糖尿病とは、身体のインスリンが相対的・絶対的に不足するか、何らかの理由でインスリンの働きが弱くなることで血糖[2]値を下げることができなくなる病気[3]である。
主なものを以下に示す。
インスリンを作り出すβ-細胞が破壊されるインスリン依存型糖尿病(1型糖尿病/IDDM)
何らかの理由でインスリンの作用が働かないインスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病/NIDDM)
徐々にインスリンが自己分泌されなくなる緩徐進行インスリン依存型糖尿病(緩徐進行1型糖尿病/SPIDD)
薬剤や疾患合併症としての複合型糖尿病、妊娠糖尿病
1型糖尿病、2型糖尿病、複合型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病、妊娠糖尿病の5項目に分類する。
自己免疫不全やウイルス感染などの要因から、短期間でインスリンが自己分泌されなくなるため、突然の高血糖[2](糖尿病性昏睡などの自覚症状)でわかる事が多い。 以前は小児糖尿病と呼ばれるほど若年発症が多かったが、実際は成人になってから発症する事もある。
後に記する「生活習慣病」とは全く違うが、誤解を受けてしまう事が多い。 インスリンの自己分泌が全くなくなってしまうため、インスリン自己注射が生命維持に必要不可欠となる。
遺伝要因に加え、生活習慣に起因して発症する。
正確に言えば「生活習慣病」と呼ばれるのはこの型であり、「糖尿病」の8-9割を占める。 インスリン自己分泌は残っているか、逆に自己分泌過剰である事に注意したい。
内臓脂肪から分泌される物質や、体内の脂肪がインスリン抵抗性を構築し、筋肉組織におけるブドウ糖代謝が低下していると考えるとよい。
基本、生活習慣の改善でコントロールは安定することが多い。 遺伝要因も大きく関与している事から、「太っているから糖尿病になる」「食べ過ぎたから糖尿病になる」と一概には言えない。しかし予防することは十分に可能である。 生活習慣の正常化を優先しながら、必要に応じて血糖[2]降下薬やインスリン自己注射などの薬物療法を行う。
2型糖尿病とも表記されるが、最近になって区別され始めた病態である。
初期の病態は2型糖尿病と同じ経過を辿る。 2型糖尿病と違う所は以下の通り。
GAD抗体の作用により(完全な因子ではないが)、徐々にインスリン自己分泌が奪われていく。
最終的にはインスリン自己注射が不可欠となる。
生活習慣の正常化と血糖[2]降下薬/インスリンなどの薬物療法を並行しながら、膵臓が疲弊しないような生活を送る事が重要である。
2型糖尿病と病態はほぼ同じだが、病因が異なるため2型糖尿病とは区別して説明する。
ある種のインスリン抵抗性を持つホルモン(甲状腺ホルモン[9]/成長ホルモン[10]/副腎皮質ホルモンetc)が血中に異常に存在した結果、引き起こされる事がある。
甲状腺ホルモン[9]薬/成長ホルモン[10]薬/副腎皮質ほるもん薬etcの投与を受けている、異常分泌されている、代謝異常を伴う病気[3]を持つ人間はハイリスクである事に注意したい。
手術・妊娠など体に負担がかかる行為が引き金となり、ホルモンバランスの崩壊により引き起こされる場合がある。 生活習慣の正常化と基礎疾患の治療を優先しながら、必要に応じて血糖[2]降下薬やインスリン自己注射などの薬物療法を行う。
妊娠中のホルモンバランスの組成変化に起因、インスリンの作用が弱まる事で発症する。
遺伝的要因や妊娠中の過ごし方など、様々な要因がある。 余談であるが、臨月における妊娠中の体重増加は、やせ形で9~12kg、標準体型で7~10kg、肥満体型で5~7kgにする事が望ましいとされている。
糖尿病妊婦(すでに糖尿病を発症してから妊娠した場合)とは別の意味である。
基本的に、どちらの場合もハイリスク妊娠として扱われる。 肥満妊婦における発症リスクが高いと言われているが、それ以外であっても体重増加を適正範囲にとどめるなどの自己努力が必要となる。 通常は出産後に血糖[2]値が正常化するが、その後の生活によっては「糖尿病」に移行する事もある。 妊娠糖尿病を発症した経産婦の場合、続く妊娠においても妊娠糖尿病を発症しやすい事に注意したい。
経口血糖[2]降下薬は妊娠中禁忌であるため、食事制限・軽運動・インスリン自己注射での管理が主となる。
空腹時血糖[2]値および75g糖負荷試験(OGTT)2時間値の判定基準(静脈血漿値,mg/dL,括弧内はmmol/L)
正常域 | 糖尿病域 | |
空腹時血糖[2]値 75gOGTT2時間値 | <110(6.1) <140(7.8) | ≧126(7.0) ≧200(11.1) |
75gOGTTの判定 | 両者を満たすものを正常型とする | いずれかを満たすものを糖尿病型とする |
正常型にも糖尿病型にも属さないものを境界型とする |
随時血糖[2]値≧200mg/dL(≧11.1mmol/L)の場合も糖尿病型とみなす.
