前立腺がんは、前立腺肥大症[2]とともに、中高年の男性において注意すべき前立腺の病気[3]のひとつです。かつては日本人男性には少なかったこの病気[3]も、食生活などの環境因子の変化も加わり、平均寿命が延び高齢化祉会になったこともあり、非常に罹患率が高くなっています。
ホルモン療法により、男性ホルモンの分泌が抑えられているにもかかわらず悪化する前立腺がんです。
早期の前立腺がんに特有の症状はありません。多くは前立腺肥大症[2]に伴う症状です。具体的には排尿困難、頻尿、残尿感、夜間多尿、尿意切迫、下腹部不快感などです。
前立腺がんは、進行すると骨に転移しやすい癌です。前立腺自体の症状はなく、たまたま腰痛などで骨の検査をうけ、前立腺がんが発見されることもあります。また肺転移によって発見されることもあります。
原因はアンドロゲン(男性ホルモン)が前立腺がんを促すといわれていますが、はっきりとした原因は不明です。
触診所見、画像診断の結果などから前立腺癌の病期は決定されますが、前立腺がんの分類は複雑です。
これは前立腺肥大症[2]として手術が行われ、その結果、前立腺がんが認められた場合も含めて分類するためです。
またPSA検査の普及にともない、触診あるいは画像検査などで特別がんを疑う所見がなかったにもかかわらず、PSA値の異常を認めたため生検を施行し、その結果癌を認めた場合をどのように分類するかが必要となります。
現在の分類では、前立腺がんを疑って検査を受けると、T1c以上の病期と分類され、前立腺癌を疑わず結果的に前立腺癌が発見された場合にはT1a.bと分類されます。
PSA値の異常のみで生検を実施し、がんが検出された場合はT1cと分類されます。T2以上は触診、あるいは画像で異常があった場合の分類となります。
前立腺癌取扱い規約第3版3病期分類より
前立腺がんの治療の大切なポイントは発見時のPSA値、腫瘍の悪性度(グリーソンスコアー)、病期診断、比較的進行が遅い癌であることから、年齢と期待余命、最終的にはご自身の病気[3]に対する考え方などによります。
前立腺がんの正確な病期診断は難しいため、グリーソンスコアーや治療前のPSA値なども参考にしながら治療法が決められます。
実際の治療ではいくつかの治療法が併用して行われることもあります。
前立腺生検の結果、比較的おとなしい癌がごく少量のみ認められ、とくに治療を行わなくても余命に影響がないと判断される場合に行われる方法です。
具体的にはグリーソンスコアーが6かそれ以下で、PSAが20ng/ml以下、病期T1c-T2bまでの病態に対してPSA値を定期的に測定して、その上昇率を確認します。
PSA値が倍になる時間(PSA倍加時間)が2年以上と評価される場合にはそのまま経過観察で良いのではと考えられています。
前立腺、精嚢を摘出し尿道と膀胱を吻合する方法です。
リンパ節の転移の有無を確認するためリンパ節郭清が一般的に施行されます。がんが前立腺内にとどまっており、10年以上の期待余命が期待される場合には最も生存率を高く保障できる治療法です。
手術の方法には下腹部を切開して前立腺を摘出する方法(恥骨後式前立腺全摘除術)と 腹腔鏡とよばれる内視鏡下に切除する方法、あるいは肛門の上を切開して前立腺を摘出する方法(会陰式前立腺全摘除術)があります。
放射線を使って癌細胞の遺伝子を破壊し細胞分裂をできなくする方法です。
前立腺癌に対する放射線治療には手術療法と同様に転移のない前立腺癌に対する根治を目的とした場合と、骨転移などによる痛みの緩和、あるいは骨折予防のために使用される場合があります。
転移のない前立腺癌に対して、身体の外から患部である前立腺に放射線を照射します。
前立腺癌に対する放射線治療では放射線の総量が多くなればなるほどその効果が高いことが知られています。現在では治療範囲をコンピューターで前立腺の形に合わせ、なるべく周囲の正常組織(直腸や膀胱)にあたる量を減らすことにより、従来の放射線治療と比較して、より多くの放射線を照射できるようになっています。一般的に1日1回、週5回で7週間前後を要します。
小さな粒状の容器に放射線を放出する物質(ヨード125とよばれるアイソトープ)を密封し、これを前立腺へ埋め込む治療法です。
多くは半身麻酔のもとに肛門から挿入した超音波で確認しながら、計画された場所に専用の機械を使用して会陰(睾丸と肛門の間)からアイソトープを埋め込みます。
外照射法と比較して数日で治療が終了し、前立腺に高濃度の放射線を照射することが可能です。
それ以外の病態では密封小線源治療に外照射法と組み合わせて治療することが薦められています。
前立腺肥大症[2]に対して内視鏡的に前立腺を削りとったあとには、小線源を埋め込めない部位ができてしまうため施行できません。
また大きすぎる前立腺に対してはそのままでは埋込みが困難です。
前立腺がんは男性ホルモンの影響で病気[3]が進むという特徴があります。
男性ホルモンは主には精巣、一部は副腎からも分泌されます。男性ホルモンを遮断すると癌の勢いがなくなります。
このことを利用した治療法が内分泌療法(ホルモン療法とも呼ばれています)。
方法としては精巣を手術的に除去するか、LH-RH (レルエイチアールエイチ)アナログと呼ばれている注射が使用されます。注射剤は1ヵ月あるいは3ヵ月に1度注射することで精巣の働きをなくします。
また男性ホルモンが癌に作用しなくする抗男性ホルモン剤という飲み薬を服用することもあります。抗男性ホルモン剤は副腎からの男性ホルモンの働きも遮断します。
現在、内分泌療法の初期段階では注射あるいは飲み薬が単独あるいは、併用して使用されることが一般的です。
内分泌療法の問題点は長く治療を続けていると、いずれは反応が弱くなり、落ち着いていた病状がぶり返すことです。この状態を「再燃」と呼んでいます。
再燃状態となると女性ホルモン剤や副腎皮質ホルモン[21]剤などが使用されますが、これも当初は反応が認められても次第に効果が弱くなります。
内分泌療法は前立腺がんに対して有効な治療法ですが、この治療のみで完治することは稀であると考えられています。
内分泌療法は転移のある前立腺癌に対して施行される方法です。これは転移を来していても、もともと転移した癌細胞は前立腺癌の性格をもっているため、転移した部位にも作用してくれるからです。
抗がん剤の治療は、ホルモン治療が有効でない症例や、ホルモン治療の効果がなくなったときに行う治療です。
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