表皮水疱症は、表皮~基底膜~真皮の接着を担っている接着構造分子が生まれつき少ないか消失しているため、日常生活で皮膚に加わる力に耐えることができずに表皮が真皮から剥がれて水疱や皮膚潰瘍を生じてしまう病気です。
表皮水疱症は単純型、接合部型、栄養障害型のどの病型でも、生まれた直後、あるいは生まれて間もなく、皮膚に水疱や潰瘍が生じます。
症状の程度は遺伝子塩基配列異常の種類よってある程度決定されますが、生活環境、生活習慣、栄養状態、治療状況によっても左右されます。大きな潰瘍が多発すると、皮膚の感染や炎症反応を繰り返し、皮膚から浸出液と共にタンパク質が喪失し、低栄養、鉄欠乏性貧血を合併します。
ヒトのDNA上の遺伝子の中に、ケラチン遺伝子、プレクチン遺伝子、BP230遺伝子、α6インテグリン遺伝子、β4インテグリン遺伝子、17型コラーゲン遺伝子、ラミニンα3遺伝子、ラミニンβ3遺伝子、ラミニンγ2遺伝子、7型コラーゲン遺伝子があります。
そのどれか一つの遺伝子で塩基配列に異常が生じることで、表皮の細胞骨格機能、表皮と基底膜の接着機能、基底膜と真皮の接着機能が破綻することが、表皮水疱症の原因です。
優性遺伝病と劣性遺伝病のどちらになるかは遺伝子の種類によって決まります。
表皮水疱症の場合、ケラチン5遺伝子、ケラチン14遺伝子の異常による単純型表皮水疱症は優性遺伝病、プレクチン遺伝子異常による単純型表皮水疱症は劣性遺伝病、接合部型表皮水疱症は全て劣性遺伝病となります。
7型コラーゲンの遺伝子異常による栄養障害型表皮水疱症は、その塩基配列異常の種類によって劣性遺伝病になる場合と優性遺伝病になる場合があります。
表皮水疱症に有効な治療はありません。
水疱は注射針や清潔なハサミを用いて水疱の一部に穴をあけて水疱内容液を排出した、ガーゼ保護します。
潰瘍面は、軟膏外用と創傷被覆材で保湿を維持し、感染が生じた場合は抗菌作用のある外用剤外用と抗生剤内服で治療します。