概要
血友病は、生まれつき血液凝固因子(血液を固めるタンパク質)が少ないため、血液が固まりにくい病気です。
基本的に男性が発症する病気です。
血友病の種類
血友病A
先天的に血液凝固因子VIIIが欠乏、または機能低下している病気です。
血友病B
先天的に血液凝固因子IXが欠乏、または機能低下している病気です。
後天性血友病
血液凝固因子は正常ですが、後天的に凝固因子への自己抗体が生産され、血液凝固が機能しなくなる病気です。原因は不明です。
症状
血友病Aと血友病Bでは、大きな症状の違いはありません。どちらも、出血した時に血が止まりにくい・固まりにくい病気です。
問題となるのは、血液が凝固しにくいため、二次止血が困難となることです。そのため、小さな傷や打撲でも大出血に繋がり、生命の危険が生じます。また、関節内や筋肉内など、体の深部の出血も多いことが特徴です。
後天性血友病でも出血が主な症状となります。強い衝撃を受けた覚えがないにも関わらず広範囲にあざがみられたり、血尿が出たり、手足の広範囲に赤黒い腫れがみられたりします。(筋肉や関節の出血によるものです。)
出血しやすい部位
- 皮下(皮膚の下)
- 関節内(肩、肘、太腿、足首、腰など)
- 鼻の中
- 歯肉(歯茎)の出血
- 筋肉内(ふくらはぎの筋肉、腸腰筋*1
- 歯科での抜歯や、外科手術による止血困難
- 頭部(頭蓋内出血)
原因
血友病の原因は、遺伝によるものが70%、突然変異で発症するものが30%です。
遺伝と発症の仕組みについて
伴性劣性遺伝(X連鎖劣性遺伝)とよばれる遺伝形式で発症します。
人間の性染色体は、男性(XY)女性(XX)に分かれます。X連鎖劣性遺伝は、X染色体の異常により発症します。
女性は、X染色体のひとつに血友病遺伝子を受け継いでも、通常は片方のX染色体は正常です。片方のX染色体が正常の場合、発症はしません。このような女性を保因者(キャリア)とよびます。
男性は、X染色体が1本しかないため、血友病遺伝子を受け継ぐと必ず発症します。
母親が血友病の保因者の場合、その母親から生まれた男児は50%の確率で血友病を発症します。また、女児は50%の確率で保因者になります。
基本的に男性が発症する病気です。稀に、血友病の父親と、血友病保因者の母親から生まれた女児が、血友病を発症することがあります。
検査
- 血小板数の測定
- プロトロンビン時間(PT)の測定
- 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)の測定
APTTだけが正常よりも延長している場合に血友病が疑われ、血液凝固因子がどの程度働いているか(因子活性)をみるための検査が行われます。- 第VIII因子活性の検査
- フォン・ヴィレブランド因子の検査
他の病気と区別して正確な診断をするために行う。
- フォン・ヴィレブランド因子の検査
- 第IX因子活性の検査
- 第VIII因子活性の検査
薬
凝固因子製剤が用いられています。
ヒト血漿由来製剤
献血された血漿(血液の成分)を原料にした製剤です。加熱処理や、紫外線照射など、各種の加熱処理を組み合わせており、高い安全性が保証されています。
多くは国内の赤十字血液センターで献血された血漿を原料としていますが、輸入製材(ファイバ)も使用されています。
代表的な製品に、クロスエイトMC、クリスマシンM、バイクロットなどがあります。
- クロスエイトMC静注用(一般名:乾燥濃縮人血液凝固第VIII因子)
- クリスマシンM静注用(一般名:乾燥濃縮人血液凝固第IX因子)
- バイクロット配合静注用(一般名:乾燥濃縮人血液凝固第X因子加活性化第VII因子)
遺伝子組み換え製剤
人間の血液を一切使わずにつくられた製剤です。遺伝子組み換え技術により、他生物の細胞から血液凝固因子を作り出します。国内では1993年から一般化されています。
代表的な製品にノボエイト、イロクテイト、オルプロリクス、ベネフィクスなどがあります。
- ノボエイト静注用(一般名:ツロクトコグ アルファ)
- イロクテイト静注用(一般名:エフラロクトコグ アルファ)
- オルプロリクス静注用(一般名:エフトレノナコグ アルファ)
- ベネフィクス静注用(一般名:ノナコグ アルファ)
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