概要
アレキサンダー病は、グリア線維性酸性蛋白(GFAP)、α B-クリスタリン、熱ショック蛋白などから構成されるローゼンタル線維をアストロサイトに認めることを特徴とする稀な遺伝性神経変性疾患です。
アレキサンダー病は、1949年にAlexander WSにより報告された疾患です。
2001年、Brennerらによって、アレキサンダー病患者の90%以上にGFAP遺伝子に異常が存在することが報告されました。
分類
- 大脳優位型
主に乳児期に発症し、けいれん、頭囲拡大、精神運動発達の遅れを主な症状とします。 - 延髄・脊髄優位型
学童期あるいは成人期以降に発症し、嚥下機能障害、手足の運動機能障害、立ちくらみや排尿困難などの自律神経機能障害などを主な症状とします。 - 中間型
両型の特徴をみとめます。
症状
- 大脳優位型
主に乳幼児期に発症し、痙攣、頭囲拡大、精神運動発達の遅れの3つの症状を特徴とします。
新生児期発症の患者さんは、難治性の痙攣に水頭症を伴い、ほとんどが数か月以内に死亡します。3つの特徴的症状に加えて話しにくさ、飲み込みにくさ、手足の力の動かしにくさ、ふらつき、歩きにくさなどの嚥下機能や運動機能の障害、尿が出にくい、立ちくらみ、睡眠時無呼吸などの自律神経障害が出現、徐々に進行し、中間型の症状を現します。
なお、出現する症状、経過には個人差がみられます。 - 延髄・脊髄優位型
学童期あるいは成人期以降に発症し、嚥下機能、運動機能、自律神経の障害現れます。
痙攣、頭位拡大、精神運動発達の遅れは通常みられません。「大脳優位型」に比べると進行は緩やかですが、時に急激な進行がみられる場合があります。なお、症状の程度には個人差がみられます。 - 中間型
「大脳優位型」と「延髄・脊髄優位型」の両者の特徴をもつ型で、多くは学童期以降に診断されます。嚥下機能、運動機能、自律神経の障害の進行が主な症状ですが、「延髄・脊髄優位型」よりも進行は早い傾向にあります。痙攣、頭囲拡大を伴いませんが、乳幼児期に数回の痙攣発作を起こすことが多いです。多くは精神遅滞あるいは学童期の成績低下を伴います。また、学童期には、嘔吐を繰り返し、体重減少を認めることがあります。出現する症状、経過には大きな個人差がみられます。
原因
GFAP遺伝子という遺伝子の異常が原因と考えられています。GFAP遺伝子に変異がみられると、異常なGFAPが作られます。これがアストロサイトの機能を障害することにより、アレキサンダー病が発症すると考えられています。
- GFAP
GFAPは、脳のアストロサイトという細胞を機械的に安定させるための骨組みの1つです。 - アストロサイト
アストロサイトは、脳の神経細胞や血管系とさまざまな物質を介して積極的に情報伝達を行うことにより、脳機能を制御しています。
アレキサンダー病の遺伝様式は常染色体優性遺伝*1です。
一方、「大脳優位型」のほとんどすべての患者さんと「延髄・脊髄優位型」の約半数の患者さんのご両親はGFAP遺伝子異常を保有していませんので、患者さんは突然変異により変異遺伝子を獲得したと考えられます。
診断
症状の特徴から本病を疑った場合に、遺伝子検査にて確定診断を行います。
治療法
確立した治療法はありません。
薬物療法
痙攣発作を生じる場合には抗てんかん薬による治療を行います。
手足がつっぱる場合には抗痙縮薬を用いることがありますが、筋力の低下を伴う場合には脱力が増悪する場合があります。
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初版日時: 2019-03-17 (日) 21:39:11
最終更新: 2019-03-17 (日) 23:07:15 (JST) (1859d) by kondo
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