間質性肺炎、(IP:Interstitial Pneumonitis)は肺の間質組織を主座とした炎症を来す疾患の総称で、非常に致命的であると同時に治療も困難な難病です。 放射性肺炎[2]や薬剤性肺炎[2]、ウイルス性肺炎[2]、過敏性肺炎[2]、じん肺、膠原病[3] に伴う肺炎[2]などがあると、そこからなんらかの刺激が原因となって、間質性肺炎が起こるものと考えられています。しかし、原因不明のものも少なくありません。
肺は、直径0.1~0.2 mm ほどの肺胞と呼ばれる小さな袋がブドウの房のように集まって出来ているスポンジのような臓器です。ブドウの茎が、空気を吸い込む気管支に相当します。肺胞の壁はとても薄く、毛細血管が網の目のように取り囲んでいます。吸い込んだ空気中の酸素は、肺胞の壁から血液中に取り込まれます。また、老廃物である二酸化炭素を放出しています。
間質性肺炎は、肺胞の壁や周辺に炎症が起こり、血液に酸素が取り込めず、動脈血液中の酸素が減少した状態(低酸素血症)となり呼吸が苦しくなります。症状が一時的で治る場合もありますが、進行して肺線維症(肺が線維化[6]を起こして硬くなってしまった状態)になってしまう場合もあります。
主な症状として、息切れ(呼吸困難)、空咳(痰のない咳)、発熱の3つが知られています。息切れは、最初は運動時あるいは坂道や階段を上がる時にみられますが、進行すると歩くだけでも息切れを感じるようになります。発熱はみられないことがあります。
アスベストの吸入など原因がわかっている場合もありますが、特発性間質性肺炎といって原因不明のものが多くみられます。
関節リウマチ[10]、多発性筋炎・皮膚筋炎[11]、全身性強皮症[12] などの 膠原病[3]、なんらかの物質の吸入、薬剤などで肺胞の壁の中や周辺に炎症が起こり、細胞やコラーゲンなどが増加し壁が厚くなります。
通常型間質性肺炎(UIP)/病理組織分類
特発性肺線維症[18]は、特発性間質性肺炎の中で最も多くみられます。
特発性肺線維症[18]になりやすい人は、主に50代から60代の男性で、多くは喫煙者です。
慢性、風邪等により急性憎悪する場合がある。ステロイドへの反応は悪い。 経過、予後はきわめて悪い。
完全に回復することはなく、病状を悪化させないことに注意する。
通常は、徐々に肺の線維化[6]、肺の縮小が起きてゆき、呼吸が困難になっていく。
死亡原因は、呼吸不全(約40%)、心筋症(約30%)、肺がん[20](約10%)となっている。
肺の損傷程度、病気[22]の進行速度、肺感染症や右側心不全などの合併症の有無などによって、症状は異なります。
運動時の息切れ、せき、持久力の低下のような主な症状が、知らないうちに現れ始めます。その他によくみられるのは、体重減少や疲労感などの症状です。ほとんどの場合、症状は約6カ月から数年にわたって悪化していきます。
病気[22]が進行するにつれて、血液中の酸素濃度が低下し、皮膚の色が青っぽくなるチアノーゼが生じる場合や、指先が太くなったり、ばち状になったりするばち指がみられる場合があります。
心臓に負担がかかると、右心室が肥大して、やがて右側心不全に陥ることもあります。医師には聴診器を通して、しばしばパチパチというクラックル音(断続性ラ音)が聞こえます。この音は、ベルクロ社のマジックテープをはがすときの音に似ているため、その名前を取って、ベルクロ・ラ音とも呼ばれます。
肺移植が唯一有効な治療法と考えられます。
非特異性間質性肺炎(NSIP)/病理組織分類
NSIPはさらにI群、II群、III群に細分化されています。I群は線維化[6]なし、II群は線維化[6]有り、蜂巣化無し、III群は線維化[6]、蜂巣化ともに有るタイプです。
亜急性~慢性、ステロイドへの反応は良好。 経過、予後は一般的に良いが、稀に不良あり。病状の改善、完全回復あり。
予後はBOOPと比較すると良くない。
器質化肺炎[2](OP)/病理組織分類
肺には、気管支が末梢に20回以上分かれた先に吸い込んだ空気を入れるぶどうの房状の肺胞と呼ばれる小さな袋が多数あります。
