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SAS 概要 [1]
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは睡眠中に10秒以上の呼吸が停止、つまり無呼吸が5回以上繰り返される病気[2]です。主に、いびきや昼間の眠気、熟睡感がない、起床時の頭痛などの症状があります。また、SASは生活習慣病と密接に関係しており、放置すると生命の危険に及ぶこともあります。
睡眠中に体内が酸素不足になり様々な悪い影響を引き起こします。重症の場合は虚血性心疾患、脳梗塞などを発病しやすくなるといわれています。
- 大きないびき
空気の通り道である上気道が狭くなると、入ってきた空気の抵抗が強まります。その力で気道の狭い部分の粘膜が振動したり、摩擦が起きたりします。それがいびきの原因です。SASではいびきを伴うことが多く、特に無呼吸から呼吸が再開するときに大きないびきが起こります。
- 日中傾眠・熟睡感がない
正常な方に比べて、深い睡眠がとりにくくなります。脳にも十分な酸素が供給されていないので、寝ているつもりでも実は脳が起きている状態になっています。そのため、熟睡感が得られず、昼間の眠気につながります。
- 起床時の頭痛
睡眠時間が極端に少なかったときなどに、頭が痛んだ経験のある方は多いと思います。これは脳を十分に休ませられなかったことが原因です。無呼吸でもこれと同じ影響が見られます。それが起床時の頭痛の原因です。
- 集中力や記憶力の低下
睡眠は頭と身体を休める、身体にとって大変重要な時間です。頭と身体をバランスよくしっかり休めることができないと、日中の集中力や作業効率の低下につながります。
- 夜間のトイレの回数が増える
通常、寝ているときは副交感神経が優位になっていますが、無呼吸状態を繰り返し脳が起きている状態だと、交感神経が優位になっています。交感神経が興奮していると、体では尿が作られます。そのため、夜間でもトイレに行く回数が増えるわけです。
- インポテンツ
ED(Erectile Dysfunction:勃起不全)もまた、SASと関連のある疾患です。睡眠中の無呼吸により脳が起きている状態(覚醒反応)や、レム睡眠の不足がEDの原因になると言われています。SAS患者さんの1/4がEDを伴っていた、というデータも欧米で報告されています。
睡眠時無呼吸は、上気道(空気の通り道)が閉塞することにより起こります。閉塞の原因は、首周りの脂肪の沈着、扁桃肥大、アデノイド、気道へ舌が落ち込む、舌が大きい(巨舌症)、鼻が曲がっているなどがあげられます。
- 終夜ポリグラフィー(PSG)
睡眠状態(眠りの深さや睡眠の質)と呼吸状態を同時に測る検査です。脳波や心電図、胸部・腹部のうごき、鼻からの気流、動脈血中の酸素の量を連続して計測します。
- 簡易検査
夜間睡眠中の呼吸状態を測る検査です。場合によっては自宅で検査をすることも可能です。
- 経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP:Continuous Positive airway Pressure)
鼻から専用のマスクを介して空気を送り気道を広げる療法です。
CPAPを使うことによって、熟睡ができるようになり、昼間の眠気から解放され、仕事や運転などでも眠気がなく集中できるようになることが多いです。日本では、健康保険で中等症以上の睡眠時無呼吸症候群の方が保険適応です。
- マウスピース療法
主にいびき症の方や軽症の無呼吸症の方に有効な治療がマウスピース療法です。無呼吸症の方に適応されるマウスピースは、一般の歯ぎしり防止用やスポーツ選手が使用されているものと異なり、下顎を前方に数mm突き出してかみ合わすようにするものです。これにより咽頭部が広がり、睡眠中に喉が狭窄/閉塞することを防ぎます。当然いびき症の方にも有効です。
- マウスピース製作
個人の歯形に合わせて製作します。作製には経験が必要で、睡眠の専門医療機関と連携のある熟練した歯科医に受診されることをお勧めします。副作用として顎の痛みや違和感がありますが、数ヶ月の使用で徐々に慣れていくケースが大半です。
総入れ歯や、ひどい顎関節症[16]の方は使用できません。平成16年4月より健康保険が適用になりました。
無呼吸の責任部位が明確な場合に適応されます。
小児の睡眠時無呼吸症候群の大半は扁桃肥大が原因で、そのため扁桃摘出術が有効です。全身麻酔で行う手術です。
成人の場合は、責任部位が明確でないことが多く、また肥満を合併されているケースも多いため、手術適応には慎重な判断が必要です。また肥満合併の重症の方の場合は、手術そのもののリスクが高いことも念頭においておく必要があります。