正常型であっても、1時間値が180mg/dL(10.0mmol/L)以上の場合は,180mg/dL未満のものに比べて糖尿病に悪化する危険が高いので、境界型に準じた取り扱い(経過観察など)が必要である。
糖尿病本体には症状といった症状がないが、進行期においては以下に記す合併症に注意する必要がある。
糖尿病で怖いとされている三大合併症として「糖尿病性網膜症」「糖尿病性神経障害」「糖尿病性腎症」があげられるが、それ以外にも因子を持っている事でリスクを高める独立因子がある事に注目したい。
糖尿病性網膜症、脂質異常症[17]、ヘマトクリット[18]低値は、網膜症の危険因子である。
喫煙については、大血管症への影響を考慮し、禁煙することが望ましい。
硝子体手術、光凝固療法により視力障害の進行を抑制し、良好な視力を維持できる場合がある。
眼底出血、硝子体出血、網膜剥離、糖尿病黄斑症や緑内障[19]を伴っている場合は、早急に糖尿病に詳しいの眼科医の治療を受けることが大切である。 硝子体手術、光凝固療法により視力障害の進行を抑制し,良好な視力を維持できる場合がある。
発症、進行の危険因子には、血糖[2]コントロールの不良、糖尿病罹病期間、高血圧[21]、喫煙、飲酒、高身長などがある。
これらの内の最大因子である血糖[2]コントロールの不良により高頻度に神経障害が現れる。しかし、適切な血糖[2]コントロールを行えば、その発症、進展を抑制することができる。
α-リポ酸 (α-lipoic acid: ALA) の服用により感覚症状および神経障害が改善する。
血糖[2]コントロール、及び、厳格な血圧管理(目標130/80mmHg未満)は、糖尿病腎症の発症、進展を抑制する。
大血管症 高血糖[2]の程度が軽い境界型耐糖能異常でも大血管症のリスクがある。
高血圧[21]症、脂質異常症[17]、肥満、喫煙などの危険因子が複数合併すると大血管症のリスクは相乗的に増加する。
脂質異常症[17] 糖尿病とは完全に独立した因子ではあるが、糖尿病を併発した場合においては心血管疾患発症の独立した強い危険因子である。糖尿病に合併する脂質異常症[17]は心血管疾患のリスクを高める。
食事療法と運動療法により糖・脂質代謝の改善が認められる。
皮膚糸状菌に起因する足指爪真菌症 創傷壊疽
食事療法・運動療法・薬物療法の3種類がある。病院によっては、糖尿病と発覚した時点で教育入院を行い、生活習慣の是正を行う場合もある。
1日当たりの摂取カロリーの基準を1600kcal(20単位/1単位=80kcal)とし、運動量・身長体重・血糖[2]値コントロールの状態を見ながら増減する。
「(標準体重×25)kcal/日」と計算される事が多い(これは健康な軽運動者と同じ値となる)。詳細については「糖尿病食事療法のための食品交換表」を参考にすると良い。
なお、重度肥満・合併症を併発している場合や強程度の活動をしている場合については、主治医及び管理栄養士から特殊な指導を受ける事がある。
食事療法というものの、高血圧[21]や糖尿病性腎症を発症していない限り、指示されたカロリーの中であれば食べていけないものはない。むしろバランスよく食べるべきである。
基本的には、適正体重を目指しながら1日1万歩(ウォーキング1時間半)程度の軽い有酸素運動を継続して続けていく事が求められる。
無酸素運動がいけないという訳ではなく、有酸素運動と無酸素運動を適度に組み合わせる事が重要である。 運動をする事により、筋肉が糖を取り込みやすくなりインスリン感受性を高めるが、運動の効果は2日しか持たないため、継続して続けていく必要がある。
合併症及び高血圧[21]症を併発している場合、逆に運動をしてはいけない事がある。 あくまでもこれは個人によって異なる。
骨折り損のくたびれ儲けにならないように気をつけながら、主治医及び運動療法を専門とした医療従事者の指示に従う必要がある。
運動療法・食事療法で効果が得られない場合の補助的手段として用いる。この項目については、以下に記す。
病形、体質などにより若干異なるが、インスリン分泌が絶対的に不足している場合においては、インスリン投与が第一かつ絶対的選択肢となる。
経口血糖[2]降下薬 2型糖尿病において血糖[2]値を正常化させることで慢性合併症のリスクを軽減させる目的にて処方される薬物の総称である。