この肺胞とその少し手前の細気管支の中に炎症の産物が固まった器質化物といわれるものが充満し、肺胞の壁に炎症を起こします。
膠原病[3]や病原体、放射線照射、薬剤、悪性腫瘍など様々な原因で生じますが、原因がはっきりしないものを特発性器質化肺炎[2]と呼びます。
閉塞性細気管支炎性器質化肺炎[2]とも呼ばれる。
50歳代から60歳代に多く、男女差はありません。
数日から数週間の経過で、せきや息切れがみられます。さらには発熱やだるさなどインフルエンザに似た風邪症状が出現することもあります。検診で無症状のうちに発見されることもあります。
呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患(RB-ILD)/病理組織分類
慢性、ステロイドへの反応は良い。経過、予後は良好。病状の改善、完全回復あり。
病気[22]の症状 咳が出たり、酸素がうまく取り込めなくなり息苦しくなります。一過性の場合もありますが、炎症が治った後も傷が残り肺が固くなる場合があります。
病気[22]が進行すると、肺胞壁が厚くなり、肺胞の形も不規則になって肺全体が固くなり膨らみにくくなるため、呼吸を維持することが困難になる場合もあります。 また、肺線維症に進行すると咳などによって肺が破れて呼吸困難や呼吸不全に陥ることがあります。
剥離性間質性肺炎(DIP)/病理組織分類
慢性、ステロイドへの反応は良好。経過、予後は良好。病状の改善、完全回復あり。
リンパ球性間質性肺炎(LIP)/病理組織分類
肺胞の間質および気腔にリンパ球や形質細胞が浸潤する良性リンパ増殖性疾患である。
進行性の呼吸困難、空咳、断続性ラ音である。
悪性リンパ腫[40]やシェーグレン症候群[41]などに伴ったものと考えられ、それらに対する治療が行われます。
びまん性肺胞傷害(DAD)/病理組織分類
急性、ステロイドへの反応は悪い。経過、予後は極めて悪い。 ただし、まれに完全回復する場合がある。始め高熱があり、風邪の症状が出て急速に呼吸困難が進む場合が多い。
回復する場合は自然回復。
肺炎[2]は、普通は細菌による感染であり、抗生物質などの治療で軽快します。しかし、抗生物質の効きにくい肺炎[2]や胸のレントゲン検査で左右に影があるような場合は間質性肺炎を疑う必要があります。
患者の呼吸状況等から間質性肺炎の疑いがある場合、通常、病名を確定するため血液検査、胸部レントゲン、呼吸機能テスト(PFT、Pulmonary Function Tests)、気管支鏡検査、開胸肺生検または胸腔鏡下肺生検(VATS:Video-Assisted Thorascopic lung biopsies)が行われます。
また、その他の試験として運動検査、心電図等も実施される場合があります。
間質性肺炎では胸部背面下部においてベルクロ・ラ音(捻髪音、Fine crackle)が聴取できます。
間質性肺炎の活動性を反映する血液検査の指標として、血清マーカー「KL-6[46]」が優れています。一般的に500U/mlが活動期、非活動期の判断基準と言われています。
KL-6[46](シアル化糖鎖抗原KL-6)は副腎皮質ホルモン[47]の大量療法(ステロイドパルス療法)前後の治療効果の判定や、安定慢性期の患者さんの定期検査に用いられます。
血液検査は、リウマチ因子陽性(RAテスト[48])や 抗核抗体[49] など、間質性肺炎の原因となるその他の病気[22]が存在の確認にも有効です。
通常、胸部レントゲンが撮影されます。X線は正常部分と比較して炎症あるは線維化[6]した部位は透りにくいため、その部分は白く写ります。
間質性肺炎の一般的な異常は、小さな節を伴う網状の線で、これらは一般的に肺の下部において顕著に見られます。また、肺の容量も通常減少しています。しかし、下記の理由から胸部レントゲンだけで間質性肺炎を確定するのは困難です。10%近い間質性肺炎患者の胸部レントゲンは正常の胸部レントゲンと同様である。
間質性肺炎の症状が起こっている肺下部をより詳細にみるため通常HRCTによる撮影が行われます。
