアップ差分(No.2) :: 医療 Wiki

illness:B型肝炎 のバックアップ差分(No.2)

« Prev[4]  Next »[5]
1: 2013-05-01 (水) 15:03:34 seria[6] ソース[7] 2: 2015-06-27 (土) 23:54:17 seria[6] ソース[8]
Line 10: Line 10:
***B型慢性肝炎 [#ie7c8726] ***B型慢性肝炎 [#ie7c8726]
一般に急性肝炎でみられる症状は出現しにくく、自覚症状はほとんどありません。しかしB型慢性肝炎では、しばしば「急性増悪」と呼ばれる一過性の強い肝障害を起こることがあります。この際には急性肝炎と同様に、全身倦怠感、食欲不振、褐色尿、黄疸が出現することがあります。 一般に急性肝炎でみられる症状は出現しにくく、自覚症状はほとんどありません。しかしB型慢性肝炎では、しばしば「急性増悪」と呼ばれる一過性の強い肝障害を起こることがあります。この際には急性肝炎と同様に、全身倦怠感、食欲不振、褐色尿、黄疸が出現することがあります。
 +
B型慢性肝炎は母児感染でHBVに感染した人などの持続感染者に起こりますが、出産後数年~十数年間は肝炎は発症せず、HBVは排除されずに体内で共存しています。 B型慢性肝炎は母児感染でHBVに感染した人などの持続感染者に起こりますが、出産後数年~十数年間は肝炎は発症せず、HBVは排除されずに体内で共存しています。
ところが思春期を過ぎると自己の免疫力が発達し、生まれたときから体内に存在したHBVを、病原菌であると認識できるようになり、白血球(リンパ球)がHBVを体内から排除しようと攻撃を始めます。この時リンパ球がHBVの感染した肝細胞も一緒に壊してしまうので肝炎が生じます。 ところが思春期を過ぎると自己の免疫力が発達し、生まれたときから体内に存在したHBVを、病原菌であると認識できるようになり、白血球(リンパ球)がHBVを体内から排除しようと攻撃を始めます。この時リンパ球がHBVの感染した肝細胞も一緒に壊してしまうので肝炎が生じます。
 +
一般に10~30才代に一過性に強い肝炎を起こし、HBVはHBe抗原陽性の増殖性の高いウイルスからHBe抗体陽性の比較的おとなしいウイルスに変化します。HBe抗体陽性となった後は、多くの場合そのまま生涯強い肝炎を発症しません。 一般に10~30才代に一過性に強い肝炎を起こし、HBVはHBe抗原陽性の増殖性の高いウイルスからHBe抗体陽性の比較的おとなしいウイルスに変化します。HBe抗体陽性となった後は、多くの場合そのまま生涯強い肝炎を発症しません。
このように思春期以降一過性の肝炎を起こした後はそのまま一生肝機能が安定したままの人がおよそ80~90%、残りの10~20%の人は慢性肝炎へと移行し、その中から肝硬変、肝臓癌になる人も出てきます。 このように思春期以降一過性の肝炎を起こした後はそのまま一生肝機能が安定したままの人がおよそ80~90%、残りの10~20%の人は慢性肝炎へと移行し、その中から肝硬変、肝臓癌になる人も出てきます。
Line 55: Line 57:
医薬品として、ウイルス性肝炎等の抗ウイルス薬や多発性骨髄腫等の抗がん剤として用いられています。 医薬品として、ウイルス性肝炎等の抗ウイルス薬や多発性骨髄腫等の抗がん剤として用いられています。
--IFNα --IFNα
-スミフェロン®:腎癌・多発性骨髄腫・慢性骨髄性白血病・ヘアリー細胞白血病・亜急性硬化性全脳炎・HTLV-1脊髄症・B型肝炎・C型肝炎+スミフェロン注DS®:腎癌・多発性骨髄腫・慢性骨髄性白血病・ヘアリー細胞白血病・亜急性硬化性全脳炎・HTLV-1脊髄症・B型肝炎・C型肝炎
オーアイエフ®:慢性骨髄性白血病・B型肝炎・C型肝炎 オーアイエフ®:慢性骨髄性白血病・B型肝炎・C型肝炎
--IFNα2b --IFNα2b
Line 74: Line 76:
HBVに対する有効な抗ウイルス薬は、IFN(注射薬)と核酸アナログ製剤(内服薬)の2剤に大きく分けられます。大まかには、IFNは一般に年齢が35才程度までの若年者で、肝炎の程度の軽く肝硬変になっていない人が対象です。 HBVに対する有効な抗ウイルス薬は、IFN(注射薬)と核酸アナログ製剤(内服薬)の2剤に大きく分けられます。大まかには、IFNは一般に年齢が35才程度までの若年者で、肝炎の程度の軽く肝硬変になっていない人が対象です。
核酸アナログ製剤は 35才以上の非若年者、35才以下であっても肝炎の進行した人に対して投与されます。 核酸アナログ製剤は 35才以上の非若年者、35才以下であっても肝炎の進行した人に対して投与されます。
--IFN療法(インターフェロン療法) +****IFN療法(インターフェロン療法) [#a64efba0] 
