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甲状腺機能低下症 :: 医療 Wiki

illness:甲状腺機能低下症

ページ内コンテンツ
  • 概要
    • クレチン症
    • 中枢性甲状腺機能低下症
    • シーハン症候群
    • リンパ球性下垂体炎
    • 下垂体腫瘍
    • TSH受容体異常症
    • 甲状腺ホルモンとは
    • 原因
      • 比較的稀な原因
    • 症状
    • 診療科
    • 診断 検査
    • 合併症
    • 治療法

概要 anchor.png[1]

甲状腺ホルモン[2]の分泌が低下して活動性が低下する病気[3]です。その代表的な病気[3]橋本病[4]です。圧倒的に女性に多く、男女比は1:10以上の比率です。 甲状腺そのものに異常が生じて機能が低下する病気[3]を総称して、原発性甲状腺機能低下症といいます。

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クレチン症 anchor.png[5]

誕生の前後に、新生児自身に甲状腺ホルモン[2]の作用が十分でない場合に発症することがあります。クレチン症は先天的な病気[3]で原因は詳しく分っていません。
先天的に甲状腺がない、小さい、あるいは甲状腺は形成されていても甲状腺ホルモン[2]の分泌能力がなかったり、著しく低い状態であることが原因で発症します。

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中枢性甲状腺機能低下症 anchor.png[6]

甲状腺そのもには異常はありませんが、甲状腺ホルモン[2]の産生、分泌を外からコントロールするシステムに異常が生じて、甲状腺ホルモン[2]の産生、分泌がうまくいかなくなる病気[3]です。中枢性とは、中枢神経系の下垂体[7]視床下部[8]をさします。脳の下垂体[7]は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を通じて甲状腺の働きを調整しています。また、下垂体[7]は、さらに視床下部[8]から分泌されるTSH放出ホルモン(TRH)によって、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌をコントロールされています。

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シーハン症候群 anchor.png[9]

女性が出産の際に大量の出血をすると、その影響で下垂体[7]に血液を届けている動脈が詰まり下垂体[7]が壊死してしまう場合があります。そのため下垂体[7]の機能が低下したり、なくなってしまうため、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が低下し甲状腺ホルモン[2]の分泌にも支障が生じます。

  • 症状
    低血圧、低血糖[10]、全身性脱毛、無月経、性欲低下、乳汁分泌障害、小児の発育障害
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リンパ球性下垂体[7]anchor.png[11]

自己免疫性の病気[3]で、下垂体[7]をリンパ球が誤って攻撃するため、甲状腺機能が低下します。特に思春期の人に多くみられます。

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下垂体[7]腫瘍 anchor.png[12]

下垂体[7]腫瘍や下垂体[7]の近くにできた腫瘍(頭蓋咽頭腫)が下垂体[7]機能を低下させ、甲状腺機能に悪影響を与えることがあります。

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TSH受容体異常症 anchor.png[13]

甲状腺細胞にあるTSH受容体に異常があり、下垂体[7]から分泌されるTSHの刺激を受けず、甲状腺ホルモン[2]の分泌ができなくなります。

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甲状腺ホルモン[2]とは anchor.png[14]

甲状腺から分泌され、全身の細胞に作用して細胞の代謝率を上昇させる働きがあるあみの酸誘導体[15]のホルモンのことです。
トリヨードサイロニン(トリヨードチロニン、triiodothyronin、T3)とサイロキシン(チロキシン、thyroxin、T4)の2種類の甲状腺ホルモン[2]があります。
これらは、ホルモン1分子中のヨードの数が違います。 血中を循環する甲状腺ホルモン[2]のほとんどはT4ですが、生理活性が強いのはT3です。甲状腺からはT3、T4の他に、かるシトニンと呼ばれる別の生理作用を持つホルモンも分泌されますが、これは甲状腺ホルモン[2]とは異なります。

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原因 anchor.png[16]

橋本甲状腺炎により甲状腺が徐々に破壊されるにつれて甲状腺の機能低下が進行します。 痛みのない亜急性甲状腺炎と痛みを伴う亜急性甲状腺炎は、ともに一過性の甲状腺機能低下を起こします。 また、甲状腺機能亢進症[17]や甲状腺癌の治療で使われる放射性ヨード治療または甲状腺の外科的除去のために、甲状腺ホルモン[2]が作られなくなった場合にも起こります。 多くの開発途上国では、慢性的なヨード不足の食事が甲状腺機能低下症を引き起こします。

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比較的稀な原因 anchor.png[18]

甲状腺細胞中の異常酵素が、甲状腺の十分な甲状腺ホルモン[2]の産生と分泌を妨げる遺伝性の病気[3]により起こります。
甲状腺を正常に刺激する甲状腺刺激ホルモンを、視床下部[8]下垂体[7]も十分に分泌できない場合に起こります。
甲状腺ホルモン不応症[19]・TSH受容体異常症などの難治性疾患により、何らかの理由で甲状腺ホルモン[2]を活性化できない体質の方が少数ながらおり、
この時も数値以外は甲状腺機能低下症と同じ症状を呈する事があります。

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症状 anchor.png[20]