HRCTは、その名前のとおり通常のCTと比べ写真自体も鮮明で、その分解能は約0.5mmです。CTにおいて、他の肺疾患と区別して間質性肺炎の診断を下すためにはこの程度の分解能が必要となります。
間質性肺炎におけるCTまたはHRCTの所見は、胸部レントゲンと同じで網状の線です。これらの網状の線は、通常肺下部の外側に多く見られます。
これらの変化は、正常な肺の部位の中に入り混じるような形で異常な部位が発生している形で見られます。これらの異常部位は間質に炎症がおきていることを示します。また、蜂巣化が起こっているところは病気[22]が進行しているところです。
肺機能試験は、肺がどの程度機能ているかを測定する試験です。肺活量(VCまたはスローVC)は、最大吸気努力後にゆっくりと呼出したときの最大呼気量です。簡単に検査でき、最も価値ある肺機能検査値の1つです。
なお、18歳以上の成人の推測正常値は次の公式によって得られます(肺活量は身長、性別、年齢、姿勢などによって違います)。
男性=27.63-(0.112×年齢)×身長 女性=21.78-(0.101×年齢)×身長
肺一酸化炭素拡散能(LCO:Diffusing Capacity of Lung for Carbon Monoxide)は、1回の呼吸で判定します。
患者は低濃度既知量の一酸化炭素(CO)を吸気し、10秒間息を止めた後にはきだします。これにより呼吸の間に吸収されたCO量は、肺胞がすの標本(終末呼気がす)に含まれるCOを分析することにより計算され、mL/分/mmHg単位で表されます。
間質に炎症および線維化[6]がある場合は、一酸化炭素の血液中への拡散が妨げられます。
気管支鏡とよばれる柔軟な光ファイバーを患者の肺の中に入れることにより行われます。
患者は意識がある状態で本検査を受けられます。
まず、患者は咳と吐き気がなくなるまで口と喉に局部麻酔が掛けられた後、検査用の光ファイバーが口から肺の中に入れられます。
それから生検鉗子(a biopsy forceps)と呼ばれる小さな装置が光ファイバーに沿って肺の中に挿入され、バイオプシーが採取されます。
これらのバイオプシーは処理され顕微鏡で検査されます。
気管支鏡検査で得たバイオプシーによる確定診断が困難な場合に入院して全身麻酔により行われます。開胸肺生検の場合は、2つの肋骨の間を10cm程度切開し2~3cm幅でバイオプシーを採取します。
また、胸腔鏡下肺生検の場合は、胸腔鏡を使用します。この方法では胸壁のごく小さな切開を通して内視鏡を胸の中に差し込み、それによって肺を肉眼で見ながら、別に2個所ていど小さく切開したところからバイオプシーを採取します。
特発性間質性肺炎においては、ステロイド剤の効果が見込めるもにについては、ステロイド剤により病状の進行を止める、または改善することが治療の目的です。現在治療効果が認められている薬剤は、ステロイド剤と免疫抑制剤[34]の2種類です。
腎臓の上部にある副腎という臓器の外側の部分、副腎皮質で作られるホルモンです。そのため、副腎皮質ホルモン[47]とも呼ばれています。
普通の状態でも常に体内で作られていて、体に対するいろいろなストレスに対処するなど生きていく上でとても重要な働きがあります。 このホルモンのうち、糖質コルチコイド[67]という成分を化学合成したものをステロイド剤として治療に用います。
成人では、間脳、下垂体[68]、副腎系の抑制(副腎皮質ホルモン[47]が出なくなる)が生じる最小限はプレドニゾロン10mg/日と言われており、20~30mg/日のプレドニゾロンを 1週間以上、またそれ以下も 1か月以上投与を続けると、完全に投与を中止してからその機能の回復には、 6~9か月の期間が必要です。
ステロイドパルス療法は、点滴によりステロイド剤を通常3日間程度大量投与する治療方法で、間質性肺炎の症状が急に悪化した場合や経口投与で改善が見られない時に行われます。
