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甲状腺ホルモン不応症 のソース :: 医療 Wiki

illness:甲状腺ホルモン不応症のソース

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*RTH 概要 [#pf33e3c7]
甲状腺ホルモン不応症(Resistance to Thyroid Hormone:RTH)とは、十分な量の甲状腺ホルモンが体の中にあるにもかかわらず、ホルモンの働きが鈍くなる病気である。
男女による因子保有及び発症率の差はほとんどない。 現在日本では150人近い患者がいると言われている。
どの病態をとっても、甲状腺が大きくなる傾向があり、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症の症状がみられることがある。ひどい場合には難聴になったり、注意力が低下するなどの精神障害をともなうこともあるため、注意が必要である。

**分類 [#r5f94eea]
全身型・下垂体型・末梢型に分類される。
**症状 [#dd2be099]

多くは、甲状腺機能亢進症と同じように脈拍数が増えて、動悸(心臓がドキドキする)が起こります。

無症状である事もあれば、甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症 と同じ症状を呈する事もある。 
甲状腺はやや肥大する事が多い。 このため、最初は「甲状腺腫」として経過観察する事が多い。
重度例の場合、難聴・注意力が低下するなどの精神障害をともなうことがある。
**原因 [#dd03f0b3]
甲状腺ホルモンは、細胞の核の中にある甲状腺ホルモン受容体という特別な蛋白質に結合することによって体内で働きます。
甲状腺ホルモン受容体にはα型とβ型の2種類がありますが、その分布する割合は臓器により異なっています。心臓や脳ではα型が、肝臓や脳下垂体ではβ型が主な甲状腺ホルモン受容体として働いています。この病気は、β型受容体の働きが悪くなっていることが原因です。

**診療科[#o3b9f85d]
甲状腺機能検査のみであれば、一般内科でも実施可能。 検査結果に明らかな異常が見られた場合、甲状腺・代謝・内分泌専門内科での管理を続ける事が望ましい。
**診断[#qd153225]
狭義で言えば、単なるTSH不適切分泌症候群(SITSH)や下垂体腫瘍との鑑別が重要となる。 
-甲状腺機能検査
新生児スクリーニング検査でこの病気がわかる事も珍しくはない。
TSHが正常~高値 稀に低値となる事もある。このため、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)と診断されて同じ治療をされてしまう事も多い。 
下記に示す各抗体価や経過観察の結果を総合して判定する。
甲状腺ホルモン(FT3、FT4、T3、T4)が高値~異常高値。TR-Ab(TSHレセプター抗体)、Tg-Ab(抗サイログロブリン抗体)、TPO-Ab(抗甲状腺ペリオキシターゼ抗体)が陰性である事が特徴である。
稀に、TR-Ab(TSHレセプター抗体)、Tg-Ab(抗サイログロブリン抗体)、TPO-Ab(抗甲状腺ペルオキシターゼ抗体)のどれかが陽性を示す事もある。 
これはバセドウ病や橋本病といった自己免疫の病気と共存してもおかしくない。いわば自己免疫とは全く関係のない病気として認識されているからだと思われる。 TRH(下垂体ホルモン)負荷試験において、反応が「甲状腺ホルモンレベルに対して無反応、鈍い」といった特徴的な反応が見られる。
-甲状腺エコー
バセドウ病・橋本病・甲状腺癌・甲状腺腫瘍の可能性を除外するために行う。 
-家族歴検索
全身型の場合、遺伝子に異常があるパターンが現在解明されている(常染色体性優性遺伝形式を取る)。そのため、可能な限り血縁家族の甲状腺機能検査を行い、異常が発見された家族に関しては、本人の同意の下で遺伝子検査を行う場合がある。 
家族性に関連はあるものの、遺伝子そのものには異常がなく、その他のコファクターに特異性を持つ場合がある。
-MRI検査
下垂体腫瘍との鑑別のため、頭頸部MRI撮影を実施する。 
-末梢代謝検査
起床時呼吸を利用した基礎代謝検査で代用する事が多い。 正しい甲状腺の状態を把握するための一つの指標となる。 対症療法時に多用される。 
-アイソトープ(131I)検査
実際に放射性ヨードを摂取した上で、甲状腺がヨードをどれだけ摂取しているかを詳しく測定する。 この検査をする場合、検査前1週間はヨードの摂取を極力控えなければならない。 
-T3-uptake検査
アイソトープ検査やTRH負荷試験と併用して行われる。
T3製剤(薬剤名:チロナミン錠/甲状腺ホルモンの即効型)を徐々に摂取し、甲状腺機能をわざと亢進させた状況下で行う負荷試験。
負荷前と負荷後でヨード取り込み率が変化しているか、TRH(下垂体ホルモン)負荷試験における反応が変化しているかを調査し、実際の甲状腺の状態を把握する。 
-各種ホルモン検査
多岐にわたるホルモン量を測定する。起床直後にベッドで行う検査が望ましい。(通院検査をする場合は、その分の補正が入ると思われる) 
本病態においては、性結合ホルモンレベルに何らかの異常がある事がわかっている。 内分泌系ホルモンレベルにも影響を及ぼすことから、異常の具合をモニタリングするために行う事がある。