甲状腺ホルモン[2]が不足すると、身体機能が低下します。
貧血[21]が起こりやすくなり、低体温となり、夏でも汗をかかなくなります。多くの患者は体重が増え、便秘で、冷え性になります。
無月経になることもよくあります。 顔の表情が乏しくなり、まぶたは垂れて、眼と顔や手足が浮腫みます。声がかすれ、話し方が遅くなります。
毛髪は薄くて粗くパサツキやすく、まゆ毛の両端が次第に抜けます。皮膚はきめが粗く、乾燥しやすく、ウロコ状に厚くなります。
手根管症候群 手がうずいて痛むことがあります。

  • 粘液水腫
    全身、特に顔と四肢に浮腫みが起きます。このむくみは、ナトリウムを含んだ水分で、指で押さえても凹んだままにならず、すぐに元に戻る特徴があります。
  • カロチン血症
    脈拍が遅くなり、手のひらと足の裏がわずかに黄色みを帯びます。
  • 高齢者
    錯乱、もの忘れ、痴呆の様な症状が現れます。
  • 精神障害
    甲状腺ホルモン[2]は「元気のもと」と言われています。この「元気のもと」がなくなると、身体機能と同様、精神機能も低下します。うつ病[22]を疑って病院にかかり、甲状腺機能検査をしたところ「甲状腺機能低下症だった」という事がよくあります。
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診療科 anchor.png[23]

検査のみなら一般内科でも可能、治療するなら内分泌代謝内科をお勧めします。
甲状腺専門の内科もありますが、合併症が起きていない事が第一条件となる事をご理解下さい。

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診断 検査 anchor.png[24]

  • 血液検査
    甲状腺ホルモン[2] サイロキシン(チロキシン:T4)・トリヨードサイロニン(トリヨードチロニン:T3)
    軽症以上の甲状腺低下症では血中甲状腺ホルモン[2](遊離T3、遊離T4)が低下します。
  • 甲状腺刺激ホルモン(TSH)
    • ごく軽症の甲状腺機能低下症でも甲状腺刺激ホルモン(TSH)は高値になります。
    • 健康診断の一般的検査では、コレステロールやクレアチンキナーゼの数値が高くなるため、これにより甲状腺機能低下症が見つかる場合があります。
    • 原因を調べるために抗甲状腺抗体(抗Tg抗体、抗TPO抗体)の測定もよく行われます。
    • 橋本病[4]では抗甲状腺抗体(抗Tg抗体、抗TPO抗体)が陽性になります。
      • 遊離T4(FT4)1ng/dl以下総T45µg/dl以下
      • 遊離T3(FT3)2.5pg/ml以下TSH8mU/l以上(潜在性機能低下症:3~8mU/)
      • 総コレステロール300mg/dl以上CK/CPK*1300U/ml以上
      • 抗サイログロブリン抗体陽性
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合併症 anchor.png[25]

錯乱、意識喪失や昏睡(粘液水腫昏睡)を生じ、呼吸が遅くなり、発作や脳への血流が低下する致死的な合併症に進行することがあります。

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anchor.png[26]

  • 合成T4製剤(levothyroxine)
    チラーヂンS錠[27](一般名:レボチロキシン ナトリウム)
    口から飲んだT4製剤の70~80%が小腸から吸収されます。
    血清T3の80%は吸収されたT4から変化したものなので甲状腺ホルモン[2]の補充療法は通常、合成T4製剤だけで充分です。また内服を中断しても、すぐには血液中の甲状腺ホルモン[2]濃度は下がりません。
  • T4製剤の吸収を妨げる薬物
    クエストラン粉末[28](一般名:コレスチラミン)コレステロール下降薬、鉄剤(造血剤)、アルミニウム製剤(胃薬)などです。
  • 合成T3製剤(liothyronine)
    チロナミン錠[29](一般名:リオチロニン ナトリウム)
    服用した合成T3製剤のほぼ100%が吸収されます。T3は速やかに吸収されるため、内服した後の血中濃度は2~4時間後にピークに達します。
  • 乾燥甲状腺製剤
    チレオイド・チラーヂン末[30](一般名:乾燥甲状腺)
    牛、豚などの甲状腺の抽出物で、製剤ごとの甲状腺ホルモン[2]量が一定していません。ひと由来ではありませんので、アレルギー症状が出る事があります。
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治療法 anchor.png[31]

甲状腺ホルモン[2]の投与を行います。甲状腺ホルモン[2]として、チラーヂンS錠[27](サイロキシン)の錠剤を服用します。少量から始め、甲状腺ホルモン[2]と甲状腺刺激ホルモンを測定して、正常域に入ったことを確認後、その量を長期にわたり服用します。薬の副作用が起こることはありません。
甲状腺ホルモン[2]の投与と並行して、食事・運動療法が採用される事があります。これは、生活習慣病を合併しやすいという甲状腺疾患特有の現象でもあり、生活習慣病を避けるために、正常期に入ってから提案されます。
何よりも、患者さんがストレスを感じる事なく生活できる事が、この病気[3]とうまく付き合うための一番の秘訣とも言われています。


Last-modified: 2013-03-28 (木) 00:14:07 (JST) (4046d) by kondo