パルス療法で、よく使用されるのは ソル・メドロール静注用[70](一般名:メチルプレドニン)という薬剤で、 たとえば1日 1回1000mgを 3日間投与した後に プレドニゾロン錠[57] などの経口剤に切り替え、その量を漸減させていきます。
間質性肺炎の治療に使われるのは、主に イムラン錠[60](一般名:アザチオプリン)と エンドキサン錠[61](一般名:シクロフォスファミド)、サンディミュンカプセル[62]、ネオーラルカプセル[63](一般名:シクロスポリン)の3種類です。これらのうちのどれかをステロイド剤と併用します。
投与量は最初少なく、だんだん増量してゆきます。ただ、いくら量が少ないとはいえ白血球が減ったり、生殖細胞に影響がでたりするため、男女を問わずとくに若い人には使いにくい面があるというのが難点です。
咳をやわらげるために、リン酸コデイン散[77](一般名:コデインリン酸塩水和物)などの咳止め薬を使います。
息切れが強いときには酸素吸入が症状を楽にします。病気[22]が進めば在宅酸素療法により、自宅で、あるいは出かけるときにも酸素吸入ができます。
在宅酸素療法とは、酸素を生成する器械を家庭に設置し、経鼻カニューレという管で鼻から酸素を1~4リットル/min(量は症状に依存)を持続的に投与する方法です。
また、外出時は経鼻カニューレを携行型の酸素タンクに付け替えて外出します。 なお、在宅酸素療法の利用には保険が適用されます。
また、利用方法の詳細については病院から説明を受けることが出来ます。
(This host) = https://www.joy-mix.com
投稿一覧
投稿ツリー
Re: 間質性肺炎 (大貝泰三, 2011/12/7 22:13)
Re: 間質性肺炎 (ベル, 2012/2/17 10:18)
Re: 間質性肺炎 (しゅう09152000, 2012/2/28 13:39)
間質性肺炎 (まったくわからない人, 2012/3/2 0:14)
Re: 間質性肺炎 (だいちゃん, 2012/3/11 0:22)
Re: 間質性肺炎 (k美, 2012/4/6 10:28)
Re: 間質性肺炎 (罹患者, 2012/4/12 12:20)
Re: 間質性肺炎 (ゲスト, 2021/2/9 10:57)
間質性肺炎と診断されて
1年前から体重が減ってきている。もちろん、食欲もない。
このことについての診断をお願いします。
母が間質性肺炎の疑いがあり、毎日激しい乾いた咳に悩まされています。最近では近所への買い物ですら呼吸が苦しいようで、タクシーを使う状態です。特にこの冬の寒さで尚更症状が悪化した様子です。去年から4〜5カ所病院へ行って調べましたが、どこの病院も咳止めの薬や風邪薬が処方される程度で、もちろん回復はしていません。J病院で診察した際には胸を開いて検体を採取しましょうとあっさり言われ、心の準備が無かった母は断りました。
どこの病院へ行ったら良いのかどこかお勧めの病院はあるでしょうか?住まいは東京23区内です。
現在杯酸素2台6×6でやっと90位だ、家の中でもトイレに行くのがやっとだ、後どれくらい生きられるかな?
家族が間質性肺炎になってしまって入院しています!
通常型間質性肺炎だったら本当に助からないのでしょうか?
今週初めに父が間質性肺炎が原因で他界しました。肺癌(扁平上皮癌)、肺気種、間質性肺炎を併発し、抗癌剤治療で入院したものの間質性肺炎を悪化させ、ステロイドパルス療法の2回目(2週間目)始めたところで息を引取りました。入院してから1ヶ月弱でした。胸部レントゲンを見て、肺が白くなる一方だと致命的です。個人差もあると思いますが・・・
父が、間質性肺炎で、入院しています。たぶん末期の状態です。
医師から、ステロイド療法をすると言われました。副作用はないのでしようか?
副作用?ありますよ。
しかしながらそれを使用しませんとあっという間です。
入院しちゃった以上医師が薬剤使用を放棄する事はありません。
前立腺がん(前立腺肥大の手術細胞検査で見つかる】放射線治療をがんセンターで経過観察中です。IPが2.3です。間接性肺炎でしようか
お気軽に投稿してください。一言でもどうぞ。病気の治療、薬の副作用のことなど。