-IFN療法は自然経過でHBe抗原陽性がHBe抗体陽性にならずに、慢性肝炎の状態にある比較的若年者が治療の対象になります。IFNによって自己の免疫の力を強めて、激しい肝炎を起こしやすいHBe抗原陽性のHBVを、比較的おとなしいHBe抗体陽性のHBVに変えることが治療の主な目的です。B型慢性肝炎に対するIFN療法は、基本、週3回で24週間の投与期間ですが、B型肝炎の治療ガイドラインは状況に応じて24~48週間のIFN投与を推奨しています。IFN療法で効果があればIFN投与を中止してからも、そのままHBVは増殖せず肝炎は沈静化します。しかしIFNが効かずにHBe抗原が陰性化しない症例、IFNを中止するとHBVが再度増えて肝炎が再燃する症例も多くあります。 +IFN療法は自然経過でHBe抗原陽性がHBe抗体陽性にならずに、慢性肝炎の状態にある比較的若年者が治療の対象になります。IFNによって自己の免疫の力を強めて、激しい肝炎を起こしやすいHBe抗原陽性のHBVを、比較的おとなしいHBe抗体陽性のHBVに変えることが治療の主な目的です。 
---副作用+ 
 +B型慢性肝炎に対するIFN療法は、基本、週3回で24週間の投与期間ですが、B型肝炎の治療ガイドラインは状況に応じて24~48週間のIFN投与を推奨しています。IFN療法で効果があればIFN投与を中止してからも、そのままHBVは増殖せず肝炎は沈静化します。しかしIFNが効かずにHBe抗原が陰性化しない症例、IFNを中止するとHBVが再度増えて肝炎が再燃する症例も多くあります。 
 +-副作用
IFN療法を行うと開始当初にインフルエンザにかかったときのような38度を超える発熱、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛が起こります。但しこれらの副作用は、IFNを継続して投与していくと徐々に落ち着き、数週後には現れなくなる場合が多いです。 IFN療法を行うと開始当初にインフルエンザにかかったときのような38度を超える発熱、全身倦怠感、関節痛、筋肉痛が起こります。但しこれらの副作用は、IFNを継続して投与していくと徐々に落ち着き、数週後には現れなくなる場合が多いです。
 +
また白血球、赤血球、血小板の減少が起こります。これはIFNが血球を作る骨髄の働きを抑えるためです。糖尿病の人、膠原病の人は、症状が悪化することがあります。また、稀に間質性肺炎を起こす場合もあります。その他、眼底出血、脱毛、タンパク尿などが現れることがあります。 また白血球、赤血球、血小板の減少が起こります。これはIFNが血球を作る骨髄の働きを抑えるためです。糖尿病の人、膠原病の人は、症状が悪化することがあります。また、稀に間質性肺炎を起こす場合もあります。その他、眼底出血、脱毛、タンパク尿などが現れることがあります。
--核酸アナログ製剤 + 
-核酸アナログ製剤は、直接薬の力でHBVの増殖を抑えて肝炎を沈静化させます。薬を飲んでいる間はHBVのウイルス量は低下し、肝炎は起こりません。核酸アナログ製剤の長期投与で肝機能が改善し、肝硬変による腹水が消失することもあります。しかしIFNと異なり、薬を中止するとほとんどの症例で肝炎は再燃します。一旦内服を開始してから勝手に核酸アナログ製剤を自己中止すると、時に肝炎の急性増悪を起こし、最悪の場合肝不全で死に至る場合があります。絶対に核酸アナログ製剤を自己判断で中止してはいけません。+****核酸アナログ製剤 [#ie033743] 
 +核酸アナログ製剤は、直接薬の力でHBVの増殖を抑えて肝炎を沈静化させます。薬を飲んでいる間はHBVのウイルス量は低下し、肝炎は起こりません。核酸アナログ製剤の長期投与で肝機能が改善し、肝硬変による腹水が消失することもあります。しかしIFNと異なり、薬を中止するとほとんどの症例で肝炎は再燃します。 
 + 
 +一旦内服を開始してから勝手に核酸アナログ製剤を自己中止すると、時に肝炎の急性増悪を起こし、最悪の場合肝不全で死に至る場合があります。絶対に核酸アナログ製剤を自己判断で中止してはいけません。 
核酸アナログ製剤を長期服用すると、薬剤耐性株(変異株)と呼ばれる核酸アナログ製剤が効かないHBVが現れます。その場合は、もう1種類の核酸アナログ製剤を併用します。但し、最新の核酸アナログ製剤を5年、10年と長期間使用した場合の安全性についてはまだ明らかにはなっておらず、今後も注意深く経過観察する必要があります。 核酸アナログ製剤を長期服用すると、薬剤耐性株(変異株)と呼ばれる核酸アナログ製剤が効かないHBVが現れます。その場合は、もう1種類の核酸アナログ製剤を併用します。但し、最新の核酸アナログ製剤を5年、10年と長期間使用した場合の安全性についてはまだ明らかにはなっておらず、今後も注意深く経過観察する必要があります。
--肝庇護療法+****肝庇護療法 [#n6235dd4]
ウイルス量は減少しませんが、肝炎を抑える目的で肝庇護療法を行うことがあります。治療薬は内服薬のウルソデオキシコール酸と注射薬のグリチルリチン製剤が一般的です。いずれの薬剤も軽度の肝障害に対してはある程度有効ですが、B型肝炎特有の急激な肝障害の出現時は肝庇護剤はあまり有効ではありません。 ウイルス量は減少しませんが、肝炎を抑える目的で肝庇護療法を行うことがあります。治療薬は内服薬のウルソデオキシコール酸と注射薬のグリチルリチン製剤が一般的です。いずれの薬剤も軽度の肝障害に対してはある程度有効ですが、B型肝炎特有の急激な肝障害の出現時は肝庇護剤はあまり有効ではありません。
   
« Prev[4]  Next »[5]