概要
遺伝子の異常を原因として、体質的に発熱などの炎症症状が起こる自己炎症性疾患です。
現時点での対象は、NLRC4異常症、アデノシンデアミナーゼ-2(Adenosine deaminase-2:ADA2)欠損症、エカルディ・グティエール症候群(Aicardi-Goutières Syndrome:AGS】の3疾患です。
NLRC4異常症は、発熱、寒冷により誘発される蕁麻疹、関節痛、乳児期に発症する炎症性腸炎などの症状が現れます。また高度な全身炎症と多臓器障害が現れるマクロファージ活性化症候群という致死的な合併症を起こす場合があります。
ADA2欠損症は、大動脈より細い直径1mm以上ある中動脈と呼ばれる動脈が主な炎症部位です。血管の炎症に伴った多彩な臓器障害が現れ、特に脳梗塞をはじめとした臓器梗塞を若年齢で発症します。
エカルディ・グティエール症候群は、重度心身障害の原因となり得る自己炎症性の脳症です。頭蓋内の石灰化病変と慢性的な脳脊髄炎が特徴です。
症状
- NLRC4異常症
長期にわたって継続する周期熱や、寒冷刺激により誘発される蕁麻疹、関節痛、乳児期に発症する腸炎、脾臓の腫大・血球の減少・血液凝固能の障害、などの症状が現れます。
- ADA2欠損症
繰り返す発熱や発疹や蔓状の皮斑、血管の炎症に伴う麻痺や痺れなどの神経症状、静脈閉塞や視神経萎縮、脳神経麻痺などによる眼症状、胃腸炎症状、筋肉痛、関節痛、高血圧、腎障害 等が認められます。
- エカルディ・グティエール症候群では、繰り返す発熱とてんかんや発達退行を中心とした進行性の重症脳症の症状が現れます。
また、神経学的異常や、肝脾腫、肝逸脱酵素の上昇、血小板減少、易刺激性、肝脾腫、肝逸脱酵素上昇、を伴うほか、手指・足趾・耳などに凍瘡様の皮膚病変や全身性エリテマトーデスに類似した自己免疫疾患の合併も認められます。
原因
NLRC4異常症の原因は、NLRC4遺伝子の変異です。ほとんどの患者さんはこの遺伝子に変異を持っています。
ADA2欠損症の原因は、CECR1遺伝子の変異です。これにより、CECR1遺伝子により産生されるADA2分子の機能が低下し血管炎を起こします。
エカルディ・グティエール症候群の原因は、TREX1、RNASEH2A、RNASEH2B、RNASEH2C、SAMHD1、ADAR、IFIH1の7つ遺伝子の変異です。いずれも核酸の代謝や細胞の核酸認識に関与する遺伝子です。
診療科
小児科
治療法
いずれの疾患に対しても現時点で確立された治療法はありません。
- NLRC4異常症
抗IL-1製剤の有効性が報告されています。
- ADA2欠損症
抗TNF療法の有効性を示す報告が増えています。
また、骨髄移植による根治が期待され、実際に有効であった症例も報告されています。
- エカルディ・グティエール症候群
有効な治療法の報告はありません。