アイザックス症候群 (Isaacs syndrome)は、1961年にヨハネスブルクのHyam Isaacsが報告した原因不明の筋肉の病気[2]です。
持続性の手足や体幹の筋痙攣(筋肉のつり)、ミオキミア(波打つ様な筋の動き)を特徴とする病気[2]です。またニューロミオトニア*1を伴います。そのほかに、著明な発汗、手足の焼け付く様な痛みや異常感覚を伴うこともあります。
筋肉の動きによる線維筋痛症[3]によく似た激しい痛みがあります。痛みが主症状である線維筋痛症[3]や慢性疼痛と間違いやすいため鑑別診断が重要です。
- 全身の痛み
- 筋のこわばり、硬さ、筋痙攣、ぴくつき、こむら返り
- 発汗過多、動悸、頻脈、頻尿、下痢、便秘、光がまぶしい等の自律神経が障害された時に現れる症状
- Grip myotonia(グリップミオトニア)と呼ばれる手指で一度グーをした後になかなかパーにしずらい状態
- 不眠症
- 夜寝ている時に痛みで目が覚める
- 手指のけいれん
- 握力の低下
原因は不明です。
電位依存性カリウムチャネル(VGKC)の自己抗体により、末梢神経終末でのVGKCの機能低下が生じ、末梢神経の過剰興奮による筋けいれんなどの運動障害が起こると考えられています。
- 抗VGKC抗体検査
この病気[2]はVGKC(電位依存性カリウムチャンネル)の機能異常によって過剰に神経が興奮するために 発症するのではないかと考えられているため、抗VGKC抗体の測定を行って、VGKCの機能異常の有無を調べることは重要な診断のポイントになります。
アイザックス症候群においてこの抗VGKC抗体の陽性率は約30%程度と言われております。
- 針筋電図検査
Doublet、multipletといった末梢神経の過剰興奮についての検査を行います。
- 筋エコー検査
ミオキミアと呼ばれる持続的で自発的な筋肉の収縮の症状の有無について検査をします。
- その他
甲状腺の機能や抗体のチェック、胸腹部CTスキャン等も行います。
根本的な治療法はなく、筋痙攣の対処療法が主になります。日常生活にさほどの影響がない軽症の場合は、末梢神経の過剰興奮を抑制する抗てんかん[15]薬の内服を行います。
抗てんかん[15]薬が無効な場合や、激しい有痛性筋痙攣などにより日常性生活に重大な支障がある場合は、副腎皮質刺激ホルモンの注射や血液浄化療法による治療などを行います。