QT延長症候群は、心電図で心臓の興奮からの回復を意味する再分極過程を反映するQT時間が延長し、トルサデポアンという特徴的な多型性心室頻拍が出現し、失神や突然死を起こします。
先天性QT延長症候群は、心臓の電気興奮を作り出すイオンチャネルという細胞の膜にあるイオンを通す孔の異常によっておこる遺伝性の疾患です。
遺伝形式の違いによって常染色体優性遺伝を示すロマノ・ワード症候群と、常染色体劣性遺伝を示すジャーベル・ランゲニールセン症候群に分けらます。
後者は耳の聴こえの異常を伴いますが、極めて稀です。
ロマノ・ワード症候群はこれまでに少なくとも8つの染色体上に13個の原因遺伝子が報告されています。これらの遺伝子変異は、心臓の電気的興奮を作るイオンチャネルの異常が主で、心臓の興奮(活動電位持続時間)が延長し、心電図ではQT時間が延長します。
先天性QT延長症候群に遺伝子異常が確認できる率は50~70%で、遺伝子異常の頻度は、QT延長症候群1型(LQT1)が40%、2型(LQT2)が30~40%、3型(LQT3)が10%と3つの遺伝子型で90%以上を占めます。
後天性(二次性)QT延長症候群は、元々のQT時間は正常または正常よりも長めですが、薬の服用、電解質[3]異常(低カリウム血症、低マグネシウム血症)、徐脈などなんらかの誘因に伴ってQT時間が延長して発症するものです。
後天性(二次性)QT延長症候群ではQT延長の誘因がなくなれば、QT時間は短縮しますが、多くの症例ではもともとのQT時間もやや長い傾向にあります。
先天性QT延長症候群でみられる遺伝子異常も25%程度にみつかるとされています。
心電図のQT時間が延長しトルサデポアンが発生すると失神したり、心停止や突然死に至ったりすることもあります。
先天性QT延長症候群では遺伝子異常の種類により失神、トルサデポアン、突然死などの症状の出現の仕方に特徴的な違いがあります。
LQT1での発作は多くは運動中に起こりますが、特に水泳中に多いことが特徴です。
LQT2での発作の多くは、恐怖や驚きといった感情ストレス、睡眠中の騒音(目覚まし時計など)によって目覚めた時など、急激に交感神経が緊張する状態で起こります。また、LQT2では出産前後に発作が増えることも知られています。
LQT3での発作の多くは、交感神経緊張が低下している睡眠中や安静時に多く、徐脈時に発生しやすいとされています。
また先天性QT延長症候群の遺伝子異常は子孫に代々受け継がれて家族性に発症することもありますが、家族には認めずに本人にのみ遺伝子異常が出現する場合もあります。
生まれつき、または原因不明の先天性QT延長症候群と、何らかの原因があって引き続き発症する後天性(二次性)QT延長症候群があります。
小児循環器科、循環器科
トルサデポアンが発作している時は、QT時間が延長している誘因を取り除くことが重要です。これは、原因と考えられる薬剤の中止、電解質[3]の補正、心拍数を増やす薬剤や一時的ペースメーカーによる徐脈の改善などを行います。
LQT1と診断が付いている場合、また運動により発作が出現する場合には運動制限を行います。
LQT1では水泳中の発作が特徴的であるため、特に若年者では水泳は禁止します。LQT2でも運動制限を行います。
LQT1ではβ遮断薬が最も有効です。β遮断薬で効果が不十分な場合、ナトリウムチャネル遮断薬や、カルシウム拮抗薬を併用することがあります。
LQT2でもベータ遮断薬を使用しますが、LQT1に比べて効果は低いため、他の薬との併用が必要な場合があります。また、カリウム製剤など電解質[3]の補正目的の薬剤を使用することがあります。
LQT3では徐脈の時にQT時間が延長するために、脈拍を増やす目的でペースメーカーの植込みを行うことがあります。
時としてLQT2でも植込みを行うことがあります。
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