B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス (HBV) に感染することで発症するウイルス性肝炎の一つです。
B型肝炎は、成人がHBVに感染したときに一過性に発症する急性肝炎[3]とHBVの持続感染者に起きる慢性肝炎の2つに大きく分けられます。
HBVに感染してから1~6ヶ月の潜伏期間を経て、全身倦怠感、食欲不振、悪心、嘔吐、褐色尿、黄疸などが現れます。尿の色は濃いウーロン茶様であり、黄疸はまず目の白目の部分が黄色くなり、その後皮膚も黄色みを帯びてきます。
B型急性肝炎[3]になると、数週間で肝炎は極期を過ぎ、回復過程に入ります。
発症時にはHBs抗原、HBe抗原が陽性ですが、1~2ヶ月でHBs抗原、HBe抗原は陰性化し、その後HBe抗体、HBs抗体が順次現れます。
一般に急性肝炎[3]でみられる症状は出現しにくく、自覚症状はほとんどありません。しかしB型慢性肝炎では、しばしば「急性増悪」と呼ばれる一過性の強い肝障害を起こることがあります。この際には急性肝炎[3]と同様に、全身倦怠感、食欲不振、褐色尿、黄疸が出現することがあります。
B型慢性肝炎は母児感染でHBVに感染した人などの持続感染者に起こりますが、出産後数年~十数年間は肝炎は発症せず、HBVは排除されずに体内で共存しています。
ところが、思春期を過ぎると自己の免疫力が発達し、生まれたときから体内に存在したHBVを、病原菌であると認識できるようになり、白血球(リンパ球)がHBVを体内から排除しようと攻撃を始めます。この時リンパ球がHBVの感染した肝細胞も一緒に壊してしまうので肝炎が生じます。
一般に10~30才代に一過性に強い肝炎を起こし、HBVはHBe抗原陽性の増殖性の高いウイルスからHBe抗体陽性の比較的おとなしいウイルスに変化します。HBe抗体陽性となった後は、多くの場合そのまま生涯強い肝炎を発症しません。
このように思春期以降一過性の肝炎を起こした後はそのまま一生肝機能が安定したままの人がおよそ80~90%、残りの10~20%の人は慢性肝炎へと移行し、その中から肝硬変、肝臓癌[6]になる人も出てきます。
B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)が血液、体液を介して感染して起きる肝臓の病気[8]です。HBVは感染した時期、感染したときの健康状態によって、一過性の感染に終わるもの(一過性感染)とほぼ生涯にわたり感染が継続するもの(持続感染)とに大別されます。
思春期以降にHBVに感染すると、多くの場合一過性感染で終わります。感染の原因のほとんどはHBV慢性感染者との性的接触によるものと考えられており、この他、医療行為、入れ墨、ピアスの穴開け、カミソリや歯ブラシの共用、麻薬・覚醒剤使用時の注射器の回し等、HBV持続感染者の血液が付着したままで次の人が使用すると感染の可能性があります。
HBV感染後、一過性の急性肝炎[3]を起こすことがしばしばありますが、その後大部分の人ではHBVは排除され慢性化しません。またHBVに感染しながらも、急性肝炎[3]の症状が現れず、気づかないうちにHBVが排除される人も少なくありません。
一方HBVが慢性感染している人の大部分は、母親がHBVの持続感染者で、出産時に産道出血によりHBVが新生児の体内に侵入することにより感染します(母児感染)。
その他、乳幼児期に医療行為、口移しの食事、傷口からの出血など何らかの理由で、HBVの持続感染者の血液・体液が体内に侵入すると、持続的な感染を起こします。
また、成人であっても、体の免疫力が低下するような、免疫抑制剤[9]使用中、抗癌剤治療中、後天性免疫不全症候群[10](AIDS)患者の人たちは、HBV感染後、自分の力ではHBVが排除できずに持続感染を起こすことがあります。