**合併症[#y434c124]
基本的には、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)、橋本病(慢性甲状腺炎)と同じ合併症が発生する。
-脂質異常症
甲状腺機能レベルが低下すると、代謝自体が低下することにより、脂質代謝もまた低下する。
その結果、中性脂肪や総コレステロールの増加につながる事がある。 低コレステロール血症 甲状腺機能レベルが亢進すると、代謝が亢進する。
それに伴い、脂質代謝もまた大幅に亢進してしまう事があり、その結果、血中コレステロールが異常に減少してしまう現象が発生する事が確認されている。
-耐糖能障害(糖尿病)
甲状腺ホルモンハインスリン抵抗性を構築する成長ホルモンの一種である。
このホルモンが血中に異常に存在する事からインスリン抵抗性を構成することによる。 高インスリン血性低血糖や2型糖尿病を起こしやすい。 
-難聴・神経障害・精神障害
甲状腺ホルモン取り込みレベルの低さから、甲状腺機能低下症とほぼ同じ合併症を引き起こす。

**薬[#ocd88473]
基本的には対症療法が主となるが、実際に薬を処方される事はあまり多くない。
-ヨード負荷調整法
どちらの状態かまだ判断がつかない場合 初期診断のため、ヨウ化カリウムを短期間処方し、ホルモン量をモニタリングしながら経過観察を行う場合がある。
-甲状腺機能亢進状態と判断された場合
MMI(メルカゾール錠)・PTU(プロパジール錠、チウラジール錠)を末梢代謝や甲状腺腫の大きさに応じて処方する事がある。
その後の末梢代謝モニタリングが非常に重要となる。 症状に応じてβブロッカーや解熱鎮痛剤などが処方される事もある。 
-甲状腺機能低下状態と判断された場合
末梢代謝及びT3/T4の取り込み率をモニタリングしながら、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS錠、チロナミン錠など)を処方する事がある。 
症状に応じて抗うつ剤などの処方及び栄養指導が行われる事もある。

***副作用 [#d22af963]
甲状腺機能亢進症及び甲状腺機能低下症に対する治療の副作用と同様であると考えられるが、実際に反応している甲状腺ホルモン量と見かけのホルモン量が全く異なる病態であり、代謝を頼りとした治療となるため、単なる甲状腺機能亢進症、甲状腺機能低下症の治療の副作用よりもはるかに重い副作用が出る事があることに注意したい。

**治療法[#mfaf8ab1]
基本的には、対症療法と経過観察が主となります。
甲状腺が腫れて血液中の甲状腺ホルモンが増加しているという理由で、バセドウ病と間違えられ、誤った治療を受けないことが大切です。

本症の大部分は遺伝子異常に基づく疾患であるため、原因に対する治療法はなく対症療法を必要に応じて行う。
全身型の多くは甲状腺機能正常のことが多く、その場合は治療の必要はない。甲状腺機能低下症状を呈する場合は甲状腺ホルモンの補充を行う。
必要量は症例ごとに異なるので少量から投与を開始し、末梢代謝機能を表す指標をモニターしながら至適維持量を決定する。 下垂体型の場合が難しい問題を含んでいる。

下垂体TSH産生腫瘍が除外されれば、甲状腺機能亢進症に対する積極的治療が必要であるが、抗甲状腺剤の投与により甲状腺ホルモンレベルを低下させるとTSH分泌は更に促進され甲状腺腫の増大、TSH産生細胞の過形成から腺腫形成へ進展する可能性がある。
理論的には、TSH分泌を低下させることにより、甲状腺ホルモンレベルを下げるべきである。TSH分泌を抑制する薬剤としてドーパミン作働薬のブロモクリプチン、ソマトスタチン誘導体、Triac(T3誘導体)などが試みられているが、まだ治療法の確立には至っていない。

**手術 出産[#ad6f3952]
無症状の状態であっても、薬で甲状腺ホルモンの分泌量を制御できない事が多いため、麻酔や外部刺激による甲状腺クリーゼ(命に関わる急性甲状腺機能亢進症)が起こる確率が正常な人間より高いと言われている。しかし、定期的な管理を行うことにより出産は可能である。

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