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2: 2013-12-05 (木) 20:12:57 kondo ソース 現: 2019-02-19 (火) 14:02:00 kondo ソース
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**舌の働き [#z72efcfc] **舌の働き [#z72efcfc]
-いわゆる舌の奥1/3は解剖学的には舌根といわれ、中咽頭に分類されます。したがって、舌癌といわれる時の舌は、舌の前2/3(口を開けて普通に鏡で見える範囲)となります。 +いわゆる舌の奥1/3は解剖学的には舌根といわれ、中咽頭に分類されます。したがって、舌癌といわれる時の舌は、舌の前2/3(口を開けて普通に鏡で見える範囲)となります。 
-舌の主な働きは嚥下(食物をのどに送り込む)機能 構音(言葉を作る)機能 味覚機能 嚥下機能 舌の働きで口腔内で咀嚼(歯で噛み砕く)された食物をのどに送り込むことができます。+舌の主な働きは嚥下(食物をのどに送り込む)機能 構音(言葉を作る)機能 味覚機能 嚥下機能 舌の働きで口腔内で&ruby(そしゃく){咀嚼};(歯で噛み砕く)された食物をのどに送り込むことができます。 
舌の働きが悪くなると、上手く飲み込めずに食物が喉頭から気管に誤嚥しやすくなります。また、上下の歯の間にはさまれた食物を内側から支える働きも行っているため、舌の動きが悪くなると咀嚼も上手くできなくなります。 舌の働きが悪くなると、上手く飲み込めずに食物が喉頭から気管に誤嚥しやすくなります。また、上下の歯の間にはさまれた食物を内側から支える働きも行っているため、舌の動きが悪くなると咀嚼も上手くできなくなります。
 +
-構音機能 -構音機能
-喉頭(声帯)で形成された振動した空気(喉頭原音)が、咽頭、口腔で共鳴し音になります。人間は共鳴腔の形を種々に変化させて口唇から発することで言葉を作っています。この共鳴腔の形を変化させる主役が舌です。したがって、舌の働きが悪くなると、言葉の明瞭度が悪くなり、他の人に聞き返されることが増えてきます。+喉頭(声帯)で形成された振動した空気(喉頭原音)が、咽頭、口腔で共鳴し音になります。人間は共鳴腔の形を種々に変化させて口唇から発することで言葉を作っています。この共鳴腔の形を変化させる主役が舌です。したがって、舌の働きが悪くなると、言葉の明瞭度が悪くなり、他の人に聞き返されることが増えてきます。 
-味覚機能 -味覚機能
-舌の表面に味覚を感じるセンサー(味蕾)がたくさんあり、主に舌で味を感じています。しかし、味覚を感じる細胞は舌だけでなく、上 +舌の表面に味覚を感じるセンサー(味蕾)がたくさんあり、主に舌で味を感じています。しかし、味覚を感じる細胞は舌だけでなく、上 
-あごや頬の内側にも存在することから、舌がなくなっても味を感じることはできます。 これらの働きは、日常生活ではあまり意識されることがないため、機能障害が生じた場合の不自由さは非常に大きいものとなります 原因 喫煙、飲酒、歯列不正、う歯、不適合義歯、口腔の不衛生などが考えられます。+あごや頬の内側にも存在することから、舌がなくなっても味を感じることはできます。 これらの働きは、日常生活ではあまり意識されることがないため、機能障害が生じた場合の不自由さは非常に大きいものとなります。 
**症状 [#pdb738bb] **症状 [#pdb738bb]
口腔内の痛み、食べ物がしみる、舌の動きが悪くなり、ろれつが回らない、飲み込みづらいなどの症状が現れます。 口腔内の痛み、食べ物がしみる、舌の動きが悪くなり、ろれつが回らない、飲み込みづらいなどの症状が現れます。
 +
 +**原因 [#x4ae4d43]
 +喫煙、飲酒、歯列不正、う歯、不適合義歯、口腔の不衛生などが考えられます。
**診断 [#y67cf66c] **診断 [#y67cf66c]
舌は視診・触診が容易にできますが、舌には白斑症や口内炎、難治性潰瘍など種々の類似疾患も多いため、舌癌の診断には小さな肉片を採取し、 舌は視診・触診が容易にできますが、舌には白斑症や口内炎、難治性潰瘍など種々の類似疾患も多いため、舌癌の診断には小さな肉片を採取し、
-病理組織検査により診断を確定します。舌癌と診断がつけば、病変の根の深さや広がりの程度を正確に診断するために、CTやMRIなどの画像検査を行います。+病理組織検査により診断を確定します。 
 + 
 +舌癌と診断がつけば、病変の根の深さや広がりの程度を正確に診断するために、CTやMRIなどの画像検査を行います。 
**病期 ステージ [#sdcf15b5] **病期 ステージ [#sdcf15b5]
舌がんの病期は国際的なTNM分類を用いI~IV期にわけられますが、簡略に示すと次のようになります。 舌がんの病期は国際的なTNM分類を用いI~IV期にわけられますが、簡略に示すと次のようになります。
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-病期IV期:T4N0~3,T1~3N2~3,M1(遠隔転移が認められる) -病期IV期:T4N0~3,T1~3N2~3,M1(遠隔転移が認められる)