肝臓内科
急性肝炎[3]は一般に抗ウイルス療法は必要ありません。食欲低下などの症状があれば水分、栄養補給のために点滴などをおこないますが、基本的には慢性肝炎の治療に使う肝庇護薬は使用せず、無治療で自然にHBVが排除されるのを待ちます。
ただし急性肝炎[3]の中でも、劇症肝炎と呼ばれる非常に強い肝炎が起こり放置すれば死に至ると予想される場合は、核酸アナログ製剤の投与や血漿交換、血液透析などの治療が必要となります。さらに肝炎が進行する場合は、肝移植を行わないと救命できない場合もあります。
持続感染しているHBVは基本的に完全排除することは出来ません。慢性C型肝炎[28]のHCVに対するIFN療法では何割かの人にウイルスの完全排除が期待できますが、HBVに対してはIFNを用いても、核酸アナログ製剤を用いてもウイルスの完全排除は期待できません。
HBVに対する有効な抗ウイルス薬は、IFN(注射薬)と核酸アナログ製剤(内服薬)の2剤に大きく分けられます。大まかには、IFNは一般に年齢が35才程度までの若年者で、肝炎の程度の軽く肝硬変になっていない人が対象です。
核酸アナログ製剤は 35才以上の非若年者、35才以下であっても肝炎の進行した人に対して投与されます。
IFN療法は自然経過でHBe抗原陽性がHBe抗体陽性にならずに、慢性肝炎の状態にある比較的若年者が治療の対象になります。IFNによって自己の免疫の力を強めて、激しい肝炎を起こしやすいHBe抗原陽性のHBVを、比較的おとなしいHBe抗体陽性のHBVに変えることが治療の主な目的です。
B型慢性肝炎に対するIFN療法は、基本、週3回で24週間の投与期間ですが、B型肝炎の治療ガイドラインは状況に応じて24~48週間のIFN投与を推奨しています。IFN療法で効果があればIFN投与を中止してからも、そのままHBVは増殖せず肝炎は沈静化します。しかしIFNが効かずにHBe抗原が陰性化しない症例、IFNを中止するとHBVが再度増えて肝炎が再燃する症例も多くあります。
また白血球、赤血球、血小板の減少が起こります。これはIFNが血球を作る骨髄の働きを抑えるためです。糖尿病[34]の人、膠原病[35]の人は、症状が悪化することがあります。また、稀に間質性肺炎[36]を起こす場合もあります。その他、眼底出血、脱毛、タンパク尿などが現れることがあります。
核酸アナログ製剤は、直接薬の力でHBVの増殖を抑えて肝炎を沈静化させます。薬を飲んでいる間はHBVのウイルス量は低下し、肝炎は起こりません。核酸アナログ製剤の長期投与で肝機能が改善し、肝硬変による腹水が消失することもあります。しかしIFNと異なり、薬を中止するとほとんどの症例で肝炎は再燃します。
一旦内服を開始してから勝手に核酸アナログ製剤を自己中止すると、時に肝炎の急性増悪を起こし、最悪の場合肝不全で死に至る場合があります。絶対に核酸アナログ製剤を自己判断で中止してはいけません。
核酸アナログ製剤を長期服用すると、薬剤耐性株(変異株[38])と呼ばれる核酸アナログ製剤が効かないHBVが現れます。その場合は、もう1種類の核酸アナログ製剤を併用します。
但し、最新の核酸アナログ製剤を5年、10年と長期間使用した場合の安全性についてはまだ明らかにはなっておらず、今後も注意深く経過観察する必要があります。
ウイルス量は減少しませんが、肝炎を抑える目的で肝庇護療法を行うことがあります。
治療薬は、内服薬のウルソデオキシコール酸と注射薬のグリチルリチン製剤が一般的です。いずれの薬剤も軽度の肝障害に対してはある程度有効ですが、B型肝炎特有の急激な肝障害の出現時は肝庇護剤はあまり有効ではありません。
(This host) = https://www.joy-mix.com