SU薬は基本的にはインシュリン基礎分泌を促進する薬であるため、食前に低血糖[2]を起こしやすく、インシュリン追加分泌を促進しないため食後高血糖[2]のコントロールが困難になりやすい。
このためHbA1c(グリコヘモグロビン[31])といった平均値のみで効果判定を行うとコントロール良好であったにも関わらず心筋梗塞[32]といった大血管障害が起こる可能性がある。
インシュリン分泌を高めることは同化反応を亢進させ、体重増加を起こしインスリン抵抗性を悪化させることもある。
これも空腹時低血糖[2]により過食となり食事療法が乱れた場合との区別が難しい。第三世代のアマリール錠[33]へ従来のSU薬が持つインシュリン分泌作用のほかインシュリン抵抗性改善作用があると考えられており、副作用による体重増加が少ない。
そのため、空腹時低血糖[2]による食事療法の乱れなども発見しやすく好まれる傾向がある。
おもな副作用はインシュリン過剰分泌による低血糖[2]である。
したがって交感神経機能が障害されている患者、意識障害がある患者、低血糖[2]を認識できない高齢者、低血糖[2]に対して適切に対応できない患者は慎重投与する必要がある。
フェニールアラニン誘導体[37](グリニド系)はSU構造は持たないもののSU薬と同様膵臓のランゲルハンス島β細胞のSU受容体(SUR1)に作用し、インスリン分泌を促進させる。
食後は吸収が悪くなるので食直前に内服する。5-15分で薬効を来たし数時間で作用消失する。この早く効いて、早く効果がなくなるという点がSU薬と大きく異なるところである。食後血糖[2]降下薬ともいわれ、SU薬がインシュリン基礎分泌の促進、グリニド系がインシュリン追加分泌の促進と考えられている。インスリン療法の超速効型インシュリンと中間型インシュリンの対応に似ているが、SU薬トグリニド系の併用は保険診療上認められていない。
糖質が吸収されるためには澱粉のような多糖類から消化酵素の作用を得て二糖[44]類(麦芽糖や蔗糖)、単糖類(ぶどう糖や果糖)に分解される必要がある。その酵素、α-グルコシダーゼを阻害し、消化吸収を緩徐にすることで、血糖[2]の上昇をおさえるので、食後過血糖[2]改善薬ともいわれる。これらの薬物は血糖[2]値の食後のピークを減少させ、食事とともに摂取すると有効であるが食事以外の高血糖[2]の治療には有効ではない。
鼓腸、膨満感、腹部不快感、下痢などの副作用がよく報告される。これらの原因は消化されずに腸管にのこった糖類が醗酵し発生するがすによるものである。
αGIの継続的な使用によってこれらの副作用は軽減していく傾向がある。しかし炎症性腸疾患の患者では禁忌である。
腸閉塞様症状に至る場合もあり糖尿病性神経障害で消化管蠕動障害があるばあいは留意する。
体質的に、肝障害を来す例があるので肝トランスアミナーゼの定期的な観察を行う。肝障害は薬物の中止とともに可逆的に改善する。
αGIに体重増加作用はないため、食事療法の妨げにならない。
栄養素が消化管にとりこまれると、インクレチンである「GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)」などが、小腸上部や小腸下部から分泌され、膵β細胞に作用しインスリンが分泌されます。
しかし、インクレチンは血中などに多くある酵素「DPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)」によってすぐに分解されてしまいます。この薬は、 DPP-4の活性の働きを阻害することで、インクレチンの働きでインスリン分泌を強め、血糖[2]コントロールを容易にします。
肝臓に作用して糖新生を抑え(糖新生抑制)、筋肉での糖の取り込みを促進(糖利用促進)、さらに小腸管でのブドウ糖吸収を抑制する(糖吸収抑制)作用があります。これらは膵外作用であり、膵β細胞のインスリン分泌を介しません。
体重は不変から減少傾向となり、食事療法の妨げになりません。
肝障害、腎障害、心障害の既往がある患者には使用をさけます。
(This host) = https://www.joy-mix.com
投稿一覧
経口糖尿病治療薬について
わかりやすくまとめられていて、学習することができました。
お気軽に投稿してください。一言でもどうぞ。病気の治療、薬の副作用のことなど。