-**治療法と副作用、後遺症 [#z4a1cd25]+**治療法 [#md6a9b84]
舌がんの治療は、主に手術療法と放射線治療であり、切除の際にレーザーを用いる施設もあります。抗癌剤による化学療法もこれらの治療との組み合わせで行われることがあります。 舌がんの治療は、主に手術療法と放射線治療であり、切除の際にレーザーを用いる施設もあります。抗癌剤による化学療法もこれらの治療との組み合わせで行われることがあります。
-**外科手術 [#w7894fd8]+***手術療法 [#v9240f0a]
手術で切除しなければならない範囲は、癌の大きさ、深さと位置によって決められてしまい、それによって術後の後遺症は大きく異なります。 手術で切除しなければならない範囲は、癌の大きさ、深さと位置によって決められてしまい、それによって術後の後遺症は大きく異なります。
-舌部分切除術 癌が小さく浅い場合、舌の一部分を切除して癌の摘出を行います。切除範囲が小さければ、局所麻酔(痛み止めの注射)で、日帰り手術や数日の入院で可能です。 +舌部分切除術 癌が小さく浅い場合、舌の一部分を切除して癌の摘出を行います。切除範囲が小さければ、局所麻酔で、日帰り手術や数日の入院で可能です。 
-舌の奥の方や咽頭反射(舌を押さえるとゲーとなる反射)が強い場合は、全身麻酔下に手術を行います。 術後数日は、舌が腫れたり痛みを伴い、+舌の奥の方や咽頭反射(舌を押さえるとゲーとなる反射)が強い場合は、全身麻酔下に手術を行います。 術後数日は、舌が腫れたり痛みを伴い、
食事の食べにくいことがありますが、その後はそのような症状は次第に消失してゆきます。舌の変形が多少残りますが、嚥下や構音などの機能障害はほとんど残りません。 食事の食べにくいことがありますが、その後はそのような症状は次第に消失してゆきます。舌の変形が多少残りますが、嚥下や構音などの機能障害はほとんど残りません。
 +
味覚障害もありません。 舌半切除術 癌が舌のまん中近くまで根を広げている場合、癌のある側の舌を半分切除して癌の摘出を行います。 味覚障害もありません。 舌半切除術 癌が舌のまん中近くまで根を広げている場合、癌のある側の舌を半分切除して癌の摘出を行います。
-多くの場合、切除後の欠損部(舌のなくなった部分)を種々の方法で再建することにより、術後の機能障害を最小限に抑えることが可能です。 +多くの場合、切除後の欠損部を種々の方法で再建することにより、術後の機能障害を最小限に抑えることが可能です。 
-手術後は縫合部が落ち着くまで、1~2週間は口から食事を取ることができないため、経鼻経管栄養(流動食)や点滴による栄養管理が必要になります。+手術後は縫合部が落ち着くまで、1~2週間は口から食事を取ることができないため、経鼻経管栄養(流動食)や点滴による栄養管理が必要になります。
舌の切除範囲が半分までであれば、嚥下や構音などの機能障害は日常生活に支障をきたさない程度です。味覚障害もありません。 舌の切除範囲が半分までであれば、嚥下や構音などの機能障害は日常生活に支障をきたさない程度です。味覚障害もありません。
-***舌亜全摘出術 [#b1b1e7a2]+ 
 +****舌亜全摘出術 [#b1b1e7a2]
癌が舌のまん中まで進展してくると、癌のある側の舌を半分以上切除して癌の摘出を行わざるを得なくなります。 癌が舌のまん中まで進展してくると、癌のある側の舌を半分以上切除して癌の摘出を行わざるを得なくなります。
-切除後の欠損部を種々の方法で再建しますが、残った舌の可動性(動きのよさ)により術後の機能障害は大きく異なります。 +切除後の欠損部を種々の方法で再建しますが、残った舌の可動性により術後の機能障害は大きく異なります。 
-手術後は縫合部が落ち着くまで、2~4週間は口から食事を取ることができないため、経鼻経管栄養(流動食)や点滴による栄養管理が必要になります。+手術後は縫合部が落ち着くまで、2~4週間は口から食事を取ることができないため、経鼻経管栄養(流動食)や点滴による栄養管理が必要になります。
その後、嚥下練習を行いますが、口からの食事だけで十分な栄養が取れるようになるには1~2ヶ月かかる場合も少なくありません。 味覚障害はないものの、嚥下や構音機能の障害は避けられません。残っている舌がごくわずかしかない場合、上下の歯の間にはさまれた食物を内側からうまく支えることができなくなるため、 その後、嚥下練習を行いますが、口からの食事だけで十分な栄養が取れるようになるには1~2ヶ月かかる場合も少なくありません。 味覚障害はないものの、嚥下や構音機能の障害は避けられません。残っている舌がごくわずかしかない場合、上下の歯の間にはさまれた食物を内側からうまく支えることができなくなるため、
歯があっても十分な咀嚼ができず、軟らかい物しか食べられないこともあります。また、上手く飲み込めずに食物が喉頭から気管に誤嚥しやすい場合もあります。 歯があっても十分な咀嚼ができず、軟らかい物しか食べられないこともあります。また、上手く飲み込めずに食物が喉頭から気管に誤嚥しやすい場合もあります。
-***舌全摘出術 [#l08ad2af]+ 
 +****舌全摘出術 [#l08ad2af]
癌が舌のまん中を越えて反対側まで進展してくると、安全に残せる舌の部分がなくなってしまい舌を全部摘出せざるを得なくなることがあります。 癌が舌のまん中を越えて反対側まで進展してくると、安全に残せる舌の部分がなくなってしまい舌を全部摘出せざるを得なくなることがあります。
-切除後の欠損部を種々の方法で再建しますが、大きな機能障害が残ります。 手術後は縫合部が落ち着くまで、経鼻経管栄養(流動食)や点滴による栄養管理が必要になります。+切除後の欠損部を種々の方法で再建しますが、大きな機能障害が残ります。 手術後は縫合部が落ち着くまで、経鼻経管栄養(流動食)や点滴による栄養管理が必要になります。
その後、嚥下練習を行いますが、口からの食事だけで十分な栄養が取れるようになるには1~2ヶ月かかる場合も少なくありません。 その後、嚥下練習を行いますが、口からの食事だけで十分な栄養が取れるようになるには1~2ヶ月かかる場合も少なくありません。
味覚は残るものの、大きな嚥下・構音機能の障害が残ります。 味覚は残るものの、大きな嚥下・構音機能の障害が残ります。
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また、上手く飲み込めずに喉頭から気管に誤嚥が続くような場合には、食道から気道を分離する目的で喉頭全摘が必要になることもあります。 また、上手く飲み込めずに喉頭から気管に誤嚥が続くような場合には、食道から気道を分離する目的で喉頭全摘が必要になることもあります。
この場合、発声機能も失うことになります。 この場合、発声機能も失うことになります。
-***頸部郭清術 [#hbbbb1bb]+ 
 +****頸部郭清術 [#c953e258]
進行癌では、頸部リンパ節転移を伴っていることが多いため、リンパ節と周囲の組織を含めて摘出する頸部郭清術が同時に行われます。舌癌では小さな癌でも頸部リンパ節転移をきたすことがしばしばあり、転移が明らかでない場合にも頸部郭清術が行われる場合もあります。 術後の後遺症として、下口唇の動きが弱くなったり、肩こりのような頸部の違和感や腕を上げにくくなることがあります。 進行癌では、頸部リンパ節転移を伴っていることが多いため、リンパ節と周囲の組織を含めて摘出する頸部郭清術が同時に行われます。舌癌では小さな癌でも頸部リンパ節転移をきたすことがしばしばあり、転移が明らかでない場合にも頸部郭清術が行われる場合もあります。 術後の後遺症として、下口唇の動きが弱くなったり、肩こりのような頸部の違和感や腕を上げにくくなることがあります。
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***組織内照射 [#g99df6bf] ***組織内照射 [#g99df6bf]
全身麻酔下に舌に細いチューブを刺して留置し、そこから放射線を当てる治療法です。 全身麻酔下に舌に細いチューブを刺して留置し、そこから放射線を当てる治療法です。
-目的とする部分に集中的に放射線を当てることができるため、通常3~5日の照射で治療が終了しチューブを抜去します。チューブ留置中は嚥下ができないため、経鼻経管栄養(流動食)や点滴による栄養管理が必要になりますが、抜去後は口から食事ができるようになります。 嚥下や構音機能の障害はほとんど残りません。 +目的とする部分に集中的に放射線を当てることができるため、通常3~5日の照射で治療が終了しチューブを抜去します。チューブ留置中は嚥下ができないため、経鼻経管栄養(流動食)や点滴による栄養管理が必要になりますが、抜去後は口から食事ができるようになります。 嚥下や構音機能の障害はほとんど残りません。 
-味覚障害もほとんど回復します。 副作用として、口内炎(放射線によるやけど)が約1ヵ月後をぴ-くとして生じます。通常は消炎鎮痛剤の内服により対応可能ですが、+ 
 +味覚障害もほとんど回復します。 副作用として、口内炎が約1ヵ月後をぴ-くとして生じます。通常は消炎鎮痛剤の内服により対応可能ですが、
長期にわたり口内炎が続く場合もあります。稀に、難易性潰瘍が生じる場合もあります。 長期にわたり口内炎が続く場合もあります。稀に、難易性潰瘍が生じる場合もあります。
-癌が下顎骨に近接している場合、細心の注意を払い行いますが、骨髄炎や骨壊死(下顎骨が血行障害を起こし腐ってしまう)のリスクも稀にあります。+癌が下顎骨に近接している場合、細心の注意を払い行いますが、骨髄炎や骨壊死のリスクも稀にあります。 
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 +**罹患した著名人 [#k576a415] 
 +-堀ちえみ 歌手、女優、タレント 
 +2019年2月、口腔がん(左舌扁平上皮がん)「ステージ4」と診断される。

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